針のような雨と口約束

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10月27日 土曜日


寒くてあんまり眠れない。
ずっと寝袋の中でゴロゴロ寝返りをうっていた。



朝方、足に冷たいものを感じた。
寝袋を開けてみると、入り口のあたりが水たまりになっていた。
寝袋もズブ濡れでへにゃへにゃになってる。

なんでだよー………

って原因を探すと、入り口のファスナーから水が染み込んでいた。

ゆうべ雨の中で急いでテントを立てたので、エントランス部分を張らなかったのだが、そのため外幕が内幕にへばりついてそこから結露が染み込んでいたのだ。

ゆうべ土手から転げ落ちたせいで泥まみれのバッグ。

しかし寒すぎて動く気力が出ない。



パタパタと雨がテントを打つ音の中、寝袋から顔だけ出して膝を抱えて、ただ滴り落ちる水を見ていた。


雨の音が、俺の世界の唯一の存在。不規則なのに規則的な音がやがて線になる。
小さな雫は少しずつ大きくなり、ついに重力に負けて落下し、水たまりに加わる。
閉ざされた空間にハンマーが落ちるような圧力が、思考を潰してしまう。



頭がおかしくなりそうなので、ぶるんぶるん!!と体を振り、寝袋から逃げだした。

テントの外に出ると、凍りつきそうな風が川から吹きつけていた。


指が切れそうになりながらテントを畳む。
ギターやバッグに容赦なく降りつける雨。

濡れたままのテントと寝袋をバッグの中に突っ込んで急いで出発。
ゆうべ転げ落ちた土手を上がる。しかし滑って上がれない。たった3mほどの土手を登ることができない悔しさに声をあげる。
なんとか膝をつきながら、泥をつかみながら道路まで出て、街に向かった。



さっきまで泥まみれだった足がきれいになってる。
水たまりに足を突っ込みながら歩いているからだ。
指が赤くなっており、ゆうべ転んだせいで皮がすりむけていて、ものすごく痛い。

ギターケースはすでに充分雨が染み込み、下から水が滴っている。
バッグも同じだ。


もうやだー。
逃げ場所はどこだー。
心から落ち着ける場所はどこだー。

しかし、その場所は遥か遥か遠い道の彼方。まだその影すら見えない。絶望にも似た望郷。






なんとか駅までたどりついた。

ポーランドの電車、PKPの駅はフリーのWi-Fiが飛んでいる。しかも早い上等なやつだ。


すぐにFacebookであの兄さん、トーマスからのメールをチェックする。



…………



来てない。


なんだよーー!!!!
昨日のうちに連絡くれるって言ってたじゃねぇかよーー!!!
ただの口約束。もしかしたら気が変わって無かったことにされてるのかも。

もう待てねぇよ………




しかし、

しかしだ、


もしかしたら、連絡がくるかもしれない。

昔、なんかの本で読んだ。何の小説かわすれたけど。
ある子供が友達と夜に会う約束をした。
しかし雨が降っており、その場所はとても遠い場所だったし、それに夜なので、子供は出かけなかった。
約束を知っていた父親が、どうして行かないんだ?と聞くと、子供は、この雨だしきっと友達も来ないだろうからと答えた。
父親は子供を殴り、もし来たらどうするんだ?と言い、彼を夜の雨の中に放り出した。
子供は雨に濡れながら待ち合わせ場所まで歩く。
そこには友達が待っていた。


そんな話。

完璧にはできないけど、約束は破ってはいけないと常に思っている。あの話はいつも俺に勇気をくれる。



なにもしない1日が暮れて行く。
17時にはすでに街は暗くなった。

暖かい駅構内のベンチには、雨に追いやられた地元のホームレスたちがたむろっている。

バッグの中身を広げて寝袋なんかをベンチにひっかけて乾かしていると、ホームレスの1人が話しかけて来た。


フレンドリーに自己紹介してくる。
握手をする。
どちらから来ましたか~?と紳士に尋ねてくる。
どうせ、お金くれって言ってくるんだろうけど、今の荒んだ気持ちにはこんな会話でもわずかな温かみがある。
いきなり金~!って迫ってくるアラブ系のジープスよりは賢いしな。


「クラクフには観光ですか?」

「旅してるとこです。」

「オーウ、そうですか~、いいですね!ところで………」


きたきた。


ホームレス
「ご飯を食べたいんです。少しお金をいただけませんか?」


ホームレス文武
「そうですか、実は僕もなんです。お腹が空いてたまらないんです。何か食べ物持ってませんか?」


ホームレス
「お金を持ってない。そうですか。」


少しがっかりした表情を見せた彼。
しかしすぐに優しい笑顔になり、俺の肩を叩いてeverythings gonna be alrightと言ってくれた。

いつもならなめんじゃねぇぞバカヤロウと思うところだけど、今はその言葉がとても染みた。

そうさ、きっとうまくいくさ。





マクドナルドに移動して、もう一度、Facebookをチェックした。


メッセージのアイコンに赤い丸の表示。


あっ!!!


トーマスからのメールだ!!!



ハイ!
日曜日だけど、シェラトンホテルの前の公園に彼女を連れ出すのが19:00くらい!!ポジション1に連れ出す!!そこで辺りに人がいなくなったらプロポーズを開始するから、あなたにはポジション2にスタンバイしてもらっていて、俺がサインを出すか彼女の前に膝をついたら演奏を開始して…………




めちゃくちゃ長文!!

しかもこんな手作りの画像付き。
気合い入りまくってんな!!
photo:01




彼の期待を裏切らなくてよかった。
明日は彼の人生に、そして彼女の人生にとっても大きな大きな1日になる。
それを知っているのはおそらく彼の友達と、遠い遠い国からやってきたアジア人だけだ。

なんとか今夜どこかで眠り、明日、2人の笑顔を見て、あさってに移動開始か。
明日の気温は最高2℃、最低-2℃。
あさってには最高0℃の最低-4℃になる。



きっと、きっと、すべてうまくいくさ。



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