マックスという人

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9月2日 月曜日
【アメリカ】 ロサンゼルス






ゆうべは飲みすぎた。
盛り上がってナターシャと大騒ぎしてたもんだから体がだるい。
でも今日も歌いに行くぞ。
行かなければいけない。
今日は連休最終日。明日になったら休もう。



「ハイ、ミナサン、今夜はお泊まりはなしでお願いします。明日から僕もケリーも仕事で早起きなので、すみません。とても楽しい毎日でした!」


申し訳なさそうに言うマックス。

いつもお泊まりの後のこのやり取りが好きだ。
お互いに気を遣い合い、別れを告げる瞬間の感情の交換。

マックスはとても大人で、重くなりすぎないようにサラリと別れを告げてくれる。
本当にカッコいい男だ。









荷物をまとめていたら、ちょいとした事件が。

ゆうべみんなで泥酔しながら俺のギターを弾きまくっていたんだけど、どこを探してもカポタストがない。
ルーフも庭もバッグの中も、どこにもない。

もはや誰も行方を知らない。
だいぶハチャメチャなことになっていたし。


慌てて探し、見つからなくて落ち込んでいると、マックスがどこかに電話をかけた。


「よし、フミ、ちょっと俺の友達のとこに行こう。」


そう言って2人で自転車に乗って、ベニスの町並みの中を走った。

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網の目に張り巡らされた運河に無数の小さな橋がかかっている。
水際の家の前にはそれぞれにボートがつながれていて、人々のちょいとした足がわりになっているみたいだ。

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そんなベニスの古い町を走り、マックスの友達の家に着いた。
中に入ると、そこには若いご夫婦とお婆ちゃんが生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて談笑していた。

のどかな家族の風景に乱入する俺たち。


「ヘイ、バディ。余ってるカポタスト持ってないか?彼は日本人のシンガーなんだけどカポタストをなくしたんだ。」


「おー、そうか。じゃあこれをあげるよ。」


「ありがとうな。よし、じゃあフミ、1曲歌って。」


急展開すぎてよくわかんないけど、心をこめて歌う。
赤ちゃんがキョトンとした目で俺を見ている。

みなさん喜んでもらえたみたいだ。


「フミの歌に使ってもらえるなら俺も嬉しいよ。これとこれ、どっちのカポがいい?」


今まで使っていたのと同じカイザーのやつをくれたショーン。


「よし、じゃあ戻ろう。サンキューバディ。また来るよ。」


そしてすぐに家を出て自転車にまたがる。
仕事が早え!!っていうか急展開すぎる!!

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家に戻ると、リックがメキシコの朝ごはんを作ってくれた。
クレープのパンで卵焼きロールしたシンプルなものだけど、味付けが絶妙。
ていうかこんなすごいギタリストに朝ごはん作ってもらって恐縮すぎる(´Д` )


「メキシコシティーに来たら連絡してくれ。街を案内してあげるし、僕のコンサートにも招待するよ。」


メキシコの地下鉄の切符、そしてリックが愛用しているといつギター弦までくれた。
リック、またメキシコシティーで会えるのを楽しみにしてるから。
こんな下手くそとセッションしてくれてありがとう。

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ケリーが起きてきた。
いつもご飯や洗濯物でお世話になったケリーのために最後に1曲歌わせてもらった。



どこに行ってもあなたを想ってる
どの歌もあなたのために歌う
だからキスして微笑んでおくれ
待っていると言っておくれ
どこにも行かないように抱きしめておくれー


ボロボロと泣いてくれたケリー。
可愛らしい、とても女性らしい人だった。
大好きでした。ありがとう。




「いらない荷物はガレージに置いて行けばいいよ。またバスキングが終わってから取りにきな。」


ありがとうマックス。

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よーし、今日も気合い入れて稼ぐぞコノヤロウ!!
ロサンゼルス大好きだ!!



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ビーチに出ると、デコピンで人を殺せる巨人がうようよ歩いていた。
何やら今日はボディビルの大会をやっており、すごい人出で賑わっている。

ビーチは体をひけらかす場所。男の見せ所。
これみよがしに浜辺にトレーニングジムがあるんだけど、その周辺にお店が並んでおり、売ってるのはだいたいプロテイン。

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もちろん女の人もムッキムキ。

アメリカは肥満かゴリラかどっちかってくらい極端だ。

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あなたはトレーニング必要かとおもいます(^-^)/





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切れてるだろう?



そんな巨人たちの中にいたら俺たちのモヤシ具合が悲惨すぎるのでとっとと歌いに行く。

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切れてるだろう!?









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いつもの場所で早速歌っていると、日本人が話しかけてきた。

うお!!珍しい!!


