バイカル湖が見えてきた

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7月6 金曜日

夜中の2時。
慌ただしい物音で目を覚ます。
アライサたちが荷物をまとめていた。
もうすぐチタの街に着く。
アライサ、アルチョン、パシャ、そして優しいおじさん、
6人部屋の中の4人がここで列車を降りる。

これだけ長い時間、狭い空間の中で寝食をともにしていると不思議な連帯意識が生まれる。
6人部屋のメンバーが家族のように、そして1つの車両が町のような雰囲気となる。
4人が降りたらまた新しい人が乗ってくる。変な人じゃなきゃいいけどなぁ………

アライサ
「ピロシキピロシキマトリョーシカ。ハラショー。(ハラショーってのは本当に言ってる)」

そう言って俺のノートに何やらメッセージを書いてくれた。
みんなに回してそれぞれが名前を書いてくれた。

アライサ、ちょっと好きだったな。
たぶん彼女も俺のこと悪くは思ってないはず。
でも別れは別れ。
みな荷物を抱えておりて行く。
俺も見送りをしようと後について行き、電車を降りた。
夜中のプラットホームにはたくさんの人々がお出迎えに来ている。


文武
「アルチョン、体に気をつけて!」

アルチョン
「フミ、ハラショー。」

文武
「パシャ!飲み過ぎ注意だよ。」

パシャ
「フミ、フレンド。イボーニャ!」

さぁ、アライサと感動的な抱擁を………





イケメンな男と抱き合ってさっさと帰って行くアライサ。



………いいもんね!別にいいもんね!!


はぁあ、寝よ。


真夜中のシベリア。
原野をこうこうと照らす月。
夜霧が川を包み、列車は走って行く。
寝静まった車内。
詩を書かずにはいられない、幻想の夜。
一編、書き終えて眠りについた。

穏やかな眠り。


のはずだったのが、このあと結構怖い出来事に見舞われた。



ベッドに何かが激しく座った衝撃で目を覚ました。
そこには、昼間俺の腕を力まかせに掴んで横に座らせた乱暴なおじさんがいた。

なにやらまくしたてている。
もう1人アジア系の顔の男もいてそいつが片言の英語を喋ってくる。
向こうでビールを飲もう、と言う。
時計を見るとまだ朝の5時。
みんな寝静まっている時間。
やべーチョー怖い。

「ノー、I want sleep 」

眠りたいからごめん、と断るが笑いながらしつこく腕を掴んでくる。
屈強なロシア人の握力には有無を言わせぬものがある。
朝の5時、乱暴で下品なロシア人とアジア人。ゲイじゃないのか?パスポートを奪われるんじゃないのか?という不吉な予感を連想させるは充分すぎるシチュエーション。

やばいどうしようどうしよう!
と思っていると、横のベッドに寝ているいつもはムスっとしている無愛想なおばさんが助けに入ってくれた。

あんたたち何時だと思ってんの?
眠りたいって言ってるでしょ!
かわいそうでしょうが!

たぶんそんなようなことを言ってくれたんだと思う。
彼らはすごすごと帰って行った。

文武
「スパシーバ。」

おばさん
「フン、パジャールスタ。」

おばさんは横になったままそう言った。
怖かった。ドキドキしてしまって目が冴える。
また来るんじゃないかと思うと緊張して眠れなかった。



朝、肩を叩かれて目を覚ますと、おばさんがパンとローストビーフとトマトを切ってご飯を作ってくれていた。温かい紅茶まで。


アライサたちが降りて空いたベッドには新しい人たちが入っている。最初からのファミリーはママだけ。何かと気にかけ、面倒をみてくれる。

無愛想だけど優しいママ。太っちょで愛らしい、お母さんって感じの雰囲気に心が安らぐ。ロシアのママはみんな料理が上手らしく、ピロシキやボルシチはお店のものではなくママが作るものが1番美味しいんだって。

やっぱり男はお母さんが大好き。


今日も色んな席の人たちにつかまってウォッカを飲んで歩く。
陽気な人、シャイな人、無愛想な人、
人間の性格なんてどこの国でも一緒。

photo:01



窓の外にはバイカル湖が見えてきた。
余裕で水平線。
そりゃそうだ。
日本の本州くらいの広さの湖だもんな。
ロシア人はみなロシアの風景、自然を愛している。
みんなが口を揃えて美しいだろ?と自慢してくる。

「ダー、ハラショー!」

と言うと何やら鮎みたいな魚の燻製を進めてきた。
イルクーツクにはオーモリという魚がいて、それが最高に美味いんだよとみんなが言っていたんだが、そう、これがオーモリ。美味い!


ウォッカを飲んだり歌を歌ったりして盛り上がっていたら、ママが呼びに来た。
もうすぐイルクーツクだから準備しなさいって。

4日間散らかした荷物をまとめ、やっとイリクーツクの駅に列車が入る。
たくさんの人が列車を降りて見送ってくれた。
手紙やチョコレートをたくさん持たせてくれる。
ロシアの軍人さんから兵隊帽子までもらった。
みんなありがとう。スパシーバって何回言ったかな。

photo:02



別れを惜しんでいると、ママがついてきなさいと言った。
人ごみの中をママについて歩く。イルクーツクは都会だ。駅は大混雑。ママは俺がはぐれないよう何度も振り返り俺がちゃんとついてきてるか確認しながら歩いてくれる。
駅前に出ると、そこにはママの息子さんらしきお兄さんがいて、なんと車でホテルまで送って行ってくれると言う。
やったー!
イルクーツクはとても危険な街らしく、この鉄道駅からホテルまで歩く2kmの間に強盗被害に遭う人が多いって話を旅行会社からもロシア人からも聞いていたので少し怖かったんだよな。

これがアンガラの川、これが1番古い教会、そんなふうに街の案内をしてもらいながらホテルに着いた。

ママ、本当にありがとう。
いつもムスっとしていたママが最後に照れ臭そうに笑った。
泣きそうになりながら車を見送った。あー、ママの作るピロシキとボルシチが食べたかった。きっともう二度と会えないんだろうな。


日本人のみんなにお願いがあります。
もし日本で外国人を見つけたら優しくしてあげて下さい。
日本語でいいから挨拶をしてあげて下さい。
1人でいたら話しかけてあげて下さい。
日本の食べ物をご馳走してあげて下さい。
少し強引でもいいからお酒に誘ってあげて下さい。
何かお礼の物をもらったらその倍はお返しして下さい。
礼儀正しくして下さい。
決して見下さず対等な目線で接して下さい。

そうすれば、相手にも、自分にもより深い慈しみが生まれ、世の中にある悲しい出来事が少しは減るはずだから。
そう願います。



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