シンガポール人の男前

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5月28日 水曜日
【シンガポール】 シンガポール




photo:01




ここ数日エミさんの家に泊めていただいていたわけだけど、ルームメイトのフィリピン人の女の子がもう我慢できないとエミさんに言ってきたみたい。


どうしてそんなに散らかすの?みたいな感じで文句を言われたそう。


マジですか………



食器はもちろん洗い、料理の後はガス台の周りも拭きあげ、シャワールームでは毎回排水口の髪の毛を綺麗に取り除く。こんなん当たり前。

アンナちゃんがハウスキーピングで床も掃除していたし、常に跡形のないように心がけていたのにこれでも彼女からしたら散らかしてるうちに入るようだった。



彼女とはたまにリビングで会うけども挨拶するくらいで全く会話は生まれない。
完全に私には関わらないでというオーラが出ていた。
一流企業に勤める超エリートで、身につけるものは全てブランド物、彼氏はアジア女子憧れの白人男性。

そんな一流志向の彼女にとっては俺たちバッグパッカーなんてものの存在は自分の人生に何の益ももたらさない無縁のものなんだろうな。


でも、この数日泊めてもらえたことには感謝しかない。普通に考えたらいきなり知らない小汚いやつか何日も自分の家にいたらストレスも溜まるよな。

今までフレンドリーでハッピーなやつらばかりの家に泊めさせてもらっていたけど、それとこれとを一緒にしちゃいけないよな。


エミさん、迷惑かけてごめんなさい。
そして本当にありがとうございます。

部屋の中の荷物をまとめる。












シンガポール最後の日に取りに来ることにして大きなバッグは部屋に置かせてもらい、ギターとリュックと寝袋を持って家を出た。

エミさんのところに泊まれなくなったのは残念だけど、別にそこまで焦ってはいない。
泊まるところはある。


今日からイクゾー先輩の家に居候だ。


イクゾー先輩の家、そう、チャンギ空港。


これ以上泊められなくてごめんねー……と謝ってくれるエミさんだけど、この数日泊めていただけただけで本当に助かった。
また最後の日あたりにご飯食べに行きましょうと約束して電車に乗り込んだ。












先日から長引いている風邪がなかなか治ってくれず、だるい体にバッグとギターが食い込む。

エアコンのよく効いた電車の中、しかし乗り換えで一歩プラットホームに出ればまた湿気を含んだ熱気がむわりとまとわりついてくる。

今日から歌いたかったんだけど喉もボロボロのままだし、こいつはもう少し様子を見た方がいいかな………










せっかくめちゃくちゃ稼げるシンガポールにいるのに歌えないという状況に焦ってしまうが、路上の他にもやることはいろいろある。

シンガポールに来たらお会いしましょうとメールをいただいていた人たちとの約束をほったらかしのままにしている。

さらに今夜はこの前路上で仲良くなったシンガポール人のジェイクという男の子と晩飯に行く約束もしている。

路上はやめてひとつひとつ約束を果たしていこう。










やってきたのはシンガポールのショッピングの中心地、オーチャード。

そのど真ん中に堂々とビルを構える高島屋へ向かう。

たくさんの人で賑わうデパートの風景はどこからどう見ても日本そのもの。
デパ地下の食品街に来るとあまりの日本語の多さにここがどこかわからなくなる。

日本がどれだけシンガポールと密な関係があるかがよく分かる。





そんなデパートの1階のエスカレーター横にある椅子に座りしばらく日記を書いた。

目の前にはたくさんの化粧品屋さんが並び、バッチリメイクの美しい中国人たちがお客さんに商品の説明をしたり、おばさんの肌に機械をあてたりしている。

切れ長の目と細いあご、白い肌。
その黒い瞳にはどこか怪しげな冷たさがある。
中国人の顔は日本人とは違うけれど、これこそオリエンタルな美女だなと思える。



男ももちろん、柔らかくて甘いマスクなんだよな。

ビシッと細身のスーツをきめて、髪の毛を全体的に右が左にゆるく流す。
無精髭で長髪をなびかせる、といったワイルドな風貌の男はあまり見かけない。
シンガポールの中国系男子はみんな可愛らしいのが売りだ。

中国本土に行くのが楽しみでしょうがないな。

ゲイじゃねぇ!!









photo:02



待ち合わせ場所にやってきたのは、オシャレなストリート系の兄さんだった。

マサさんとマーシーさん。



「ちゃーっす!!金丸さん!!チョリっす!!チョリチョリ!!」


やべぇ、このノリめちゃ嬉しい。
なんか昔遊んでた友達みたいな感じがして懐かしくなる。

実際チョリチョリとかまったく言ってないけどそんな感じのノリということで^_^

マサさんごめんなさい^_^




「今2年住んでますけど、やっぱ長くいたら飽きますね。」


お2人の希望でお仕事何してるかは伏せます。
全然ヤバい仕事とかじゃないですからね。
全然売人とかじゃないですから。



全然売人とかじゃないですから。



あれ、なんで2回書いたんだろう?









