恐怖のチキンバス

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11月28日 木曜日
【グアテマラ】 サンクリストバルフロンテーラ
~【エルサルバドル】 サンミゲル






目を開けると殺風景な部屋の中。


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何もない、石の部屋。


ガラスのない窓から日が漏れこむ。



静寂。

床に敷いたマットの上、体を起こした。




「ハーイ、フミ、起きたかい。」


隣の部屋から声がした。
陽気な男、トトだ。

ゆうべの乱闘と警察沙汰の末、iPhoneを取り戻し、村人たちとドンチャン騒ぎをしてからこのトトの家に転がり込んだ。

安堵に包まれた心、ゆっくりと眠った体にはすっかり力がみなぎっていた。

よし、動けるぞ。







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トトの家はゆうべ寝たグロスの家に比べるとはるかに綺麗だった。

村の真ん中で商店を営むトトの家族は比較的収入も多いんだろう。

トトの部屋にはパソコンもある。




でもそれでも水道からは水が出ない。
溜めている水場から桶で水をすくって利用する。

シャワーはもちろんお湯なんか出ないし、それどころかシャワーヘッドもない。
ドラム缶に溜めた水をすくって体にかけるだけだ。

トイレにはドアがなく、外から丸見えだし、水が流れないのでこれまた桶ですくって流す。


これがこの村の比較的裕福な暮らし。
ボイラーや冷蔵庫なんて夢のまた夢だという現実が強く胸を打つ。









「じゃあ俺ママのお店でご飯食べてくるよ。」


「おう、後でお店でなー。」


1人で家を出て外に出た。
さんさんと照りつける太陽が村の隅々を輝かせる。

未舗装の地面やボロボロの家、錆びついたフロントガラスのない車がガタガタガタと走っていく。

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穏やかな光景。
昨日はあんなにふさいでいたのに。














ママのお店に行くと、みんなが笑顔で迎えてくれた。
すでに全てを知ってる周りのお店の人たちが手を振ってくる。

そして俺の首の引っ掻き傷を優しくなでてくれる。


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柔らかい風が吹く外のテーブルで、ママの作ってくれた朝ごはんを食べる。

卵とトマト、豆、そしていつものトルティーヤ。

中米の最もポピュラーな食べ物が優しく体に染み渡る。

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ママに晩ご飯用のサンドイッチを作ってもらい、村の人たちみんなに挨拶して回る。

みんな元気でな、と肩を叩いてくれる。

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こんな山里に迷い込んだ1人のアジア人闖入者が巻き起こした騒動。

あの映画のような出来事をきっとみんな語り継いでいくんだろうな。

そしてこれからも、何事もなかったようにささやかな暮らしが営まれていくんだ。


「私はあなたのママよ。忘れないでね。」


そう言って顔をなでなでしてくれるママを抱きしめて荷物を担いだ。

みんなありがとう。











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すぐ隣の道に出ると、南国ムードの植物が生い茂る国境が目の前に見える。
トラックやバスが無秩序にひしめくカスタムの入り口を歩いていくと、札束をバタバタ見せながら両替のおじさんたちが近寄ってくる。


ここで替える必要はない。
なぜなら中米ではすべての国でアメリカドルが使えるから。

もちろん現地のお金に替えたほうがボラれることも少ないだろうけど、こっから先はバスを乗り継いでかっ飛ばすだけだ。

両替のおじさんたちに笑顔を向け、イミグレーションへ。

グアテマラ側の窓口でパスポートを見せる。
ちょちょっとチェックをしてスタンプが捺される。


「フミターケ!!アディオス!!」


「アディオス!!」


インディージョーンズみたいな国境越えからティカル遺跡、アンティグアでの穏やかな日々、そして最後の大波乱まで、とことん楽しませてくれたグアテマラ。


うーーーーーん、面白かったよ!!!

また来たいと思える国だ!!


アディオス!!グアテマラ!!

