独房の中で

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7月15日 火曜日
【インド】 ニューデリー




蒸し風呂のような部屋の中、タオルケットもないベッドの上で全裸で横たわっている。

天井では大きなファンがブンブンと回って風を起こしているがサウナの中で空気をかき混ぜても温度は何も変わらない。

むしろ風が肌について煩わしく、余計に眠りの妨げになるようだが、やはりないよりはマシだ。

汗ばんでねとついた体にシーツが貼りつき不潔なことに気分が滅入るがそんなこと考えても仕方がない。







暑さに眠ることができずおぼろげな意識で昨日スマントが言っていたことを思い出す。


インドには大きく分けて3つの宗教がある。
北部の仏教、中部のヒンドゥー、そして南部のキリスト教。

宗教とともにそれぞれの地域にはそれぞれの歴史と文化が根付いているということは想像にたやすい。

イギリスの植民地支配の名残が今も残る南部ではキリスト教を信仰する人が多く、ネパールに近い北部地域では仏教が広がってるとのこと。

面白いことにインドの南部は、これぞインドというごちゃごちゃとした喧騒が少なく、人々は穏やかに暮らしており、インドを旅する旅行者では南部のゆったりとした落ち着いた空気が好きだという人が多い。
まさにキリスト教の博愛の空気。


同じく北部もまた素朴で柔らかい人間性の人たちが多く、インドは北部が1番だという人にたくさん会ってきた。
礼節の仏教徒たち。


ではこれぞインドという中部のヒンドゥー地域はと言えば、もう人間の業や欲が渦巻き、腐ったゴミと共に人が暮らす地球のカオスの象徴のような場所だ。
細かいことは気にしない。人間の持てるポテンシャルを鍋の底までひっかくような丸裸の生を見ることができる。


宗教にはきっとそれぞれの信者の生活に及ぼす影響力があるようにしか思えない。




sikhという宗教があるそう。

インドには頭に独特なターバンを巻いた人がいるんだけど、あれは何?と聞いたらスマントが教えてくれた。

シックァ、という難しい発音の宗教で、てっきり敬虔なヒンドゥー教徒が頭にターバンを巻くんだろうなと思っていたが、どうやらあれはまたヒンドゥーと似て非なる宗教の人たちだそう。


彼らには5つの掟があるんだとスマントが言った。

髪を切らない。
下着を脱がない。
頭にカバーをする。
小さなナイフを持っている。

あとひとつは?と聞くと、知らない忘れたと笑った。


きっとこんな細かい宗教が無数に存在するんだろう。
ヨーロッパでよくお世話になったハレクリシュナもまたインドの宗教だ。





トゥクトゥクに乗った時に運転席の前にインドっぽいステッカーが貼ってあった。

青色の顔をしたその神様のことは何度か見たことがあった。
穏やかな顔をしたその神様の絵。


「あれはシヴァ神だよ。想像とコントロールと破壊の神なんだ。」


あ、これが有名なシヴァ神だったんだと思った。
そしてその微笑みを浮かべた青色の顔が妙に不気味に見えた。

寝ながらあの顔が頭に浮かんでくる。



部屋の中は暗闇だが、外に出ればあの猥雑な喧騒がこの世を支配している。
神が創造したものの中で自分の生をこれほど与えられたもののように生きる人たちがいるだろうか。

雑巾のような服を着て野菜を載せたリアカーをひく少年の目はまるで無欲で謙虚にも見え、乾いた諦めのようにも見える。

こんなに生のというものの細い糸が剥き身でさらされている人々は見たことがない。
そこにヒンドゥーの精神性の何かがあるのかもしれない。











そんな取り止めのないことが浮かんでは消え、また浮かんでは消え。
何度も寝返りを打ちながら眠りの入り口を探す。


あまりの暑さに体を起こすとまだ早朝の5時だった。

全裸でベッドから起き、そのまま水シャワーをかぶって体を冷やしてまたベッドに倒れた。












次に目を覚ました時、異変に気づいた。

なんだか体がだるい。

ベッドにへばりついたように体がとても重くて起き上がることができない。

あんまり寝てないから寝不足で疲れが取れてないのかな………


そう思い、もう少し横になっていればそのうち体も目が覚めるだろうと思った。





しかしいつまでたっても体は言うことをきかず、それどころかどんどんダルさが増してきた。

腕に鳥肌が立ち、寒気がする。

気持ち悪くなってトイレに行こうとなんとかベッドから立ち上がったが、その途端足がふらついてこけそうになって壁にぶつかった。


うわ、やば、なんだこれ………


トイレに入り便座に座ると、昨日やっとラオスからの下痢が治ったところなのに、また出るものは水だけになっていた。

トイレを往復するだけで息が上がってまたベッドに倒れる。


や、やばい………こいつはやばい………

薬を……とにかく何でもいいから薬を飲もう。
まだパナドールが6錠残っている。

しかし薬を飲むには先に何かを食べないと胃が荒れてしまう。
何か食べないといけない。しかし体がダルすぎて、階段を降りて外に出てあのクラクション地獄の中に行く気力が湧いてこない。

