大切な友達

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6月4日 水曜日
【マレーシア】 クアラルンプール






目を覚まし、すぐに部屋の電気をつけて素早くメールを返してシャワーを浴びた。

今日こそ路上に出よう。
何があっても歌わなければ、このままじゃエネルギーが根こそぎ霧散してしまいそうだ。

やるべきことをしなきゃ。
歌って、地元の人と会話をして、友達を作って、マレーシアって国にもっと近づかないと。

体は徹夜明けの時みたいにダルくて熱っぽいが、そんなのもう関係ない。






荷物をまとめ、ギターを持ち、部屋を出た。

受け付けを通り過ぎて階段を下るところで気がついた。


バッグにトロールをくっつけてくるのを忘れた。


ああ、何かあるかもしれないからな。
一応一緒に連れて行くか。

部屋に戻って散らかった荷物をどかして、トロールを探した。








あ、あれ、トロールがいない。





え………?







もう一度バッグの中から部屋の隅々まで探してみた。
しかしどこにもいない。







一瞬にして頭が真っ白になって鼓動が早くなった。

い、いや、何かの間違いだ。
あのトロールがいなくなるなんてありえない。

いつもずっと一緒にいたあいつがあまりにそばにいすぎて目に入ってないだけだ。

そう思って再度探してみたが、こんな狭い個室の中、結果は同じ。




汗が吹き出した。

そしてギターをベッドに投げ捨てて手ぶらで宿を飛び出した。

外は雨が降っており、すぐにシャツがびしょ濡れになった。
アスファルトの水たまりを飛び越え、タイルにこけそうになりながらツインタワーの方へと走った。







嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
嘘であってくれ。

あああ!!!トロール!!!







最後にトロールを触ったのはおととい。
ツインタワーに連れていき、写真を撮った。
それからショッピングモールの中を散歩してベンチに座ったりしながら地下通路を歩き、フードコートの椅子に座って休憩し、それからチャイナタウンに戻って屋台でご飯を食べて帰った。

一緒に持って行ってたお土産のビニール袋は持って帰ってきている。
なのになんでトロールだけ!!!




雨のオフィスビル街を走って行くが、体が重くていうことをきかない。
息が上がって立ち止まり、また走っては息が上がる。








なんで昨日気づかなかった。
なんでもう2日も経っているんだ。

トロールはあんなボロボロの姿。
ツインタワーなんてラグジュアリーな場所にポツンと置いてあったらすぐにゴミ箱に入れられるはず。
そうなったらもうとっくにゴミ袋は取り替えられている。

でももしかしたら落し物で届けられているかも。

いや、誰かが見つけて持って帰ってるかもしれない。

いや!!まだどこかで雨に打たれて放置されているかもしれない!!


息を切らしながらとにかく走った。
















しかしどこにも見つからなかった。

ツインタワー、フードコートのお掃除の方にトロールの写真を見せながら必死に説明し、それぞれの落し物預かりに問い合わせてもらったが、人形の届けはないとのことだった。






う、嘘だろ?

あのトロールだぞ?

旅の本当の初めの頃にノルウェーの北極圏でヒッチハイクしていてドライバーさんにこいつも世界中に連れて行ってくれよと渡されたトロール。

あれからほぼ2年。ずっと一緒に旅をしてきた相棒。
あいつがいたおかげで色んなピンチを乗り越えられた。
野宿の夜にあいつの髪の毛が頬に触れると寂しさが紛れた。








ベンチに座り込んだ。


嘘だよ。

あとたった少し、日本は、この旅のゴールはもう目の前だったのに、なんでこんなマレーシアで。


桜や富士山を見せて、彼女に会わせて、ずっとこれからの人生一緒にいるはずだった大事な戦友なのに。




嘘だ………頼む………嘘だよ………






まだ望みはある。おととい宿に戻る前に最後に立ち寄ったのはチャイナタウンの屋台。
あそこでご飯を食べた時に置き忘れていって、店員の兄ちゃんたちが持ってるかもしれない。

