ホビットの地を抜けて

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5月18日 日曜日
【ニュージーランド】 パーマストン ~ オークランド






「マイケル、本当にありがとう。」


「いいってことよ。俺たちはクリスチャンだ。困ってる人に手助けをするのは当たり前のことなんだ。」



朝のオークランド。
大きなビルが立ち並び久しぶりの都会といった街の中、マイケルと握手した。

そして車に乗り込んだマイケル。日曜日の朝のガラガラの通りを静かに走り去って行った。







ぼんやりする頭。
街路樹のブロックに座ってポケットからタバコを取り出し、最後の1本に火をつけた。

ふーっと朝のビルに煙を吹きかける。











パーマストンを出発したのは深夜。ぴったり2時半だった。

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もちろんまだ真っ暗な、いつもなら寝始める時間に起きて行動を開始するのはなかなかきつかったが、俺にはマイケルの横で起きてマイケルが居眠りをしないように会話相手になるという大事な仕事があった。



外灯ひとつない真っ暗な農地の中をひたすら走っていく。
たまに小さな集落を通り抜けるだけで、なんの代わり映えもしない夜のドライブ。



タヘピという集落の入り口に大きな長靴のモニュメントがライトアップされてたのであれは何と尋ねると、どうやらこのタヘピでは1年に1回、ファーマーたちによって長靴投げ大会なるものが開催されるらしい。

こんな田舎の小さな農村で長靴投げ大会だなんて楽しそうにもほどがあるな。







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途中、マイケルの奥さんが作ってくれた鹿肉の炒め物とパスタのお弁当を食べた。

会話もそんなに6時間ずっと続くわけもなく、途中うとうとしてしまい何とか太ももをつねったり窓を開けて寒風を浴びて目を覚ましたりする。

マイケルもかなり眠そうで、途中通りかかった高原で車を止め、夜空に不気味にそびえる巨大な雪山のふもとで外に出て体をのばしたり、ガソリンスタンドでコーヒーを飲んだりして、なんとか運転を続けた。







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空がかすかに白み始めたころ、マタマタという町の中のツーリストインフォメーションの前に止まってくれたマイケル。


なんだかそのツーリストインフォメーションの建物に見覚えがある。

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そうだ、これはホビットの家だ。


そう、マタマタはロードオブザリングやホビットのロケ地として有名な場所だ。

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朝が訪れたこのファンタジー映画のロケ地は、深い朝霧に覆われており、幻想的な景観を作り出していた。

何もない農地が広がりそれが霧に隠され、大きな木々や川が不気味に押し黙っている。
夢の中のような風景が窓の外を飛び去る。

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2人とも眠くて限界に近い状態でそんな朧げな霧の中を走っているもんだから、どうにも視覚があやふやになり余計に眠くなってしまう。

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そんな怪しい霧の世界を抜け出したのは、もうオークランドのすぐ近くに来た頃だった。

パッといきなり視界が綺麗になり、太陽の光が全てを鮮やかに照らし出した。

後ろを振り返るとさっきまで霧の中を走っていた盆地が深い雲海に沈んでいた。

まさしくホビットの村は映画の通りの別世界だった。

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太陽の光にすっかり目を覚まし、会話も弾みながらラストスパートで朝の8時半に車はオークランドの街に滑り込んだ。

昨日、今日と一緒にドライブし、眠りと戦いながら面白い話からどうでもいい話までたくさん喋ったマイケルと別れるのはいつものヒッチハイクとは違う寂しさがあった。

元気でな。マイケルもね。そんな簡単な挨拶しかできない。
連絡先を聞いて握手をし、マイケルは車を走らせて行った。

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タバコを吸いながらぼんやり考える。
この疲れた体で荷物を全部抱えたままオークランドの街を動き回るのがすごく億劫に思えた。

ゆうべアンドリューが宿代を受け取ってくれなかったので、この渡すはずだった20ドルで安宿に泊まろうかなという考えがむくむくと湧いてきた。



3時間くらいしか寝ていないし、朝から6時間のドライブ、そしてこの都会で重い荷物を引きずる。



いや、こんなのいつものことなんだけど、ニュージーランド最後の街までやってきた達成感がご褒美をあげてもいいんじゃないかと思わせた。







最後のタバコをフィルターぎりぎりまで吸いつくして、マクドナルドへ。
そこでWi-Fiをつないでオークランドの安宿を調べてみた。


色々と見ていくと、だいたい25ドルくらいが相場みたいだ。
立地も悪くなくこの中心部にいくつかあるみたい。


マクドナルドの中にはたくさんのバッグパッカーたちの姿があった。
寝袋をバッグの横にぶら下げてクルクル巻いたマットを縛りつけている。
いかにも金のなさそうな、でもたくましさを滲ませた男女が楽しそうにハンバーガーをかじっている。

