寂しい町へ

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9月11日 水曜日
【韓国】 ソウル ~ ガンニュン





目を覚まして蚊帳から顔を出すと、横で寝ていたカッピーがいなくなっていた。

綺麗に片付けられており、小屋の中には俺だけだった。


ちゃんと起きられたんだな………ゆうべあんなに飲んだのに………



朝の8時のフライトだったので5時くらいに起きて空港に向かったはず。
寝ている俺を起こさないように声をかけないでくれたみたいだ。




ブーツの中に手紙が差し込まれているのを見つけた。

そこにはメッセージとともに3万ウォンが入っていた。


朝の静かな公園の中でぼんやりと空を見上げる。
暖かな日差しが降り注ぎ、木漏れ日が砂場を照らし、向こうの方でサラリーマンぽいおじさんが1人でタバコを吸っている。

トイレ掃除のおばさんが床をこするシャカシャカという音だけが聞こえてくる。




カッピー、帰ったらまたすぐに会えるけど、今このタイミングで会えて良かった。
やっぱりお前は心から信頼できる男だよ。そして頼り甲斐があるわ。

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むくんだ顔のまま荷物をまとめて地下鉄へ向かった。

さぁ、先に進むぞ。












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ゆうべヒョンジェに教えてもらっていた駅までやってきた。

駅の目の前に大きなバスターミナルの建物があり、そこに入るとたくさんの人たちがチケット売り場の窓口に並んでいた。


驚いたのはその並んでいる人たちの大半が兵隊さんだったこと。
迷彩服を着込んだ20代前半くらいの若い男の子たちが無邪気に笑いながらチケットを買っている。

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韓国には兵役がある。
大学を卒業した男子たちは2年間軍隊に行くわけだが、そこではおそらく銃器の取り扱いや過酷な状況での生存の仕方など様々なことを学ぶんだろう。

否が応でも国防や愛国の心は芽生えるはず。


韓国ではヒョンジェくらいの青年でも、え?竹島?韓国の領土だよ?何言ってるの?ってくらい当たり前に思い込んでいるし、それを平気で俺に言える。
ヒョンジェもそうだし、おそらくほぼ全員当然のようにそう認識している。

野球の国際試合で韓国がマウンドに国旗を立てたことが日本人の感情を煽ったけど、韓国人はそれくらい愛国心を持っているように思えるし、競争心も強い。

よく言えば堂々とものが言える欧米気質だ。
日本人にはそういうところはない。


3日過ごしてみて、今のところそういうハッキリした彼らの性格は気持ちいいと感じられる。


逆に周囲に気を使いすぎて回りくどいことばかりする日本ははたから見たら行儀良くも見えるが臆病にも見える。

まぁそんな日本と韓国で、どちらが世界で好かれているかと言えば比べるまでもなく日本なんだけど。






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戦場にでも向かうのか?っていうくらい兵隊さんで溢れているバスに乗り込んだ。

これでアジアやチベットみたいな爆撃跡ですか?っていう陥没だらけの道だったら面白いんだけど、韓国の道路は小石を踏んだ感覚もわかるくらいに綺麗な高速道路だ。

迷彩服の若者たちもスマートフォンでゲームに夢中になっている。

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乗客の少ないバスは山の中を駆け抜けていく。
畑が山々の間に広がり、小さな集落が緑の中にポツポツと寄り添っている。

どこにでもある田舎の風景。でもそこに日本の黄昏が色濃くなっているのを感じずにはいられない。



ソウルからプサンに下る道で選んだのは、1度東の海沿いまで出て、そこから町がほとんどない僻地の海岸線を進むルート。

なんでわざわざこんな変な道を選ぶのか。理由はもちろん面白そうだから。簡単にはいかなさそうだから。



これまでもずっとそうしてきた。
もしそれで大変な目に遭ったとしてもそれもそれで楽しめる。

そして今こそ、寂しい孤独を見たい。
1人の夜、どこまでも続く道、惑いの風、
この心に去来する全ての感情を抱きしめて最後の町へと向かいたい。




きっとまだ、会うべき人はいる。

約束の地はまだこの先のどこかにある。

美しい景色の中でそんな誰かと会えたなら。
そんなロマンを今もまだ夢見ている。
それでいい。

















バスを降りると、フワッと冷たい風が吹いた。
ソウルよりも結構気温が下がったな。

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バスターミナルの前には小さな町の道路脇の町並みがあった。
色濃い生活の匂いが夕暮れの風に乗って横断歩道を渡っていく。



ここは海沿いの町、ガンニュン。

ん?ガンニュンでいいのかな?
韓国語って発音が難しくてちゃんと聞き取れないんだよな。



iPhoneを見ると公共のWi-Fiが入っていた。
地図で駅前までの距離を調べると2.5kmと出た。

40分かな。楽勝だな。


荷物を引きずって歩いた。










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歩きながらこれまでの道のことを考える。

あてもなくただ地図で目についた町を選んで電車の切符を買ったり、出会った人にあそこに行ったほうがいいぜと勧められたところに向かったり、とにかく当てのないことが面白かった。

