頼むから金くれって言わないでくれ

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11月21日 水曜日
【ハンガリー】 エゲル



昨日の霧はトカイだけのものではなく、ハンガリーの東部一帯を覆い尽くしていたようだった。


2500フォリントのチケットを買い、電車に乗ってエゲルに戻っていたんだけど、途中で電車が止まり、乗客がみんな降りて行ったんだけど、ワインで酔っ払ってた俺は面倒くさいからそのまま電車に居座っていた。


そしたら車掌さんがやってきて、
「温泉温泉、ワイン。」
とハンガリー語で何か言ってきて電車を降ろされる。

どうやら霧が深すぎて電車が運行できないようだった。

そこらへんの人に切符を見せてフラフラ、
あ?ここですか?フラフラ、
え?これでいいんですか?フラフラ。

酔っ払った体に夜風が冷たくて気持ちいい。

クスヌム、クスヌムーと言いながら、なんとなくバスに乗り、なんとなく着いた駅で電車に乗り、さらに2本乗り換えたら、いつの間にかエゲルに着いていた。

エゲルも深い霧に包まれ、オレンジ色の街灯がぼんやり町を照らしていた。
photo:01


そしてゆうべは、いつもの常宿である公園にテントを張って眠ったってわけだ。





目を覚ましたら、木漏れ日がテントに写って揺れていた。

あぁ、太陽の光は元気をくれるな。
心の影と湿りを乾かしてくれる。






久しぶりに、というか初めてか。バッグの中身を整理してみた。

備忘録として装備を書いてみるか。

なんでこんなに重いんだろう………全然なんにも持ってこなかったのになぁ。




「出発時に持って出た物」

★パスポート
★ギター、ハーモニカ
★楽譜と譜面たて
★寝袋
★着替え
(靴下とパンツとロンTを1枚ずつ)
★洗面道具
(歯ブラシ、シャンプー、石鹸、爪切り、毛抜き)
★洗剤
★メガネ
★サンダル
★6千円
★iPhone
★変圧器
★コンセントプラグ
★充電用バッテリー
★ノート
★ペン
★盗難防止のワイヤー
★ゴムのロープ
★ポンチョカッパ
★ザックカバー
★餞別でもらった扇子
★コンドーム
★インスタントラーメン
★小さな袋


これらを40リットルのバッグに入れて出てきた。これでも考えに考えた内容だった。スカスカだったなぁ。
6千円のうちの3千円はなんかあったときのためにパスポート入れに忍ばせている。今のところ使わずにすんでる。




「旅先で手に入れた物」

★野宿用のスポンジマット
(フィンランド)
★ニットの上着
(フィンランド)
★スウェットパーカー
(ノルウェー)
★トロール
(ノルウェー)
★煙管パイプ
(デンマーク)
★テント
(ドイツ)
★キャリーバッグ
(オーストリア)
★冬用上着、ズボン
(ポーランド)
★ミリタリーブーツ
(ハンガリー)
★各国のお金



こんなとこか。
あんまり重いものはないんだけど、積もり積もるととても重い………



あと、よく聞かれるのがその他の準備。


「その他の準備」

★クレジットカード………なし
★世界用健康保険………なし
★遺失、盗難保険………なし
★予防接種………なし


なんもなし。

年金や健康保険、携帯電話代などは、口座に置いてきたお金から引き落とされるようにしている。



最初の頃は、え?俺シベリア鉄道乗ってるけど、もう帰れないんだよな?ってふと凄まじい恐ろしさにかられたりしてたけど、今ではもうすっかり慣れたな。

まぁまだ先進国ばかりなので、この先が勝負になってくるだろうけど。
それでもここまで来れたことに、人間なんてみんなおんなじなんだなって思わせられる。

人種が違ったって、国が違ったって、人間なんてみんなおんなじだ。






そんなわけで、俺の生命線はただひたすら歌うこと。

今日もエゲルのメインストリートへ。


その前にマクドナルドでWi-Fiにつないでメールチェック。



「フミ!!」


顔を上げるとそこには、リィーコとハゴがいた。


「うわーー!!帰ってきたのーー!!」

「帰って来たよーー!!セックスさせて!!」


抱き合って喜んでいると、向こうの方で、ノシノシ歩いている太っちょマニがいた。


「マニ!!おーい!!このゲイ野郎!!」


「ワオーー!!ユーアーゲイサムライ!!」



一瞬でこの前のメンバーが揃った。
奇跡!!
というほどでもないか。小さな町だからな。



用事を済ませてから歌ってる場所に戻ってくるよ!!とひとまずみんな散り散りになり、俺は早速路上開始。


ウキウキ!!

なのだが喉の調子が悪い。

ていうか体がだるい。

最近飲み過ぎだったからなぁ。

体が疲れてるみたいだ。



全然声が出ないけど、弱音吐ける立場じゃないので、頑張って歌いまくり、なんとか6000フォリントまでもっていくことができた。
20ユーロくらいだ。



そこにマニやリィーコたちがやってきた。

可愛いリィーコ、
セクシーなハゴ、
photo:02



路上でお構い無しにイチャイチャしてくるけど、日本人としてはやっぱり人前でイチャイチャするのは恥ずかしい。

今夜こそ!!

今夜こそセックス!!

