ガンジス川で泳ぐわけねえ

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7月22日 火曜日
【インド】 バラナシ





久美子ハウスはガンジス川に面した階段の上にせり出すように立っている。

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そのため遮るものはなにもなく、部屋の窓からも屋上からもすぐ目の前にガンジス川を一望することができる。

朝、のんびり起きてから屋上に上がり、タバコをふかす時間がとても贅沢。

遠くで誰かの声が聞こえ、渡し舟が川に小さく浮いている。

右側にも左側にもここと同じような川岸のガートが伸びており、いつ見ても歴史映画の中に迷い込んだような錯覚を覚える。

おぼろげな記憶が浮かぶ。

夢の中の風景。







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宿を出て路地裏のいつものチャイ屋で5ルピー、8円のチャイを飲み、牛と日本語を喋る客引きたちに挨拶をしながら大通りへ。

道幅が広がるメインガート前の通りに出ると、オレンジ色の服を着た巡礼者たちで洪水のように混雑している。

牛の糞にたかったハエがぶわりと舞い上がり、扉もなにもない公衆便所から汚水が流れ出て、それらの生活の不快な匂いが鼻をつく。

砂ぼこりとクラクションと雑踏。

今日もバラナシはいつもと変わらぬお祭りだ。












日本人が集まる町にはだいたい日本食レストランがある。

有名なところではネパールの絆ってお店。
脱サラ課長のたいさんがメニューを提供したりと、日本人にとってとても名の知れた存在なんだけど、ここはマジでウルトラ美味いそうだ。

絆のご飯を食べるためにネパールに行くって人も少なくない。

それだけ旅をしてる人は日本食に飢えている。
なので美味しいお店があったらみんなこぞって足を運ぶ。


このバラナシにもやはりある。

メグカフェというお店で、バラナシで会った日本人は口を揃えてメグカフェはヤバイと言っていた。

カレーもそろそろ飽きてきたしそこまで美味しいって言うなら行ってみよう。







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ここ。





路地裏の路地裏の路地裏の細い奥まったところにあった。


ふーん、まぁ外観は普通だね。

ていうか結構小さいね。
テーブル4席くらいか。


ま、とりあえず一発かましとこうかな。
やっぱり舐められたらいけないからね。日本食作ってるってだけで日本人が集まってくると思ってたら大間違いだぞってとこを教えてあげないとね。



ここは九州流にかましてやろ。


さーてと、







ドアを全力でブチ開ける!!!



「オラアアアアアアアアアアアア!!!!!!!とりあえずフェラしろやあああああああああ!!!!!!!」



下半身全裸で店に怒鳴り込んだ瞬間、チンチンが小さくなった。




あへほっひいい!!!!!




え、う、嘘………エアコンが…きいてる?

インドでエアコンとかあったの………?信じられない………



「いらっしゃいませー。」



先制パンチを食らってたじろいだところに綺麗な日本人女性の笑顔ですか。


なめんなよ?

俺は九州男児だぞ?

ちょっと綺麗だからって調子に乗ってたらインド人にセクハラされるぞ!!






あ、インド人男性と結婚してらっしゃる。

あ、赤ちゃん可愛いっね、チュっす。


「Wi-Fiありますからどうぞー。」


ははは、日本人がすぐiPhoneいじってインターネットばっかりやってると勘違いされてるみたいですねパスワードなんですか?






