旅で失うもの

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11月10日 日曜日
【グアテマラ】 フロレス島







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久しぶりのドミトリー。

しかも2段ベッドのドミトリーだ。


8人分のベッドが並んでおり、全部埋まっている。
泊まっているのは白人の女の人たちだけど、バッグを広げたり服や靴下をベッドの手すりにかけたりして散らかしているのはどこの国のバッグパッカーも一緒だ。




ドミトリーはあんまり好きじゃない。

ドタバタしてゆっくり眠れないし、寝顔を人に見られるのも気持ちいいものではない。

こっちも気を使わないといけないし、iPhoneやバッテリーを安心して充電しておけない。


なので、数人のパーティーで行動している今は極力2人部屋、3人部屋に入るようにしている。

値段はほとんど変わらないし、少し高くなってもプライベートルームのほうがいい。



でもゆうべチェックインしたこのホステル、ドナゴヤは現在プライベートルームは満室とのことだった。

ドミトリーで我慢しないとな。










起きると部屋の中には誰もいなかった。

窓1枚挟んだ表の通りから、子供の遊ぶ声が聞こえてくる。

のどかな漁村の朝。



そのまま日記を書いていると、シャワーを浴びてたナオコちゃんがやってきた。


「ケータ君は?」


「あー、屋上で電話してたぎゃー。」



メキシコシティーでケータ君と会った時から彼は頻繁に電話をかけていた。

そしてその電話の前後はいつもとても寂しげな表情をしていた。


電話の相手はいつも1人。








ケータ君には、一緒に世界一周をしようと約束した彼女がいる。
そのためにお金を貯めようと同じバイトを始め、2人でせっせと貯蓄していたんだそう。

そして一足先にケータ君のお金がめどがついたため、彼は彼女を日本に残して海外に出た。

1年後に日本に戻り、結婚をして、それから今度は2人で世界を見に行こうという約束をして。













ケータ君が旅に出て8ヶ月。


詳しくは書けないけど、今2人の関係は終わりに向かっていた。

メキシコシティーからずっと、昼夜が真逆の時差の中、ケータ君はよく電話をかけていた。


話の内容はわからないけど、電話の後の寂しげな表情が、良くない方に向かっていることを表していた。


それでも、俺に気を遣って元気に振る舞う男だったので、俺もあまり余計なことは言わずにいつも通り楽しくやってきた。
本当にいい奴だ。







旅の中で恋を失うことの辛さは、死ぬほど味わった。
そしてひたすらに待ち続ける彼女側の苦しみも、100分の1くらいはわかっている。



今なら、もっと優しく出来たと思う。
もっといたわれたと思う。
あの柔らかい体をもっと抱きしめられたと思う。
顔をぐちゃぐちゃにして泣いていた涙を、流させずにできたはず。


今あいつのことを思えば、まだ夢を見ているような気もする。


でも全部、全部、失ったから成長できたことなんだけど。








だから、ケータ君から相談を受けた時は、的確なアドバイスなんて出来なかった。
失わなければ、今よりもっと優しくなんてなれないんだから。



俺たちは自分のやりたいことのために、彼女たちの貴重な人生の時間を奪っている。
そんなことケータ君だって重々わかっている。


後で後悔しないために、たくさん考えて1番だと思う選択をしないといけないよと、そんな投げやりな助言しか出来ないでいたこの数日。

恋愛なんて、本人たちにしか判断できないものだ。
2人だけのたくさんの思い出があるんだから。
それは2人だけのものなんだから。




あの泣きたくなるほど綺麗な思い出たちを涙で濡らさないために、俺たちは努力しないといけない。

それが遠く離れた旅路の中だとしても。














お昼を過ぎてもケータ君は屋上から降りてこない。

こりゃよほど大事な局面になっているのかな。



少し心配になって様子を見に行ってみた。

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屋上に上がると、そこにはいくつかのハンモックがかかっていて、湖の綺麗な風景を見渡すことができた。

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のびやかで、おだやかで、心安らぐ、どこか懐かしい風景の中に、ケータ君がいた。