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国境を越えると、歩いてすぐに次のゲートが見えてきた。
木漏れ日が揺れる中に、ひなびた建物。

エルサルバドルのカスタムだ。




パスポートを見せるとスタンプも捺すことなく、通行を許可された。
グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグアは何かの協定を結んでいると聞いたことがある。

そのためスタンプどころか荷物のチェックも何もない。

あっという間にエルサルバドルだ。







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グアテマラ側と同じように、国境の先にはバラックの小屋が並び、小さな商店がある。


さー、先に進むバスはどこかなー。
できれば今日中にエルサルバドルを抜けたいところなんだけどなー。



「ヘイ!!ワッツアップメーン!!サンサルバドルに行くのかいメーン!!」


通りの向こうからボロボロの服を着た兄ちゃんがたどたどしい英語で声をかけてくる。
一瞬身構えるが、もう俺は大きな勉強をしたところ。油断は1ミリもないぞ。


「サンサルバドルに行くにはこのバスさメーン。こいつでサンタアナまで行って、乗り換えてサンサルバドルさメーン。」


ここらの人は語尾にメーンをつけたらイケてる英語だと信じてやまない。
この黒ずんだ服と油まみれの手をした兄ちゃんもかつてはアメリカに行ってたんだろうな。




「サンタアナまではいくらでいけるんですか?」


「55さ。」



エルサルバドルの通貨がどんなもんでどんなレートかもまったくわからない。
多分1時間くらいの距離。
1ドルくらいで行ければいいんだけど。


「1ドル払えばいいのさメーン!!ドライバーがお釣りを返してくれるよメーン!!」


おお、なるほど。
ドルで払って現地通貨のお釣りをくれるわけだな。


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と思ったら、




あ?あれ?

なんでドルのコインを返してくるの?



「ヘイメーン!!エルサルバドルはドルだぜメーン!!」


すっげ、なんで違う国の金を使ってんだ!!
中米やっぱりわけわかんねぇ!!

ていうか1時間の距離を55円って安い!!!







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坂道をブンブンうなりながら走っていくチキンバス。
いつものようにタクシーがごとく道端で手を上げる人たちを拾っていく。



チキンバスはスピード命。

ドライバーの他に補助の男がドアのところで半身を乗り出して道端に叫びながら走っていく。

そして人々の荷物を持ってあげたりしてスムーズに乗り降りさせるので、ドライバーは運転に集中できるってわけだ。

頭に荷物を乗せたおばさん、大きな商品を担いでる人、ジャングルの中の集落で人を拾いながらバスは走る。











そんなスーパーローカルなバスは1時間でこの国西部の町、サンタアナに到着!!


「おおおらああああ!!!!急げやコラアアアア!!!!」


バスを飛び降りると、向こうのあのバスがサンサルバドルだこの野郎!!早く走りやがれ!!と急かされ、え!!値段!!値段いくら!!ほんとにこれ!??とかもうわけ分からんままに言われたバスに飛び乗ると、そのチキンバスはウッヒョオオオオオオ!!!とアホみたいなクラクションを連発しながら走り出す。


あああ!!慌ただしすぎる!!ひと息つく間もねぇ!!

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このサンタアナから首都のサンサルバドルまでが1.35ドル。

1.5ドルを渡したら、きちんとお釣りを返してくれるという良心的な国。
エルサルバドルやるじゃん!!


そしてバスは歩いてる人をマジで轢き殺す勢いでぶっ飛んで行く。
おばちゃんやお爺ちゃんが闘牛をかわすがごとくヒラリとバスをよける。


怖ええええ!!!!



とか言ってるうちにまた1時間でバスは首都のサンサルバドルに到着!!






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はいここ!!MK5!!

マジで殺される5秒で。

とグアテマラの人たちに言われていた凶悪都市!!

一瞬にして逃げ出したいところなのに、降ろされたのは喧騒とゴミだらけのスーパーカオスなローカルエリア。

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なにしに来やがったこの腐れ早漏が!!と野良犬が吠えかかってきますね。




ひいいいいいいい!!!そ、早漏じゃないもん!!多分!!



道行く人に東部の町、サンミゲルに生きたいです!!あ、字間違えた!!いや!!あながち間違いでもない!!
サンミゲルに行きたいとよおおお!!!と言いまくっていると、こっちだ!!この早漏!!と腕を引っ張られて、もうこれ以上乗れないですよ………というすし詰めのバスに押し込まれる。

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バッグがおばさんの顔に当たる。
トロールがお爺さんの顔にタックルする。

ご、ご、ごめんなさい!!
わざとじゃないんです!!
殺さないで下さい!!