もしかして3のPってやつですか?

いやー!!蹂躙する自信ない!!




するとリィーコが申し訳なさそうに言った。


「フミ、ごめん、夜に返すから1000フォリント貸してくれない?」













ギターケースに溜まっているお金の中から1000フォリントを取ってリィーコに渡した。



一瞬にして冷めた。

あー、こいつもか。

こいつも俺のこと金持ってる日本人と見てるのか。

夜に返すね、か………

きっと戻ってこないな。




あー、冷めた。
3Pだって。笑ってしまいますね。
3Kの間違いじゃないですか?
汚い、臭い、金丸の。
笑ってしまいますね。
笑ってくださいよ。
死のうかな。




夜にマクドナルドねー、と去っていくリィーコたちを見送った。



聞いてよーーーー!!!
俺踊っちゃったよーーー!!!
手のひらで踊っちゃったよーー!!!

と彼女に報告しようかと思ったけど、バカにされるだけなのでやめた。


ふん!!いいもんね!!


コンドームは未だ開封されず。






路上を終えて、でも一応マクドナルドへ。

しばらくしてから用事を終えたマニがやってきた。


マニ
「ハイ、フミ。待った?あ、チーズバーガー食べていい?」


文武
「おい、ゲイ。俺は今日お金を手に入れたけど、明日スロベニアまでの電車チケットを買わないといけないんだよ。足りるかわからないんだよ。」


マニ
「ゴメン。」



たく、こいつらどんだけ図々しいんだよ?

ちなみにマニはゲイではない。
でもゲイと呼ぶとバカじゃねぇか?ってくらい大笑いするからゲイと呼んでいる。




案の定、リィーコたちは来なかったのでもう諦めて、マクドナルドを出た。

あーぁ、虚しい恋心をどうしてくれよう。






それからマニの家に行き、シャワーを浴びた。

「このボディソープの匂いは女を興奮させるんだぜ!!アイアムゲイ!!」

モテることに必死なマニに涙が出そうになる。
photo:04




お、お、おま、なんて爽やかな笑顔しやがるんだ(´Д` )

涙が止まらないじゃないか(´Д` )



ふとる君こと、ヨエル君とギターを弾いて遊んだ。

こいつほんとギターも歌もうまいなぁ。
photo:03




「フミ、また遊びに来てよ。いつでも歓迎するよ。もう食べれないよ。」



ヨエル、ありがとう。
立派なコンピュータエンジニアになってな。





マニが面白いところに行こうと言うので、一緒に街へ。
着いたのは大学の建物だった。

いいのかな?と思いつつ中に入って行き、奥のドアを開けると、そこは机と椅子が並び、黒板のある教室だった。
室内には7~8人の学生たちがいた。

なんだこれ?

みんなフレンドリーに迎えてくれる。


よくわからなかったんだけど、2人1組になって向かい合い、お互いの悩みを告白しあい、それについて祈る、という活動だった。

へー、ヨーロッパの熱心なクリスチャンは、学生でもこうしてこまめな祈りの会を開いているんだな。

お互いを知り合い、自分の中の悩みを整理整頓するのは、とても有意義なことだと思う。

みんな真剣にお互いの話に耳を傾けている。

俺もその中に混じって東北の人たちのために祈った。


そんな真面目な会の最中だというのに、後ろのほうでマニがコソコソと馬鹿なこと言って茶化してくる。



「ヘイ、ゲイメン……ヘイ、ヘイ、アイアムゲイ………」

「マイディックイズベリービッグ。ミナレット。」

「ファックミー、ファックミー、ストロング!」


うるせえなぁと振り返ると、向こうで嬉しそうにこっちを見てるマニ。

ほんとバカだな、こいつ(^-^)/





会を終えて、みんなでマクドナルドへ移動した。

日本から来た男に興味しんしんな大学生たち。
色んな質問を投げかけてくる。
ぽっちゃりした可愛いアンナに、君はお人形さんみたいだね、と言うと、イヤー!と顔を真っ赤にして照れている。


みんな可愛いな。
photo:05







23時をすぎて、そろそろ解散しようかとしているところに、マニの電話が鳴った。

電話の相手はヨエル君だった。
なんか話しているマニ。

電話を終えてマニが言ってきた。


「ヨエルがエナジードリンクを飲みたいけどお金がないので300フォリントくれだって。」






はぁ………

もうここまできたら、国民性と言えるんじゃないか?
ダメだ………



「なぁ、300フォリントなんて俺にとっては小さなお金だよ。あげることはできる。でも俺はお金を節約するためにこの寒い中、公園で寝てるんだぞ?毎日知らない国で頑張って歌って稼いでるんだよ。そんな俺に金くれって、信じられないよ。」


今まで、にこやかに話していた俺が急に真顔になったので、みんなビックリして黙ってしまった。
だって我慢出来ないもん。


ちょっと空気が悪くなったところで解散。可愛いアンナを家まで送ってあげ、最後にマニと別れた。

別れ際にマニに300フォリントを渡した。






あぁ、小さいなぁ、俺。
1ユーロくらい黙って渡せばいいのに。
シャワーだって借りたんだし。


むしゃくしゃしながら、寝床の公園に向かって歩いた。


明日はスロベニアまで行けるかな。








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