さ、仕方ないから美味しいと評判の料理を食べてやろうかな。

俺の得意料理のかき揚げ丼にしてみようか。

150ルピーですか、250円と。

俺、上野駅とアメ横の間にある高架下の立ち食いそば屋さんのかき揚げ丼がすごい好きなんだよね。

岡山にもかき揚げの美味いうどん屋さんがいっぱいあるからかき揚げにはうるさいんだよね。


こんな三度の飯よりカレーが好きみたいなわけわからん国の食に染まっちゃってるかき揚げ丼なんてマジでたかが知れてるので全然期待とかしてませんよ♬







もうこのパターン何回やってるだろ。

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衝撃の美味さです。

米がヤバイです。



バラナシには日本食レストランって言ってカツ丼とか出してるお店がいくつもあります。

そこそこ食えるけどインド人が作っているのでやっぱり見よう見まねでしかないし、米が絶望的にマズイ。

ていうかカツ丼って書いてて、豚はヒンドゥーなので食べられないからチキンカツ丼。


メグカフェの米すげえ。ほぼ日本。
マジ美味い。

話では12年営業してるらしいです。
ただの老舗ですね。

しかもちゃんとしたアイスコーヒーなんかも飲めます。

エアコン効いててWi-Fiあってこれだからもうここに住みたいです。







店内には日本人の姿はほとんどなし。
もっとわんさかいると思ったんだけどな。

代わりにいるのは大量の韓国人。

バラナシは少し前まで日本人バッグパッカーだらけだったそうだが、最近では韓国人に押され気味なんだそう。

路地裏には韓国語の文字がたくさん見られるし、久美子の周りには韓国人宿だらけ。

日本人もかたまって集団で行動したがる国民だけど、韓国人はもっとすごそう。
韓国人のくせに韓国人宿に泊まらないとハブられてしまうそうだ。












ご飯を食べているとケンゴ君がやってきて、大地君とユウ君と4人で美味しい美味しいと米粒ひとつ残さずたいらげた。

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それからぼちぼち散歩して、ブルーラッシーに行ったり、火葬場の嘘つきたちのところに言って嘘つかれて遊んでみたり、罰ゲームでやっとケンゴ君を負かして、潔癖症気味なケンゴ君を膝までガンジス川に入らせることに成功したりと、非常に地味な、なんということもない昼下がり。

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写真撮るならお金ね。

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大地君とユウ君はこれから歩いてぐるーっと橋の方まで行ってガンジス川の対岸に行ってきますと言うが、年配組の俺とケンゴ君はそんなに歩きたくないので、何しようか……と悩んだ結果、インドといえば!!という場所に行くことに。



やってきてのはここ。

photo:20




うん、何屋さんかひとつもわからん。







映画館です。
インド映画って面白いですよね。
内容はワンパターンだけど、ベタなところもミュージカルの軽快さも好きです。

それよりなにより、インドの映画館って映画に盛り上がって感情移入しすぎたインド人たちが、あまりにエキサイトして、イヤッフオオオオオオウウウ!!!ヒョオオオオオオオ!!!と声をあげて興奮しているらしい。


面白そう。
是非そこに混ざりたい。


チケットを買い、ボロボロの怪しすぎる雑居ビルの中のドアを押した。

チケットは1番安い席が80ルピー、140円。







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うん、みんな行儀いいです。

おとなしく座って見てました。

イヤッフオオオオオオウウウ!!!とか叫ぶ人いないです。いたらバカですね。

映画はヘイトストーリー2というやつでした。
2なのできっと人気あるやつだと無意味な期待をします。

内容は恋人をギャングに殺された女がギャングを1人1人血祭りにあげていくという、セクシーあり、ガンファイトありのベタなやつでした。

1見てみようかな、とかそんな気にはまったくなりません。








みなみにさっき久美子さんに映画館に行きたいですと、道を聞いたところ、充分気をつけなさいと教えてもらった。

映画館の中で睡眠薬で眠らされ、全部持っていかれたという旅行者がたくさんいるんだそうだ。

スリも多いらしく、映画館だけでなく人混みの場所ではとにかく注意しないといけないとのこと。


こういうスリとか睡眠薬強盗って注意しようにもマジで全然気づかなかったりして、防ぎようがない。

デリーでの話だけど、道で仲良くなった人から飲み物かなんかをもらって飲んで、そこから気を失って次に気がついた時には病院のベッドの上。

荷物はもちろん全部なくなっており、とぼとぼと宿に帰ると2日分の宿代を請求された。

なんで?と聞くと、2日間戻ってきてなかった、と言われた。
ってな話。

冗談抜きで致死量の睡眠薬を入れてくるらしい。





そういうのは仕方ないとして、高額ツアーを組まそうとする詐欺に引っかかる人は、これはもう完全に自分の責任だよな。


デリーでツアー詐欺で9万やられたバッグパッカーがいたらしいんだけど、何がそんなに高いって、ツアーに含まれていたホテルがインド国内でトップレベルみたいな豪華ホテルだったらしい。


そんで怒ったそのバッグパッカーは復讐してやるっていってタイに行ってムエタイの養成所に3ヶ月通って鍛え上げてインドに戻ってきて、バトルに行ったとか行かなかったとか。