ベッドから起き上がるのも億劫な程に体に力が入らない。


うう……うあ……とベッド脇に置いておいた1.5リットルの水を首だけ起こして飲んだ。
首に水が流れてベッドが濡れる。



なんだよこれ………勘弁してくれよ………


さっきの水シャワーがいけなかったのか………?
それともあれか、部屋の中にいるのに暑さで熱中症になるっていうアレか…?


ちくしょう……こんなことしてる場合じゃねぇのに………

インドの滞在日数はたったの2週間。
1日も無駄にできないし、歌わなければコルカタまでたどり着けない。

病気になんてなってる場合じゃねぇのに。


朦朧としながらまた少し眠りに落ちた。













夕方くらいに、このままでは本気でヤバイとなんとか体を起こした。

薬を飲むために何かを食べないと。

食欲はまったくないが、薬のためにとにかく何かを口に入れなければ。


マジで一歩一歩足元を確認しながらゆっくりと階段を降り、お爺さんみたいなスピードで通りに出た。


photo:01



けたたましいクラクションが頭を割るようだ。
トゥクトゥクとバイクがクラクションを鳴らしっぱなしで走ってきて鳴らしっぱなしで去っていく。
この人がうごめくメインバザールの中を轢き殺す勢いで突進してくるトゥクトゥクにひっくり返りそうになる。

暑くて頭がぼんやりし、体が鉛のように重い。

photo:02




ハーイ!コンニチハ!!ドコイクノ!?インドノコトゼンブオシエルケド!?


と日本語を喋るインド人が歩きながら横をついてくる。

口を半開きにしてチラッとそいつを見て、またとぼとぼ歩く。



インドノコトシラナイデショ!?インターネットデシラベルダケノリョコウデイイノ!?



と旅人が気にしてるところを上手く突いてくるジャワ。

ただ僕はインドのことを君に教えたい、そして僕は日本人の人たちからもらったたくさんの手紙があるからそれを見たら信用できるよね!?と早口でまくし立ててくる。

それじゃあ……といった感じで話に乗ったらオフィスに連れて行かれ何かしらのツアーを組まされるんだろうな。


放心した顔でそいつを見ていたら、なんだこいつラリってんのか?みたいな顔で、それでもしつこく話しかけてくる。

無視して歩いた。





photo:04



photo:05



photo:03



カレーは重いし揚げ物も消化に悪いだろうから、適当にチョウミン屋さんで野菜だけの焼きそばを食べた。

プレートの5分の1くらいしか食べられなかったが、これで充分だ。
パナドールを飲み、残りの焼きそばをビニール袋に放り込んでもらい、またとぼとぼと宿に戻った。









ベッドの上でのたうち回る。

体が気持ち悪い。

ベトベトを通り越してねとねとしている。

汗をかきすぎて、もともとアトピーを持っている肌に汗疹まで少し出てきている。

シャワーを浴びたいけど、きっと今浴びるのはいけないはず。


トイレに行き、水の下痢をしてまたベッドに倒れる。
下痢を出すたびに体のエネルギーが削ぎ落とされていく。


薬を飲んだおかげでいくぶんダルさが引いたので、さっき食べ残した焼きそばを食べた。

1人っきりでビニール袋の中にフォークを突っ込んで味気のない焼きそばを食べていることが情けなくて、どんどん気が滅入っていく。


ラオスの時はカンちゃんが献身的に看病をしてくれた。
誰かがそばにいてくれる安心感だけでも随分救われた。

しかし今この独房みたいな汚い部屋の中でうずくまっていると、まるで世界に取り残されたような孤独が胸をしめつけてくる。

弱いもんだ………







もう1度薬を飲んでベッドに倒れた。

病気での休みなんて1日で充分。
なんとか明日は歌わないと。

きっと薬が効いて明日には良くなってるはず。


サウナのような部屋には天井のファンの音だけがブーンとうなりをあげている。







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