と泣きそうな顔をしていると、周りの人たちがサッと席を立って俺を座らせてくれる。
そしてニコリと笑う。



あ、エルサルバドルいい国。
市バス20セント。











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はい、また謎の場所。
ターミナルとかあるわけないし。


なにここ?
岩国の駅前?



ここどこだよー!?と途方に暮れつつも、そこらへんにいた警察にサンミゲルに行きたいです!!とお願いすると、スペイン語で何か言ってくる。

まったくわからないのでフナムシみたいな顔をしていると、こっち来いとどこかへ連れて行ってくれる。


道路沿いに人だかりが出来ているところを発見!!
ここに来ると言う。


「オッラアアアアアア!!!!ちっ殺すぞおのれらああああああ!!!!」


「早く乗れ!!ホラ!!早く乗れって言ってるだろう!!」


「ぎゃああああああああ!!!!」



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気が狂ったようなバスが怒号を上げながら突っ込んでくる。

それにダッシュで群がる人々。
こける子供、突き飛ばすおばさん、中島みゆきの気分で、もちろん俺も叫びもせず助けもしませんよね。

災害が来た時の彼らの逃げ方とかスーパー早いだろうな。

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「心配するな、俺がちゃんと乗せてやる。」


唖然とする俺に、頼もしくジェスチャーしてくれるお巡りさん。











しばらくしてその若いお巡りさん、いきなりホイッスルを吹きながら道に飛び出して1台のバスを止める。


「これだ!!早く乗るんだ!!」


「オッラアアアアアア!!何やってんだどけやコラアアアアアアア!!!」


「早漏があああ!!!!」


クラクションの嵐の中、VIP待遇でバスに飛び乗る!!
あ、ありがとう!!と走り出したバスの入り口から振り返ると、お巡りさん、怒号と人垣の中で背中を見せたまま手を上げて親指を立てる。


か、かっけぇ………!!

なんだこれ?




この綺麗なバスの値段は5ドル。
多分もっと安いのがあるだろうけど、このカオスな国でちゃんとバスに乗れただけでも良しと思わないとな。

あー、疲れる………












バスは3時間走ってエルサルバドル東部の町、サンミゲルに到着。

すでに時間は20時で、外は真っ暗だ。

今日はもうここまでだな。
やっぱりローカルだとそんなに距離を稼げない。



宿はもちろんない。
一応バスターミナルで止まってくれたので、ここで朝まで時間を潰して早朝のバスでスタートしようか。


治安はまあまあ心配だけど、首都よりかはまだマシだろう。


「ここがサンミゲルでいいんですよね?」


後ろの座席のおじさんに聞いた。


「ああ、そうだよ。」


優しそうなおじさん。
やっぱりエルサルバドル人は優しい。





バスを降り、荷物を持ってターミナルの方へ歩いて行くと、誰かが拙い英語で声をかけてきた。

振り返るとさっきのおじさんだった。


「今夜はどうするんだい?」


「あ、バスターミナルの中で朝を待ちます。」


「そうか、もしよかったらウチに来るかい?」


え!!なんで!!まだ2秒くらいしか話してないのに!!

奥さん、小さな子供、奥さんの兄弟のおじさんがニコニコしている。


荷台のある車で、ここに乗ってウチに行くかい?と言う。



はい!!モチのモチでよろしくお願いします!!