ハンモックに包まって、目をつぶっていた。

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近づいてみてすぐにわかった。

目をつぶっていても目のまわりが赤くなっていた。





「ケータ君、ご飯行くけどどうする?」


「え、あ、ああ………僕いいです、2人で行ってください、すみません。」


いつものように、何事もないかのように喋っているが、声が喉のところでどもっている。

そして開いた目は赤く充血していた。













ケータ君を残してナオコちゃんとご飯を食べに。

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ゆうべ夜に到着したこのフロレス島。

喉かな漁村のようなところだと思っていたが、まさしくそうで、トタン屋根の民家が並び、地元の子供たちや爺さんがチラホラと歩いている。

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電信柱は古く、ごちゃごちゃと電線がからまり、野良犬が無防備に寝転がり、時が止まったように静まり返っている。

ほんの小さな、ささやかな生活のある島。

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そんなのどかな場所だけれども、一応ティカル遺跡への拠点の町として観光地にはなっている。

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土産物屋さんがところどころにあり、レストランやツアー会社が通りにドアを開け放っている。

しかしどこもみんな暇そうだ。

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ゆっくりと歩いていたのにわずか20分くらいで島を一周してしまった。

本当になんにもない。

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島の中央に向かう坂道があったので登ってみた。


ガタゴトの石畳が民家の間をのびており、漁村の風情に郷愁がわく。

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わずか100メートルほどのゆるやかな坂を登りきると、そこには広場があった。

バスケットコートがあり、フェンスの向こうに湖が見える。
そして真っ白な教会がたっていた。

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中に入り、ぼんやりとキリスト像を眺める。

静寂、そして誰もいない。

割れたステンドグラスから淡い光が差し込む。

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ああ、ここは中米のジャングルの中にある小さな島。
そこにこんなキリストの教会がある。
ヨーロッパで見てきたものと同じシンボルが祭壇に飾られている。

それがとても奇妙で、まるでデジャヴのように自然にそこに座っていられた。










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ゆうべご飯を食べたレストランに行き、ささっと腹ごしらえ。

ナオコちゃんはケータ君が心配だから宿に戻るというが、俺はもう少し湖を眺めたかった。


1人になって歩いた。






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水際のブロックの上に腰かけて遠くを眺める。

小さな舟がトトトト、と音をたてながら進んでいく。

できた波紋が湖面にうつる景色をみだす。

そして俺の中にあるあの日々にも波紋をたてる。




旅をして失うものはたくさんある。

でも手に入れるものもたくさんある。



天秤にかけることは出来ないけど、きっとバランスがとれるものだと思う。

失ったことには何か理由があったんだよ、なんて残酷なことは言わない。

他に替えられると思えるほど、失った時の苦しみは軽いものじゃない。



でも、でも、その苦しみも、色あせていくんだよ。

忘れることは決してないけど、薄れていってしまう。

それがものすごく怖い。







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ふと顔を上げると、湖の向こう、低い山にかぶさるような雲の隙間から夕日がのぞきはじめた。

荘厳なまでに美しい色が湖面を染め上げていく。


ああ、あいつ今頃幸せにしてるのかな。
笑っているのかな。








すぐに宿に戻って屋上に上がった。

そこにはケータ君がお昼と同じ態勢でハンモックにくるまり、ナオコちゃんが横に座っていた。



「ケータ君、夕日綺麗だぜ。ちょっと歩こう。」


「…………そうですね、歩きますか。」





3人で湖沿いを歩いた。

夕日は刻一刻と色を変え、このジャングルの中の小さな町を染め上げていた。


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湖では地元の子供たちが元気に泳いでおり、夕日の中にシルエットを踊らせている。

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口数少なく歩く俺たち。

別にそんなに気を使うこともなく、誰も口を開かない。











「あー、夕日綺麗だなぁ………チクショー………ちょっとすみません、俺泳ぎます。」


そう言っていきなり服を脱ぎ出したケータ君。ブロックの上から躊躇なく湖に飛び込んだ。


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ナオコちゃんと2人、驚きながらケータ君を眺める。


「おーい!!大丈夫かー!!」


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遠くの浅瀬に行き、こっちに手を振るケータ君。
そしてそこにいた地元の人たちと話している。

あいつは本当に誰とでも話し始めるやつだ。


いつも飛び切りフレンドリーにコミュニケーションを始める。


でもそれは、人と話すことでどこか自分の中の足りないものを探しているような、そんな危なっかしさが見え隠れする。

夕日の中のそれがとても寂しげだった。

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ケータ君、俺たちもっともっと優しくなれるよ。

これから出会う人たち、今そばにいてくれてる人たちを、もっともっと大切にできるようになる。

好きな人たちを嬉しい気持ちにさせてあげられるような、そんな男になろう。

俺も頑張る。
失ったものたちとの約束だもんな。


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