「か、金丸さん、私ブログにコメントした者です。うわー、本当に会えたー。」


ご夫婦で聞きに来てくださったのは、つい前日にブログにコメントを下さっていたロサンゼルス在住のまみさんと旦那さん。

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スタイルのいい可愛らしいまみさん、嵐のなんとかって人に似てる爽やかな男前の旦那さん。

まぁ美男美女のご夫婦だ。

ロサンゼルスに来るのをずっと待っててくださったよう。
ありがたい。

それからしばらくお話をさせていただいた。


大学からこちらに来ているというまみさん。旦那さんはロサンゼルスの出身なのだそう。


「美味しいラーメン屋さん知ってますか!!??ラーメン!!!」


「あー、僕はそうですねー。山田屋とか九州ラーメンが好きです。」


「リトルトーキョーには美味しいところありますか?」


「リトルトーキョーはあそこはアメリカ人のための日本食屋さんばかりで、本当の日本人が喜ぶようなお店はないですね。」


サンタモニカにあるファーザーズオフィスというバーのビールとバーガーが、ロサンゼルスではイチオシなんだそうだ。


3~4曲聴いてくださり、お2人はカッピーたちを探して歩いて行った。
若々しくて可愛らしい、とっても素敵なご夫婦だったな。

まみさん、旦那さん、わざわざ足を運んでいただいてありがとうございました!!









さー、稼ぐぞーと演奏を開始したところで、1人のおじさんがやってきた。

この場所は本当はバスキングしてはいけないエリアなんだそう。
マジかー。

ダンスチームがパフォーマンスしている1番メインのスクエアから北側しかやってはいけないんだそう。

確かに向こうにはあんなに隙間なくパフォーマーや露店がひしめいているのに、こちら側には一切いない。

薄々気づいてはいたけど、警察が目の前を歩いても何も言って来ないので続けていたがとうとう来てしまったか。
まぁ4日ここでやれただけで良しとしなきゃな。

スティーブン、ベーデン、近所のアパートのみなさん。
みんな受け入れてくれてありがとうございました。







どちらにしろ今日からサンタモニカのビーチに移動するつもりだったので、最後にベニスの激戦区のほうでやってみるか。

露店がひしめくエリアを歩いてみた。

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まぁ、すげえ。
どこまでも、マジで隙間なく露店が連なっており、もはや入り込む余地など一切ない。

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しかもレギュラーのお店からは大音量の音楽が流れ、かろうじて音楽がかかってない場所ではもれなくダンスチームや路上ミュージシャンがスピーカーでガンガンやっているので、生音ではとてもじゃないけど太刀打ちできない。

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こりゃきついなぁ、と歩いていると、そんな激戦区のど真ん中で人だかりを作っているパフォーマーがいた。
カッピーたちだ。

おお、いつの間に導入したのか、レッチリのカリフォルニケーションをやってる。ちゃっかりしてる。
ジャズ風にアレンジしており、そのイカした演奏に拍手が起こる。
そう、ベニスはレッチリのホームグラウンドだからね。
ビーチでPVの撮影するくらいだし。



「おーい、稼いでるねー。」


「いやー、カリフォルニケーションやばいねー。ものすごいウケるわー。」


「ところでこの曲誰の曲だっけ?」


知らねぇのか(´Д` )


ノリノリのカッピーとユージン君に負けてられん。
俺もなんとかもう少しはやらないと。まだ1時間くらいしかやれてない。


しかしこの1kmもあろうかというロングビーチの一直線。
どこまでもほんとに隙間なくみんな陣取っており、やれるスペースがない。

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ぶらぶらと歩いていたら夕日が海を染め始めた。
今日も素晴らしい夕日。
1日が終わる。
毎日見ても決して飽きることがない。

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夕暮れとともに露店は店をたたみはじめる。
そしてさっきまであんなに混雑していた通りの海側スペースが跡形もなく何もなくなった。

朝は6時くらいから場所取りが始まるというこの通り。
ヒッピーのオッさんやホームレスみたいな人だちはお店をたたんでそのままそこで寝ているみたいだ。

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20時近くなり、夕闇がビーチを包み、ようやくスペースが出来た通りには人影もまばらだ。
そんな外灯の下でギターを出して歌った。

パラパラとお金が入る。
この時間からの路上も悪くないな。

30分ほどやってカッピーたちのところへ戻った。
今日のあがりは21ドル。









外灯の下、まだ頑張っていたカッピーたち。
2人はコンビでやってるわけだから稼ぎは折半。コンスタントに毎日70~80ドル稼いでいるが、それではなかなか厳しいところだ。



そろそろ終わろうかと言うところにマックスからカッピーに電話がかかってきた。

なにやらレストランに来なと言ってるみたい。

どうしたんだ?ガレージに置いた荷物は取りに行こうと思っていたけど。


とにかく指定されたレストランに向かってみる。





あ、面白い日本人発見した。
黒人大好きー!!っていうヒップホップの女の子。
やっぱりベニスは面白いやつが集まる。
あいらに似てるな。

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やってきたのはカナルという名前の日本食レストランだった。