インドは基本的にそんなに治安は悪くない。
よほど夜中に1人歩きとかじゃなければ問題ないと思う。
東南アジアのほうがよっぽど危険だ。

でも盗難は多いみたいなので気をつけないとな。
あと嘘つきにも。



あ、嘘つきに騙されてムカついたので仕返しにおちょくったら、その後インド人に集団でリンチされたって話もあるので、あまりインド人を舐めないほうが良さそう。









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映画館を出てやりこともなくぶらぶらして、暇なので飯食って早めに宿に帰ろうかとメグカフェへ。

しかしメグカフェは夜は営業しておらず、すでに閉店していた。

ああー、残念………


じゃあケンゴ君も俺も明日バラナシを出ることだし、ニューデリーに戻るケンゴ君とはもうこの旅で会うこともないだろうから、最後に贅沢しようぜということに。




わざわざリキシャーで50ルピー、90円払ってやってきたのは、



ガンジス川から結構離れたショッピングモールの中にあるモティーマハラっていうお店。

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めちゃくちゃ高級なインド料理屋さん。


注文したのはタンドリーチキン。


僕タンドリーチキンが何か知りません。
タンドリーチキンの定義ってなんですか?

どっかで食べたことあるかもしれんけど、ここはやっぱり本場を食べとこう。

インドのタンドリーチキンって高いんだよな。
タンドリーチキンだけめちゃくちゃ高い。

でもここは鳥ばっか食べてる宮崎県民としては引き下がれない。

今後タンドリーチキンとはなんぞやという話題になった時に超語るため実食しておこう。








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うん、まぁ、美味いですよ。

なんかスパイスがいっぱいついててとてもジューシーでした。

ナンも美味しかったです。

その上でもう一度。

タンドリーチキンの定義ってなんですか?









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メインガートへと戻ってきて、サンタナとの分かれ道でケンゴ君と別れた。

色んなところで遊んだケンゴ君ともこれでバイバイ。

帰ったらソッコーで池袋にトンコツラーメン食べに行くらしい。

そうか…………


ちょっと前ならムカつく!!って言ってたけど、ふと気づけば俺ももうあと1ヶ月ちょいでラーメンが食べられるんだよな。
チキン南蛮も。


嬉しい。けど寂しい。いや、寂しいというより少し怖い。

日本てどんな国だったっけか。


もうすぐなんだよな。


「それじゃあ帰ったらラーメンの画像送りますね!!気をつけて!!」


最後まで爽やかだったケンゴ君と別れ、俺も宿へ帰った。

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久美子ハウスはいつものように停電していた。

もちろん久美子ハウスだけでなく町ごと停電しているので路地はとても暗かった。

3階のドミトリーに上ると、そこには誰もいなかった。

唯一の宿泊客だった大地君も出ていってしまい、この広いフロアーに俺1人。


無言で部屋をウロウロ歩き、iPhoneでライトをつけてシャワーを浴びる。

真ん中にある小さな机には将棋盤が置いてあり駒が散乱しているが、なくなった駒があるようで紙を切り抜いて歩とか桂馬とかの手書きの駒が混ざっている。

その横にボロボロになってるマンガが積んであったので薄暗い明かりの下で床に寝転がってこち亀を読んだ。



まるで友達の家に遊びに来たような感覚。

でもその友達が出かけている時の寂しさってのはなんともいえないものがある。





マンガを閉じてギターを弾いた。

誰もいない部屋にギターが響く。


明日出るつもりだったけど、もう1泊だけしようかなとベッドに横になった。

眠りそうになっていると、ふいに部屋に風がおこった。

停電が直って天井のファンが回り始めようだった。








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久美子ハウスにて

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7月23日 水曜日
【インド】 バラナシ





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屋上から見渡すガンジス川は黄泉の国のようだ。

スモッグで空気がかすみ、遠くまで続くガートがぼやけて見える。

三途の渡しが川面に浮かび、船頭がゆっくりと櫂をこいでいる。

photo:02




ヒンドゥー教ではガンジス川はシヴァ神の体を伝って流れた聖なる川として信仰されているそう。
そもそも川自体がガンガーという女神なのだそう。

ヒンドゥー教ってのは一体なんだろう。
Wikipediaで調べてみると、どうやら仏教と同じ2600年ほど前に具体化した宗教らしい。

もともとはバラモン教という古の宗教から派生したものとのこと。

面白いのは、仏教がヒンドゥー教の一派という考え方。
仏陀はヒンドゥー教の神様の化身と考えられているそうだ。

詳しく調べようかと思ったが読み進めていくごとに面倒くさくなってきてページを閉じた。




屋上の周りにはボロボロの建物が隙間なく立ち、向こうのベランダに猿がいた。

猿はこっそりと窓に近づいていく。

そして素早く手を差し入れたかと思うと、家の中からナンを盗んで反対側の家の屋根まで移動してからモグモグとナンを食べ始めた。


猿、牛、馬、犬、山羊、豚、鶏、ネズミ、


ここはノアの箱舟か?