3人で喋りながら電車に乗ってトアパヨーの駅に行き、そこで晩飯の約束をしていたジェイクと待ち合わせ。


やってきたジェイクは今日も男前だなこの野郎。
背高いしハンサムだしオシャレだし前バーテンやってたらしいし、ちくしょうめ。

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しかも写真が好きらしくめちゃカッコイイ一眼レフを持ってきてる。

いい趣味してらっしゃいますねと思ったらギターも持ってきておりチラリとギターケースを見たら、マーチンだった。



なるほど、坊っちゃんというわけでございますか。

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「フミ、この先にすごく美味しいお店があるんだ。そこでいいよね?」




なるほど。お高いレストランに連れて行ってくれるというわけですね。

こんな男前の坊っちゃんが行くようなところですからね、僕みたいなしがないストリートミュージシャンが行ったらお金全部むしりとられるよホーカー。




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よし、ホーカー。


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「じゃあ食べましょう!!フミたちはビールも飲むよね?」


「当たり前だ!!200本持ってこい!!」



この暑いシンガポールの夜に屋台で汗かきながら飲むビールの美味さ!!

料理もまた全部感動的に美味い。

ああ、ホーカー最高ーー!!!

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気持ち良く酔っ払ってどっかでギター弾こうぜ!!ということになり、ホーカーの裏にあったマンションに入ると中庭に休憩スペースがあったのでそこで飲み直し。

薄暗い明かりの下で、地べたに座って瓶ビールをあおり、ジェイクとギターを弾いた。

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マサさんのリクエストでデスペラードを静かに歌ったら向こうの方に座ってたマンションの住民さんから拍手してもらった。
ごめんなさい、酔っ払ってて………








「あ、チューっす。どうもっすー。」


気持ちよく飲んでるところにイクゾー君が夜の中から登場。

僕のブログを読んでくださってるマサさん。もちろんイクゾー君のことを知っている。




「イクゾー君、今日は何してたの?」


「あ、そこ聞いちゃいます?いやー、カジノっす。」


「その余裕シャクシャクなところを見ると、そういうことなの?」


「いやー、全然っす。ダメっすね。たった150ドル増えただけっす。しょっぺっす。あー、シンガポール楽勝ー。」




みんなで大笑いしながらビールを飲む。
やっぱりシメはラーメンでしょ!!と近くのコンビニからカップラーメンを買ってきてみんなで食べる。

男前坊っちゃんのジェイクもカップラーメンを食べる。



自由な空気と、楽しい仲間と、暑い夜。
いつかの10代の夜に戻ったような気がした。

photo:11














「そろそろ帰ろうか?あ、やば、もう終電終わったんじゃない!?」


「え?金丸さんまさか電車で帰るつもりだったんですか?僕の子供の頃からタクシーしか乗ったことないのでタクシーで帰ります。」



「顔がイラつく。」




マーシーさんと俺たちでタクシーに乗り込み、ジェイクとマサさんとはここで別れた。

そしてマーシーさんも途中でタクシーを降り、俺とイクゾー君でチャンギへ帰る。
シンガポールのタクシーはそこまでバカ高くなく、街から空港まで行っても20ドル前後ってとこ。



あ、あれ?俺なんかおかしいこと言ってるかな……金銭感覚……




空港に着きタクシーの支払いをしようとすると、ドライバーさんがあと2ドルね、と言った。
は?と思ったらマーシーさんが降りる時に20ドル払ってくれていたのだ。


払いすぎですよマーシーさん………



マサさん、マーシーさん、楽しかったです。
またどっかで面白いことしましょう。
ありがとうございました!











「はい、着きました。ここが僕の家、ターミナル3です。」


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フカフカの絨毯、きらびやかな装飾、頬ずりできるほど綺麗な床。

贅の限りを尽くしたシンガポールのチャンギエアポートの中を颯爽と歩く小林イクゾー。

photo:13





「ここでWi-Fiのパスワードもらえます。向こうのトイレが広くて蛇口の水の出がいいです。スーパーマーケットとフードコートはB2フロアーにあります。あ、夜食食べなくていいですか?」


「もう完璧にチャンギのヌシだね。」


「あははは、チャンギでイキッてるやつみるとあれあれ?って思っちゃいますよね。ホラ、あのおじさん、彼はもう完全にチャンギで住民票とってる人です。あ、彼女は友達です。ハーイ。」


「ハーイ、イクゾー。」



ベンチに寝転がってる太ったおばちゃんが笑顔で手を上げる。



「なんか太りすぎて仕事がないから仕方なくここに住んでみたいです。」



ベンチの後ろに手慣れた様子で寝床を作るイクゾー君。
シドニーのアーロンにもらった寝袋が大活躍しているよう。

photo:14






「イクゾー君、明日は何するの?」



「え?それ聞いちゃうんですか?」



「…………ぜってー全部失わないとやめないね。」



「明日は2000ドルにしてみせます。」




俺も明日は歌わないとな。
ベンチの上に寝転がって寝袋をかぶった。







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