野宿すればいいし、どこに行ってもギターがあればなんとかなる。
だからいつでも恐れずにやってきた電車に飛び乗ったし、道路ぎわで親指を立てた。


駅舎を出た時に目の前に広がる光景を見ると、何もわからない心もとなさが足元からじんわりと登ってきたが、その度にいつも焦燥感が胸をかきむしった。

この町にも人々の生活があって、人生のドラマがあって、そこに飛び込んでいけるという喜びが気持ちを逸らせた。

世界のどこにでも町はあって、大きく見れば町の機能に大した違いはない。
電信柱と美容院と携帯電話屋さんと商店がある。

メインストリートから覗き込む路地裏のほうに生活の色濃い匂いを求めてしまうのは、きっと性格だよな。

ただの干してある洗濯物にもそれを着る人たちの笑顔や悲しむ顔を想像して立ち止まってしまう。


開けっ放しの玄関の中で座椅子に座ってテレビを見ている人の前にはテーブルがあり、食べ残したご飯が置いてあった。


見るものはそんなものでよくて、それこそがその町の特別なもので、その町を思い返した時に真っ先に浮かんでくるイメージとして一瞬のフィルムになった。

そんなフィルムをつなぎ合わせたような朧げな映像が頭の中に浮かぶ。





ふと自分が思い出にとらわれた囚人のように思える。

ゴロゴロとキャリーバッグを引く音が耳にこびりつき、バッグと背中の間にうっすら汗がにじむ。

体はとても快調で、一切疲れを感じない。


どこまででも歩けるような気がする。
でもこれが本当に望んだことなのかと思えたりもする。


耳鳴りのように、囁く声のように。















ひと気のない寂れた駅前には車が走る道路だけがあり、信号機が赤から青に変わるだけの静けさが流れていた。

地図からテキトーに選んだ町だったけど、どうやらかなり小さな田舎町だったみたいだ。


お腹が空いた。何か食べたい。

のだが、さっきから食堂はあるもののメニューの表示が全て韓国語なのでまったく理解できない。
ソウルのお店みたいに日本語や英語で訳が書いておらず、漢字みたいに想像することもできない。

全てのお店がそうで、この町がいかに外国人なんてものに無縁のローカルな町かということがわかる。

それは嬉しいことではあるんだけど、なにせ飯を食いっぱぐれるわけにはいかない。

キョロキョロしながらひたすら歩き回っていると、古ぼけた路地裏の奥に灯りが固まっているのを見つけた。


あの辺りに何かあるだろうか?

そう思って、どこか寂しい細い道を入っていく。






そして驚いた。

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なんだここは?


メインの車道から隠れるような路地の裏手に無数のネオン看板が光っていた。

あんなに暗かった町の中にここだけ異様なほどのケバケバしい飲み屋のネオンがズラリと並んでいる。

それはまるで日本の飲み屋街のようなひなびた雰囲気で、うろめたそうに路地裏に密集する様子に懐かしさがこみ上げてきた。

この秘密の場所を見つけたような感覚が嬉しくて細い路地をくまなく散策した。

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スナックやキャバレー、1杯飲み屋の物悲しげに光る看板。
塗料のはげたドア、換気扇から漏れるあの独特な匂い。


ああ、ずっとこんな場所で歌ってきたよな。











お店の雰囲気を見るに、どうやら女を買うような場所のようだ。
そういった怪しげなお店があちこちにあり、通りにはたくさんのホテルという連れ込み宿みたいなものがある。

こんな寂れた町なのに異様なまでのネオンの多さはそういうことなのかな。
日本でも風俗の町ってのはやたらにテーマパークみたいなケバケバしさがあるもんだ。
雄勝とか。


ここは韓国なのに、そのあまりの似通った姿に不思議な気持ちになった。

いい町だな。肌が合いそうだ。



テキトーに見つけた安そうな食堂に入り、韓国語で書かれたメニューの中からヤマカンでひとつを指差し、出てきたお肉の炒め物とご飯を食べた。
美味しかった。

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おじさんとおばさんが優しく笑顔でキムチを持ってきてくれる。

静かな店内のテレビには北朝鮮のことを映した番組が流れていた。











夜の中、ネオン通りのベンチに座ってタバコを吸う。

こんなに明るい通りなのに酔客の姿はない。
今日は木曜日。週末だけ賑わう町なのかもしれないな。
コーヒーの自動販売機で300ウォン、30円のまずいコーヒーを買って、すすった。

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向こうの方に1人のおばさんが立っている。
その親近感のわく何気ない普段着と髪型。ビニール袋を手に下げている。
田舎のおばちゃんの柔らかい雰囲気にふと和やかな気持ちになる。

さっきの食堂のおばちゃんも、韓国語で理解は出来なかったけど、なにーあんたどこから来たとねー、って自動的に翻訳されて聞こえてきそうなほど親しみやすかった。

なんだかすんなりとこの町に入り込めているような気がした。
この寂れた田舎町に。


明日この町で歌ってみようと思った。
きっとどこか歌うとこはあるだろう。





道路の反対側に1台の車がやってきて止まった。

すると向こうにいたおばちゃんがタッタッタと小走りでかけより、車に乗り込んだ。

ブーンと走り去る車。


迎えの車は、もちろん俺には来ない。

誰も知らない町の中。

どこに行ってもいい。

この寄る辺なき夜気を胸いっぱいに吸い込もう。


荷物を担ぎ上げて歩いた。

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