これらの動物たちと人間がほぼ同じ目線で共生しているんだから、毎日毎日新鮮な光景を見させてもらえる。

いつか地球が滅亡に向かっても、ここはほとんど変わらなさそうだな。






photo:03



屋上から降りて貸し切りのドミトリールームで全裸で歯を磨く。

裸でウロウロ歩き回っていると、下から声が聞こえてくる。



「ハロ~~サ~~~、ブレックファースト~~~~、朝ごはんだ~~よ~~~~~~」



物干し竿~~みたいな不思議な調子のこの声は朝の8時に毎日必ず下から聞こえてくる。


え?実家?
朝ご飯よー!!って1階から声がするって実家?


これは久美子さんの声。
きっと何十年も毎日こうして旅人たちを起こしてきたんだろうなぁ。

独特な声色で、これを聞くとすぐに目が覚める。

不思議な歌みたいなその呼びかけにはただならぬ年季が入っている。

もうこの久美子ハウスは旅人たちの文化財だよ。









完全に実家と化している部屋を降り、久美子さんに行ってきますーと挨拶してぶらっと出かけた。

誰かお客さん連れてきてねーと笑ってる久美子さんの期待に応えるべく、昨日行ったメグカフェへ旅行者を捕まえに行くことに。

嘘。ただメグカフェのご飯食べたいだけ。











photo:04



photo:05



チキンカツ丼、スーパー美味い。

あり得ない。

インドでこのクオリティあり得ない。

是非このお店でカレーが食べたい。

インドで日本食レストランでカレー食べたい。



え?旅をなめてる?

カレーは汚いところで食べてナンボ?




そうですか。





ところで最近、だいすけ、っていうブログが世界一周ランキングに出てきたじゃないですか。
タイトルがだいすけっていうブログ。

タイトルがいとこの大輔と同じ名前なのでマジウケると思って見てみたらめっちゃ面白いですね。

綺麗事まったく書かんくて攻めまくりなので、マジでやべぇこの人最高やん、会ってみたいわーって思ってました。


でもここで衝撃の事実が発覚しました。



オーストラリアのシドニーで仕事中にもかかわらず、わざわざ作業着のまま待ち合わせ場所に来てくださって、俺の体調を心配してビタミン剤をくださった兄さんがいたんですが、あの兄さんがだいすけさんだったという衝撃の事実。


だいすけさんのブログ読んでて、へーこんな顔の人なんだーって本人の写真まで見ていたというのに気づかなかったというゲス野郎です。

だ、だってあの時会ったのすごい一瞬だったし帽子かぶってたから(´Д` )!!


うわー、この人オモレー、会いてーって思ってた人にすでに会ったことがあったというシチュエーション。


そうなんだよ、だいすけさんあの時、もうすぐ世界一周に出ます、変な楽器持って回りますって言ってたもん。

でもあのブログとは繋がらんかったなぁ………


しかし面白いですね。あのブログ。っていうかだいすけさんが。



だいすけさん、ちょっとお伝えしたいことがあります。
ここで言うべきかすごい悩んだんですけど、やっぱり伝えとくべきかなと思って書かせてもらいます。

ベトナムでお会いできなかったの残念でした、っていうのももちろんあるんですけど、もうちょっと重要なことです。















ビタミン剤、まだ飲んでないです。










だいすけさんからFacebookの友達外される可能性を心配しながらいつものチャイ屋さんで一服して、久美子ハウスに戻ってきた。


そう、お客さんを引っ張ってくるという仕事をなにひとつやっていませんね。


だ、だってメグカフェもお客さん全然いないから(´Д` )!!