希望を胸に元来た道を戻る。
どこかにまだ返ってくるという期待があった。

雨は止んでいたが、代わりにムシムシとした熱気がまとわりつき、シャツは同じように汗でビショビショだった。











すでに日の沈んだチャイナタウンは活気に満ち溢れていた。
雨は必ず夜になると止むので、屋台は毎日のように何事もないかのように通りに店を構える。

たくさんの人がガヤガヤとひしめく中、この前の屋台の前にやってきた。
しかしそこにはガランとしたスペースがあるのみで屋台は影も形もなかった。


「レストラン、ヒア、レストラン。」


「ノー、トゥデイ、ノー。トゥモロー。」


隣の屋台の兄ちゃんに聞くと今日は休みだという。
なんでこのタイミングで……と思いながらも、トロールの写真を見せてこれを探してるんだと聞いてみる。


「アイドンノー、イートヒア、デリシアス。」


俺の質問そっちのけで、ご飯食べなよ、美味しいよ!!と観光客向けの笑顔を作ってきたのて地団駄を踏んで背中を向けた。











宿に戻ってスタッフのみんなに写真を見せて回る。
しかしやはり誰も知らない。

トイレに行ってる一瞬の間に誰かが俺の部屋に入って盗んだんじゃないか。

いや、わざわざ部屋に入ってバッテリーやiPhoneを取らずにトロールだけを持っていくなんてことはない。


やはりどこかに置き忘れて来たとしか考えられなかった。









ベッドに腰かけて放心した。

あのトロールが………
当たり前にずっと俺と一緒にいたトロールが………

この旅のマスコットで、大事な友達で、誰からも好かれたあいつが。


ベッドに倒れると、体が重く沈んでドッと疲れが吹き出してきた。
雨と汗でベトベトの体。

体調の悪さが余計に気持ちを塞いでしまう。


俺がこんなぬるい旅をしてるから、ずっと俺のことを見ていたあいつは愛想を尽かしてしまったんじゃないか。
もうお前と一緒にいたくねぇって思ったんじゃないか。



バッグの横のトロールがいつもくっついていた場所を見る。
2年の間、トロールの腕を通していたベルトがこすれて跡ができている。



悲しくて悲しくて、ベッドにうずくまることしかできなかった。









もう動きたくない。

でも外に出なければいけない。
今夜もまたクアラルンプールに在住されている日本人の方とお会いする約束をしている。

何日も前から約束していたのにいきなり今になってやっぱり無理ですなんてことできない。

心は荒れきっているが宿を出た。









photo:01



お会いしたのは商社に勤める駐在員の方。

ブログを読んでくださっており、クアラルンプールに来た際にはとご連絡を下さっていたのだけど、ご飯食べましょうかと運転手つきの車で連れて行っていただいたのは、日本料理店。

日本酒、焼酎、そしてたくさんのオカズが揃った居酒屋屋さんだった。


美味しい料理をいただきながらたくさんの興味深いお話を聞かせていただいた。



昔は3Sといって駐在員さんにとって住みやすい3つの国があったそう。
それがシドニー、サンフランシスコ、シンガポール。

現在ではこのトップ3にクアラルンプールが入っているんだそう。

一昔前は東南アジアは日本人が完全に席巻していたそうだが、現在では韓国の勢いがすさまじく、良くバチバチと競争することになるんだそう。


タイにもたくさんの数の日系企業が支社を構えており、ものすごい数の駐在員さんがいるそうで、女好きの人にとっては楽園のような場所ということ。

そっちの接待ってのも伝統的なものなんだそうだ。


東南アジアに大金を落とす日本人。
そりゃ商売人たちはみんな片言の日本語くらい話すよな。










商社のお仕事のこと、東南アジアと日本の関わりなどとても興味深いお話ばかりなのだが、久しぶりの焼酎を飲んだら体力が減ってるところに酔いが回り、意識が朦朧としてきてしまった。

そろそろ行きましょうかとお店を出て、宿の近くまで送っていただいた。

笑顔で手を振るDさんにありがとうございますと言うことしかできなかった。












無様に酔っ払い、宿まで歩く。

フラフラと歩いていたら急に気持ち悪くなり、地面にうずくまって排水溝に嘔吐した。

嗚咽を繰り返しながら、情けなくて仕方なかった。

悲しくて胸が詰まる。
なにやってんだよ、俺。



地べたに座り、すでに静まり返った街の中でぼんやりと外灯の明かりを見ていた。






トロール、どこ行っちまったんだ。








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