オーストラリアではあまり見なかったそのボロいバッグを背負った旅行者たちの姿がなんだか南米を思い出させた。

すると急に25ドルなんて宿に泊まるのがバカらしくなった。

多分このバッグパッカーたちはみんな宿に泊まっている。
みんな寝袋やマットを持っているけど実際に野宿してる奴には1人も会わなかった。

ふとご褒美だなんてまだまだ早いなと思った。

iPhoneの安宿の検索サイトを消して、メールをチェックした。









随分前に、ある女性の方からメールをもらっていた。

あれはまだアメリカのころじゃなかったかな。

シンガポールに住んでいます、来られた際には一緒にビールを飲みましょう、というような内容だった。


あの頃はシンガポールなんてまだまだはるか先の話で、是非飲みましょうと返事はしたものの、悪く言えば社交辞令のような部分もあり会えるかどうかの可能性はほとんどなかったと思う。


実際メールをいただいても会えないことはあるし、俺が覚えてなかったりして連絡を忘れてしまったりと申し訳ないことをしたり、とにかく連絡をもらえても全員にお会いできるというわけではなかった。

それがシンガポールだなんてまだ行くかどうかももわからない頃だったので、メールをもらったということもいつの間にか記憶の底に沈んでいた。





そして数日前、この女性から久しぶりにメールが来た。本当に久しぶりに。

もうすぐシンガポールですね、よかったらうちに泊まって下さいとのことだった。

なんてありがたい、と思うと同時に、あんなにはるか先のことだと思っていたシンガポールにもうすぐ行こうとしていることに驚いた。

そしてこの女性がずっとブログを読んでくださっていたことも。


時間はあっという間に飛び去って行くが、着実に前に進んでいるんだな。


お会いする段取りも決め、約束のビールも500本買っていきますねと調子のいいことをメールに書いた。


ついにあのアジア。旅人の聖地の東南アジアに入るということが待ちきれないほどに心を昂らせていた。












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もはや心は完全にアジアに向かっていた。
ニュージーランドでは南島の大自然を俺なりに満喫できたし、もはやこのただの都会でしかないオークランドに俺をドキドキさせてくれるものがあるとは到底思えなかった。



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ぼんやりとメイン通りのクイーンストリートを歩いた。

中国人の家族が日曜日の朝の穏やかな通りに賛美歌を響かせてお金をもらっている。

その通りの向こうを中国人の団体が旗やプラカードを持ってデモ行進している。

インド人のガラの若者たちがたむろして騒いでおり、たくさんのホームレスが路上に座ったり寝転がったりして紙コップを差し出している。

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日本料理店が多く、ラーメン屋さんもある。
歩いているとすれ違いざまにどこからか日本語が聞こえてくる。

イスラム教徒の女の人がベビーカーを押しながらiPhoneをいじっている。

誰もが他人に無関心ないつもの都会の光景。

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ここもまた移民の街で、移民で構成されたこのコンクリートの街が中身のない空っぽのものに見えてくる。



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虚しさはない。

きつかった数日間の旅で俺はニュージーランドがすっかり好きになっている。
これが俺の望んだもの。

でもやはりアジアに向いた心を引き戻してくれるような何かには出会えそうもなかった。

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ピザを食べお腹を満たして、一応歌っておこうかなとクイーンストリートのニューワールドとバーガーキングの横のスペースでギターを取り出した。

お金はたくさんあるに越したことはないがニュージーランドではもうある程度は稼いでいる。
4万円くらいはプラスできたはずだ。

お金のことは考えず、ゆったりと歌った。








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1時間くらいしたところでスーパーゲイがからんできた。


「アイィ~、シング~、ユゥ~、ギタ~、ブラブラブラ~?……ノープロブレム!!」



なにがノープロブレムだよ、プロブレムしかねぇよと思いつつも面白いので話を聞いてみた。

英語がマジでひどいもんで、アイ、ベリー、ユー!とかわけ分からんこと言ってくるが、なんとか解読すると、どうやら俺はナンバーワンシンガーなので一緒に歌ってあげてもいいわよ、お金も全部あなたの取り分でいいわよ、と言ってるみたいだ。