現在のバラナシは韓国人に占拠されています。

ちなみにインド人の間では日本人の女をゲットしたら宿ができる、韓国人の女をゲットしたらレストランができると言われている、らしい。












「あらー、メグカフェもそんなにいなかったのー。彼女元気そうにしてた?」


宿に戻り、玄関先に座ってリビングでくつろいでる久美子さんとずっとお喋りした。

やはりバラナシに38年も住んでるなんていう海外で働く日本人のパイオニアみたいな人なので話がとっても興味深い。


photo:06



昔はこのバラナシに住もうとする日本人はみんな久美子さんのところに挨拶に来ていたんだそうだ。

そりゃ他に日本人なんていない時代だし、そんな中で堂々とインド人と渡り合っている久美子さんの存在はとても大きなものだっただろうな。


当時は地球の歩き方もまだ全然充実してないころで、あの雑誌のライターたちがこの久美子ハウスに泊まってバラナシのことを調べていたというからすごい。

まさにバラナシの歴史は久美子ハウスの歴史だ。



「お客さんが多い頃はねー、あのドミトリールームに50人泊まってたわ。床にギッチリマットを敷いてね、みんな雑魚寝で寝るの。それに荷物も広げるでしょ?足の踏み場もないってのはあのことよ。」



まさに古き良き旅人の安宿って感じだ。
イメージするだけでワクワクしてしまう。

昔みんなで作った秘密基地のような場所で、ドンチャン騒ぎをして夢を語って。そんな青臭い輝きがあったんだろうな。




今は他の日本人宿もできて、みんな新しくて綺麗な方に行ってしまっている。
時代の流れなんだろうけどなぁ、久美子ハウスに誰か来ないかなぁ、

ジブリの映画に出てきそうな、この久美子ハウスの古い建物。

目の前のガンジス川、つたのからまった玄関、その真横にある階段を降りるとガートがあり、地元の人が川で体を洗っている。


マンガの世界だよ。ここ。







本当は今日出発するつもりだった。
次の町に行こうと思っていたが、このバラナシとこの宿には離れがたい魅力がある。

久美子さんの話では1ヶ月2ヶ月滞在する人なんてザラらしい。

確かにバラナシはそれくらいゆっくりできる場所だ。

路地の中にはシタールやタブラを教えている音楽教室や、ヨガの教室などがたくさんあり、長期滞在しながらこれらを学ぶことも可能だし、ただひたすらマリファナやハシシを吸いながらぼけーっとするのもいいかもしれない。

俺もいようと思ったらいくらでもいられそうだ。



でも、明日には必ず出ないとな。









photo:07



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夜になって宿の近くにあるエッグロールのお店で晩飯を食べ、チャイを1杯ひっかけて宿に戻る。

ドミトリーは今夜も俺1人でガラーンとしており、寝転がってギターを弾いた。

何もしてないからかあまり眠くならず、頭が冴えて仕方ないので夜遅くまで曲作りをしていた。


深夜の窓の外から、ガートを歩く誰かの話し声が聞こえては遠くに消えていく。


昔は今よりも治安が悪かったらしく、さらに電気もほとんどなかったから夜になれば真っ暗闇になり、その闇の向こうから人のギャー!!!という断末魔の叫び声が聞こえていたそうだ。