ワイングラスが頭上に並ぶオシャレな店内に入る。


「オー!!ミナサン!!ドウゾ座ッテクダサイ!!今日ハ調子ハドウデシタカ?タク!!オマカセデ作ッテクダサイ!!」


ゴキゲンのマックスがケリーといた。そう大将に言うと、一番搾りのビールが出てきた。



な、なんだよ………

俺たちにご飯食べさせるために呼んだのかよ………



「マックス、僕ら払いますよ。」


「ノーノーノー!!何も気にしないでいい。たくさん食べて力をつけて旅を続けないといけない。さ、乾杯!!チアーズ!!サルー!!」



な、なんなんだよ、マックス。どうしてそこまで俺たちに優しくしてくれるんだよ。


「僕の宝物はお金でも仕事でもありません。友達です。友達こそ人生の財産です。友達と楽しく過ごすのが大好きなんです。でもケリーは友達が多すぎるのは嫌いですけどね。ホラ、いいパイオツしてるでしょ?」


「マックス!!」


ケリーのオッパイを触ろうとして怒られるマックス。
いたずらっぽく笑っている。

まるで子どもみたいだ。純粋で無邪気で。

それでいて彼はディレクターにまで登りつめてる仕事の出来るイカした大人。
そんなマックスを仕方ないわねー、と優しく見つめるケリー。

理想的すぎる夫婦だよ。





それにしてもビールがゲロ吐くくらい美味い(´Д` )

そしたらこんなの出てきた。






こ、こ、こ、こ、ここここ、こ、これは…………!!!!!!



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EDAMAMEだあああああああああああ!!!!!!

あ……た、鯛のカルパッチョ……。



も、もうこれ以上はないだろう……と思ったら、




蕎麦とか来ちまった。

なんかマヨネーズみたいなので和えてる蕎麦サラダ。

どれもアメリカ向けの味なので親しんだものとはちょっと違うけど、美味い!!

寿司もこんなの出てきた!!


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これボルケーノロールっていうらしいよ。
まぐろの赤身、エビ天アボガドで巻いていて、上に天かすをかけてます。


おいおい、なめないでくださいよ。
そんなイロモノで喜ぶと思ってるんですか?

こちとら伊達に翔太の寿司読んでませんからね。
こんな巻き方してたら小政さんに捨てられた後に佐治さんに下唇を突き出されて田舎におっ帰っちまえよ?って泣かされますよ?ああああああああああ!!!!??






うめえです。
だいたいスシローとか行っても茶碗蒸しとかウドンとかエビ天とか唐揚げとかばっかりで、寿司をほとんど食べないというゴミ野郎なので寿司のこととか地紙の型という握りの究極の形のことしか知りません。
あと山芋入れたら卵焼きがふうわりになることも知ってます。

翔太頑張れ。






こんな殺人的に美味い物まで出て来てしまい、みんなクラクラになってしまった。


「ミナサン、今夜ハ泊マッテハイケナイト言イマシタガ、ヤッパリミナサンガヨケレバ、今夜モミンナニ泊マッテモライタイデス。ソシテミンナデ映画ヲ観マショウ。」


うおーーー!!!

マックス!!大好きだあああああ!!!!

また日本来てくれええええ!!!
案内するからああああああ!!!!



「ア、日本行キマスヨ。来年ノ夏デス。サマーソニックデス。仕事デスカラー。」


やっぱりマックスすげえ(´Д` )

photo:32








マックスの家に戻ってきた。
もうどこになにがあるのか全部分かるマックスの家。
ケリーは明日早いのですぐに寝室へ。

俺たち男4人は大きな液晶テレビの前に体を投げ出して、仲良く並んで映画鑑賞。

マックスがオススメ!!と言っていた映画は「ジャンゴ」。

1800年代かな?のアメリカ南部を舞台にした黒人奴隷と差別を描いた映画。

プランテーションで働いていた1人の黒人の男がカウボーイとなり、バウンティーハンターとして腕を磨いていく。

旅をしながら、白人の悪人を成敗していき、最後にディカプリオ扮する白人至上主義の親玉をやっつけるっていう、タランティーノらしい痛快アクション。


舞台はテキサスやミシシッピ、テネシー。
俺たちが通って来た道だ。
そこで繰り広げられる大小にわたる様々な黒人差別。
かなりグロい。でもそれがこのアメリカの根底。
こうして映像で黒人奴隷の歴史を見てみると、現代の、黒人がビーチを闊歩している姿や、黒人男性が白人女性と手をつないでることが、いかにすごいことなのか思い知らされる。

人間は平等。
それがいかに難しいことなのか教えてもらえる。
それが実際に旅してきた南部だからさらに実感を持って感じられる。

それを計算してこの映画をチョイスしてくれたのかな。
ありがとうマックス。




ってマックス、映画中盤から爆睡(´Д` )

テレビの前で爆睡してしまうところもまた子どもみたいだな。

この連休でも毎日朝早くから出勤してるもんな。疲れてるんだよな。本当にありがとうマックス。

起こさないようにタオルケットをかけてあげた。








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