「ンンン~……アイィ~、ギブユゥ~……ビッグプロブレム!!ブラブラブラ~。」


なんでお前にビッグプロブレムをもらわないといけないんだよと思いながらもあまりに面白いので一緒に歌ってみた。


確かに悪くない。
なかなか上手い。


ただ完全にスーパーゲイなので歌い方がシャズナみたいになってて動きもシャズナ。


通行人も唖然とした顔でこっちを見てくる。


俺が歌うと合いの手を入れるように歌ってくるんだけど、ポウ!!とかアイラブユ、フウウウウ~!!とかもう面白すぎて笑ってしまって歌が止まってしまうといや~!!最高よね!!と抱きついてきて体を触ってくる。

おい、それはやめろ。


ただ日本人とラトビア人のゲイがいちゃついてるだけにしか見えないので誰もお金なんか入れない。

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「ンンン~、アイィ~、ゴ~、ゼア~、モア~、ユ~、ミ~、ブラブラブラ~………アワサム!!」


ブラブラブラってのは英語圏でよく使う、あーでこーで、みたいな感じの略の言葉。

お前がブラブラとか言うと想像してしまうからマジでやめてくれ。



ていうかさっきから何を必死に言ってるのかと思ったら、もっと建物の奥の暗いほうに行ったらもっと声が響いていい感じになるわよ~ポウッ!!と言ってるらしい。


悪いがこれ以上誤解されるわけにはいかないし、こいつのボディタッチが度を増してきたのでそろそろ撤退することに。


「アイィ~、トゥギャザ~、ユゥ~、エブリデイ~、ブラブラブラ~……シング~、」


「悪い、今日はもう帰るよ。また明日会えたら歌おう。」


「トゥモロ~?………アイィ、ゲット、アナザ~ガイ、ソーリ~!!」


私が違う男を見つけたらその時はもう一緒に歌ってあげられないからゴメンね………とのことだった。



いつもブログのコメントの返事に使っていた言葉を使おう。










そうですか。












スーパーゲイが来てからまったくお金が入らなくなったが、その前の1時間だけで意外にも32ドル入っていた。

稼げそうな街ではあるが、そんなにガツガツする必要もない。

ビールを買ってケンタッキーで晩ご飯を食べ、寝床を探して歩いた。











巨大なクレーンが並びコンテナが積み上がった港湾のフェンス沿いを歩いていくと、岸壁に面した遊歩道に小さなベンチがあった。

ちょうど木が頭上にしげっており夜露をしのげそうだ。

空を見上げると月が輝いて青白く光を放っている。

これなら雨も降らなさそうだ。







ベンチに座り、目の前に広がるハーバーの夜景を眺めながらビールを飲んだ。
夜風が気持ちいい。

あれほど極寒の毎日だったのに、もうここまで来るとまったく寒くなくなってビールの冷たさがとても美味しく感じられた。
ある種の達成感はそれなりにビールを美味しくさせた。






旅の初めの頃の、あの抜き身の冒険心を思い出したくて回ったこのニュージーランド。
確かに素晴らしかった。あのフィヨルドの景色をまた見られるとは思わなかったし、孤独な道と極寒の夜の寂しさも懐かしく思い出された。

あの頃のギリギリの張りつめた糸の感覚。



でもやはりこれは擬似体験でしかなかった。
ノルウェーの鮮烈な日々をもう一度味わいたくてやっただけで、轍を踏んだだけの道だった。

当たり前だが、本家のノルウェーを超えることはなかったな。





世界の色んなところに行って、いろんなものを見て、随分と人間社会というものへの耐性ができてきたと思う。
もはやそれなりのことでは驚かない。


だからこそこれからのアジアが最高の場所のように思える。

今までのどの場所とも違い、人間の根源的な欲や本能がむき出しになっている、とてつもなく大きな混沌の渦の中だ。

一体どんなところなんだろう。全然想像がつかない。その想像がつかないというところに胸がドキドキしてくる。






最後の舞台はもうすぐそこ。

そして日本ももうすぐそこだ。







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