怖すぎる。

今でも治安はあまり良くないけどね。つい最近もこの近くで日本人が殺されてるし。




さ、明日はそんなバラナシを出よう。






~~~~~~~~~~~~~~~~


※お知らせ



こんにちはみなさん、いつもブログを読んでくださり本当にありがとうございます。

ランキングのクリックも最近すごく多くて大台の2万インポイントも夢じゃないのでは、と期待してしまいます。
本当に感謝します。


さて、現在中国の大理にいます。
どんな中国旅になっているかは本編で書かせていただきますが、ただひとつ言えるのは初日から中国が今までの国1位に踊り出てきたということです。
この国すごいです。


お知らせなのですが、中国入国にともなってFacebookが使えなくなりました。

それだけではなく、ヤフーもGoogleもGmailもGoogleマップも全滅です。

ブログに関しては更新はできるのですが、記事を見ることはできません。
他の全てのブログが見られません。


なので僕が今まで使っていた連絡手段が全部シャットダウンしてしまいました。
使えるようになるのは20日後に香港に抜けてからです。


なにやらVPNとかってアプリを利用すればこれらが使えるようになるらしいのですが、なんせ機械音痴なので諦めました。

そして中国の友達に手伝ってもらった結果、ひとつだけ連絡方法を開設できました。

QQというSNSです。

LINEみたいなものです。


もし僕に何かご用がありましたら、このQQをダウンロードしてもらい、アカウントを取得してから友達検索でこちらの番号を検索してください。

1280709841

そしたら僕が出てきます。
ここならメールの受信が可能です。


お手数ですが、どうぞよろしくお願いします。


風邪と下痢でひどい体調ですが、中国人たちが助けてくれています。
泣きそうになるくらいみんな優しいです。




それでは少しリハビリに散歩に行ってきます。

みなさんの今日が良い1日でありますように。







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仏様がいた場所

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7月24日 木曜日
【インド】 バラナシ ~ ブッダガヤ





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「元気でね。」


「またいつか戻ってきます。」


久美子さんに挨拶して宿を出た。
もうこの路地裏も通らない。

宿の前のミニ商店のおじちゃん、いつものチャイ屋さんの兄ちゃん、

路地を行き交う人々、牛と野良犬、

photo:04





大通りに出ると相変わらずの巡礼者の洪水。そして日本語で馴れ馴れしく声をかけてくる客引きたち。

今までもずっとそうだったように、これからもずっと同じように続いていく。

誰もなんの疑問も持たずに、祈り、そして死んでいく。人生は祈るための時間として。

バラナシ、すごいところだったな。
ここはまたいつか戻ってくるかもしれない。

ここほど生と死について考えさせられる場所はない。

きっと10年後に来たら、また全然違う感情を持つことができるんだろう。

photo:05












大通りからリキシャーを拾って駅へ向かう。

来た時は何もわからなかったから100ルピー、140円でリキシャーに乗った。

でも帰りはもう相場もわかってるから50ルピーで乗れる。

なのでリキシャーマンもしつこく言ってこない。


ただ駅に着いて50ルピーを渡すと態度が急変して、なんだ?これは、これじゃ足りない!!と怒ってくる。
そしてそれを無視してバイバイする。

リキシャーマンは後ろから何か吠えるが追いかけてはこない。

これ毎回。

お金払って素直に終わったこと一度もない。
必ず足りないと文句を言う。

最初にいいよと言ったのに、必ず後で足りないと言う。

もしかしたらもらえると思ってるんだろうな。
毎回すぎてアホにしか見えない。














今日の目的地はブッダガヤという町。

まずはチケット売り場でガヤという町までのチケットを購入。
ブッダガヤまでの直行はなく、ガヤからまたトゥクトゥクを乗り継がないといけないみたいだ。




インドの電車には車両によっていくつものランクがある。

エアコン付き寝台、エアコンなし寝台、ただの指定座席など、それぞれで値段も大きく変わる。

そんな中、旅人にもっとも恐れられているのがジェネラルシート。
自由席車両だ。

この我慢と譲り合いという言葉を1ミリも知らないインド人たちの中で自由席なんて、だいたいどんなことになるのか想像がつく。

話では座席はもちろんパンパンになり、床にも座りだし、しまいには荷物を置くラックにも人が登って寝ているという地獄絵図が繰り広げられるという。

座る場所もなく、熱気で汗だくになり、臭いわ狭いわで立ちっぱなし数時間というただの拷問。


それのチケットを買った。

なんでそんなマゾみたいなことをするのかと言うと、もちろん値段が安いから。


ここからガヤまで4時間の移動で、驚異の80ルピー。130円。

市バスじゃねぇんだから(´Д` )




まぁそんな安い等級なので乗ってるインド人たちも必然的に貧しい人々。
ということは盗難の確率も上がる。

そんなぐちゃぐちゃの罰ゲームの最中にも盗難に気を張っていないといけない。

