子供ジープスの瞳

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10月19日 金曜日



「スマッシュネガ。」

そう言ってバターを塗ったパンにかじりつく。
ポーランドのいただきますだ。
意味は、エンジョイユアフード。

朝のパンと紅茶。穏やかな時間。

窓の外の快晴がまぶしい。


みんな、ジンドーブリ!!
こんにちは!!




ルーカスは大学に行き、俺も荷物をまとめた。いつまでもお世話になっているわけにはいかない。

「何日いたって構わないんだぜ。」


そう言ってくれるマチェックとドレッドマン。
ありがとう。

バッグをかついで部屋を出た。



今日まで歌って、今夜はテントで寝よう。
そして明日はマリシアと会う。
マリシアはノルウェーで出会ったもう1人のポーランド人の友達。
妖精みたいに可愛い女の子だ。
なんと彼女の家もこのブロツワフだったという奇跡。

だいたいルーカスもマリシアもお互い別々にヒッチハイクで北欧を旅しており、ノルウェーのトロムソで初めて出会った。
話せば同じ街に住んでるという奇跡。
そこで彼らと出会った1人の旅のアジア人。

再会を約束して別れ、3人ともそれぞれの旅を続け、連絡をとらないまま2ヶ月半。

そしてポーランドに入った初日にマクドナルドでメールを送ろうとしていたところで目の前に座ったのがルーカスっていう奇跡の再会ってわけだ。


運命の糸をたどって、俺は今ここにいる。




メインストリートに行き、その奇跡の舞台であるマクドナルドで日記を書く。

たくさんの若者で賑わっている。

ここは学生の街だ。






その時、俺の腕をつつく影。

なんだ?と横を向く。


そこには、浅黒い肌の小さな子供がいた。
アラブ系の子供。
じっ……と俺のことを見つめている。
プラスチックのコップを差し出しながら。


嘘だろ?
これってアレだよな?
子供を使って金を恵んでもらうっていうやつだよな?

平静を装うが戸惑いを隠せない俺。
純粋な目に射抜かれる。

あげてはいけない。絶対。

無視していたらプイと次のテーブルに行き、また無言でコップを差し出している。
photo:01




なんてこったい。
聞いてはいたけど実際やられてみると相当な衝撃だな。
何歳くらいだろ。多分5歳くらいだと思う。



みんな慣れた感じであしらっているんだけど、中にはお金をあげる人がいるんだよな。

その子供はお金を受け取ると、そそくさとお店から出て行った。


気になって追いかけて俺も店の外に。



そこには、あの気分の悪くなるロングスカートをはいたジープスの母親がいた。

子供はお金を渡すと、マクドナルドに戻ってくる。


そしてまた、楽しそうにハンバーガーを頬張っている人たちに無言でコップを差し出す。
photo:02





難波の駅前にいた、犬のエサ代くださいっていうホームレスのオッサンを見て気分悪くなってた21歳のころ。


あんなのカワイイもんだ。


きっとこの綺麗な瞳の子供は、金を恵んでくれない人に唾を吐く人間になるだろう。母親のように。


このジープスをどうにかしてくれ。野放しにしてる政府が信じられない。ていうかまずはマクドナルドの店員だよ。注意しないのかよ?


彼らの境遇が全然わかってない!!って愛に溢れた人は言うかもしれないけど、そんなん知ったこっちゃないね。
ロマの歴史はひどいものなんだろうけど、差別ってのは差別する側より被差別者が変わらなければなくならないじゃないかと奴らを見て強く思う。


スロバキア、ハンガリー、ブルガリアと、ルーマニアに近づけば近づくほどジープスの数は増えるらしい。
きっともっとショッキングな光景を見ることになるだろうな。
覚悟しとかないと。






紙コップを片手に路上に座りこんでるジープスを横目に俺も路上開始。


あんまり調子がよくない。
おかげで金の入りも少なく、2時間やって54ズウォティ。
13ユーロくらいだ。

photo:03




しかし、マクドナルドでは2ズウォティでハンバーガーを食べられる。

まずいハンバーガーを頬張りながら、今日もルーカスを待つ。
彼は今日は友達のとこに行っている。そろそろ来るはずだなぁ…………



しかし、先に目の前に座ったのは………


最悪なことに……



先日、地下鉄でからんできたバッドボーイズの一味。
あの背の小さいサイバイマンだった。


ハ~イ!

と声をかけてきた。
俺も作り笑いを返す。

グッド?グッド?!

調子はどうだい?と言ってるんだろう。グッドと答える。


するとポーランド語でなんかまくしたててる。
しばらく聞いてると、どうやら食べ物を買う金をくれという。

こいつ…………

初日に俺がおとなしく渡したことで味をしめてやがる。
他にもバッドボーイズがやってきて、取り囲まれて金をせびられた。

いくら?と聞くと、20ズウォティでいいよと言う。

バカじゃねえか?こいつら?
ダメだ、ここは毅然と断らないと。


お金ないんだよ、ほら、これが俺の晩飯なんだよ、

とハンバーガーの空袋が1つだけ乗ったお盆を見せる。
ビッグマックのセットとか頼んでなくてよかった。

このアピールはさすがに効いたようで、諦めて帰っていった。

ボケが!!おととい来やがれ!!




ひと足遅れでやってきたルーカス。
今の話をすると、そんな奴らがこの街にいることが信じられない!と顔をしかめる。

ルーカスは絵にかいたような好青年。爽やかな笑顔と人当たりの良さで、誰からも好かれるナイスガイ。
26歳の人生で今まで一度もバイオレンスに巻き込まれたことがないという、奇跡のような男だ。



そんなルーカスと話していると、さらに誰かが声をかけてきた。

横を向くと、なんとあの流血事件の被害者、ジャンベの兄ちゃんがいた。
思いっきりハグ。
大丈夫だったか聞くと、唇が切れただけで、歯も折れておらずアザも見られなかった。

よかったよかった。


しかし、彼も路上プレイヤー。
いつも街をうろついてるバッドボーイズに目をつけられた以上、今までのようには出来ないだろうな。


彼は元気のない笑顔で帰っていった。



ルーカスが言う。
彼はいい人だろうけど、彼の目は敵を作りやすい目だよ、と。


ルーカスの洞察力と分析力は鋭い。


旅はすごい刺激をくれる、という話を俺がしていると、ルーカスはこう言った。

あまり大きな刺激は良くない。
なぜなら大きな刺激を経験してしまうと、その刺激が忘れられずにさらに上を求めてしまい旅を続けなければいけなくなるから、と。


若い考え方だけど、日頃から深く物事を見つめていることがよくわかる。


自分の思考をはっきりと言葉にして断言してしまう芯の強さは、遠くまで慮る、遠慮という美意識を好む日本人の俺には若干圧力であったりする。



それにしてもマクドナルドは色んな人に会える場所だわ。













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