「よーし、じゃあ行こうか。」


「ちょ、ちょっと待ってください!!何で今会ったばかりの僕を泊めてくれるんですか?」


「それはね、君がギターを持ってるからさ。僕もギター弾きだからね。まぁクラシックのほうだけどさ。行こう!!」










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荷台に俺とおじさんを乗せた車は夜のサンミゲルの町中を走っていく。

たくさんのフランチャイズのお店が並び、大きなショッピングモールもある。

バーやレストランではバンドが演奏をしており、とても賑やかで綺麗な町だ。


「サンミゲルはエルサルバドルの中でも裕福な町なんだ。ナイスシティーさ。でもサンサルバドルはいけない。あそこは本当に危険だからね。」


すると道路脇に大きな観覧車が見えた。
足元には無数の屋台がひしめいており、明かりがこうこうと光っている。
人もたくさん歩いていた。


「明日の夜から日曜日にかけて大きなフェスティバルがあるんだよ。この国で1番大きなお祭りさ。明日までいるんだったらうちに泊まっててもいいんだよ。」


んんん………
けどすべての町を楽しんでたらいつまでたっても前に進めない。

残念だけどフェスティバルは諦めるか。












車は郊外に向かい、次第に町灯りから遠ざかる。
森と荒野の中の一本道を走っていく車。荷台であびる風がひんやりと冷えこんだ。


外灯もない田舎道。

対向車もない。

真っ暗な夜の中を静かに走っていく。

髪の毛が風で顔をうつ。


ふと空を見上げてみたら、そこには息を飲むような星空が広がっていた。

普段は見えないような細かい砂粒のようなものまでが、暗い空をおおっていた。


「なぁフミ、あの星の集まりを知ってるかい?」


「ああ、もちろん。オリオン座だよね。」


「あれはね、ドアオブヘブンって言うんだ。あそからイエス様はやってきてくれるのさ。」




なんてこった。

確かにあの長方形はドアのようにも見える。
夜空に浮かぶあのドアの向こうが天国になっているだなんて、なんて素敵なことを考えているんだ、エルサルバドル人は。



遮るもの何ひとつない夜空に光る天国へのドア。

俺たちは見上げる。
60億人の地球から。












車は小さな村に入っていき、彼、ファビオの家に着いた。

そこには彼の一族がみんなで暮らしている家があった。


ファビオが俺を紹介してくれる。

このとんでもなく小さな集落に日本人が来たことなんてまずないだろうな。

しかし、ママもお爺さんも子供たちも驚いていいものなのに、みんな暖かく迎えてくれた。





ママが、中米の家庭料理、パパスを焼いてくれた。

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トルティーヤの中に豆のペーストとチーズを入れたもの。
トルティーヤは市販を食べるのが一般的だけど、ママは年季の入った手つきで生地から作っている。

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旨すぎる!!
これマジで美味い。

今までの中米のローカルご飯で1番美味かった。

感動的なほどの味に大喜びする俺を、家族のみんながニコニコしながら見ていた。



「フミ、僕は教師なんだ。音楽を教えている。奥さんは数学の先生。奥さんの兄弟も、その奥さんもみんな教師をやってる。だから俺たちはあまりお金には困っていない。俺たちは人を助けたいんだ。フミが来てくれてとても嬉しいよ。」




22時を過ぎたこの田舎の集落には明かりはまったくない。
虫の鳴き声だけが響きわたっている。


そんな庭で、2人でたくさん話をした。




するとファビオがギターを出してきた。
クラシックギターだ。
渡されたのでまずはチューニングした。


「ん?それどうやってやってるんだい?」


俺がハーモニクスでチューニングしているのを見てそう言うファビオ。

ハーモニクスのチューニングなんて初歩中の初歩。
でもこのスーパーど田舎の音楽教師であるファビオはそれを知らなかった。


彼が教えているのは小さな子供たちだという。
本格的な学問としての音楽でなくとも、音の楽しさを教えることがなによりも大事なことだよな。





ファビオがギターを弾いた。

おお、上手い。
バッハだ。

アメリカを一緒に旅したクラシックギター弾きのユージン君とまではいかないけど、基礎のしっかりとした奏法だった。



虫の鳴き声とガットの優しい音色が混ざり合う。


その滑らかな指の動きに、彼のこれまでの人生を見るようだった。







【中米ローカルバス南下】 3日目


★グアテマラフロンテーラ~サンタアナ 55セント
1時間


★サンタアナ~サンサルバド 1.35ドル
1時間20分


★サンサルバドル~ターミナルオリエンテ 20セント
1時間


★サンサルバドル~サンミゲル 5ドル
2時間40分


小計 7ドル

合計 14.5ドル


国際バス 126ドル




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