よし、楽しくなってきたぜ。










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うん、全然快適。

なにこれ、この前のニューデリーからの寝台とほとんど変わらんやん。

みんなちゃんと座席に座ってるし、譲り合って荷物置いてるし、ファンが回ってるからそんなに暑くもない。

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俺が大きな荷物を持ってどうしようかキョロキョロしていると、周りの人たちが荷物はここに起きなとスペースを作ってくれたり、こっちに座りなと座席をつめてくれたり。


譲り合いの心ゼロとか言ってゴメン(´Д` )



なんかいきなりオカマが車両に殴り込んできて乗客たちのアゴを掴んだりチンチンにパンチを食らわしたりして、食らわされた男たちがお金を払うという謎すぎる儀式を終えて列車出発。

さすがインド。謎すぎる。








売り子のチャイを5ルピー、8円で買って、車両の入り口のスペースでタバコをふかす。

全開で走ってるのに入り口のドアは開けっ放し。

外に広がるのはどこまでもインド。

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夢の島みたいな信じられない量のゴミの中で人が寝ており、廃墟みたいな町をバイクが行き交っている。

少し田舎に行くと茅葺の草でできた家がポツポツと見え、水田の中で田植えをしてる人がいる。

全ての光景が今までの人生で見てきた中でも最貧の姿。

いくら信仰したって宗教じゃ貧しさは救えないか。
まぁ彼らにとっては信仰とお金は別物だろうけど。

日本の信仰とは大違いだ。

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インドでは60%の人しかキチンとした教育を受けていないそう。
40%が学校も行けない貧困層だなんて恐ろしい話だ。

教育を受けた人間がいい仕事を得てお金持ちになり、教育を受けていない人間は地面を這いつくばって客引きになったり物乞いになったり路上でサモサを売ったりするしかない。

金のない人間はどうしたって這い上がることはできない。
それは世界共通のシステム。
生まれた時からついている鎖みたいなもんだ。

photo:12



カーストは廃止されたとは言っても未だ存在しているし、人間は世界のどこでも身分の階級がなければ社会を形成できないんだろうな。


英語の喋れる若い兄ちゃんと仲良くなっていろいろ喋っていたら4時間なんてあっという間だった。














電車はガヤという町に到着。

しかし今日の移動はまだ終わらない。

ブッダガヤはここからさらにトゥクトゥクに乗って40分のところ。

駅前にたくさんトゥクトゥクが止まっているから、そこらへんの人とトゥクトゥクをシェアすれば20ルピー、30円で行けるという情報だ。





「うっひょおおお!!!観光客だああああああ!!!!ブッダガヤブッダガヤ!!トゥクトゥク300ルピー!!300ルピー!!!」


電車を降りた瞬間、プラットホームに客引きが待ち構えている。

おい、ここはプラットホームだぞ。
勇み足すぎるだろ。


「200ルピー!!たったの200ルピー!!」


荷物を抱えてプラットホームを歩き、連絡通路の階段をのぼっていく間も客引きはずっと横でわめいている。

駅舎の出口に近づくにつれ、何も言ってないのにどんどん値段が下がっていく。

そして他の客引きもやってくる。



「150!!もうー仕方ねぇ!!てやんでい!!150で手を打とうじゃねぇかぃ!!」


「よーし!!もうわかった!!OK!!100ルピーだコンチクショウ!!」


「あ!!てめー!!勝手に値段下げんじゃねぇよ!!」


「うるせぇ!!てめぇこそこのジェントルマンに嘘をつくんじゃねぇ!!なぁ!!ジェントルマン!!」


「この兄ちゃんは俺が先に目ぇつけたんだ!!あっち行けこの野郎!!なぁあんちゃん!!お、おい!!あんちゃん!!待てよー!!」



俺を巡って喧嘩しているのを超無視しながら駅舎を出ると、そこは客引き地獄。

ブッダガヤアアアア!!!

イヤッフオオオオ!!!ブッダガヤアアアア!!


と鼻ヒゲたちが10人くらい群がってきて耳元で怒鳴り散らしてくる。


「100ルピー!!100ルピーで行くぞー!!俺は早ぇぞー!!」


「馬鹿野郎!!俺は80ルピーでいいぞコンチクショウ!!」



はいはいって言いながら歩き、トゥクトゥクの群れの中ですでに人がたくさん乗ってるやつを探す。



「あ!!ブッダガヤか!!乗れ!!早く乗れ!!」


「いくらですか?」


「いいから!!そんなのいいから早く乗れ!!」


「だからいくらですか?」


「いーって!!気にするな!!安いから!!めちゃ安いから!!たったの100ルピーだから。」


「20ルピーね。」


「………フンっ、ここ乗りな。」




というわけで後ろのクソ狭いスペースにサリーを着た若い姉ちゃんとギュウギュウで座る。

やっと乗ったと思っても、ここのバーモントたちは乗ってる人にすらまだしつこく客引きしてくる。


「ブッダガヤ?よし、こっち来な!!」


よし!じゃねぇよ。もう乗ってるだろ。







そしてやっぱりここもアホ丸出しのクラクション地獄で、車線関係なしのレーシング会場。
クラクション鳴らし放題。うるさすぎてストレスがもう爆発しそうだ。

デコボコ道で跳ねるたびに天井に頭がぶつかって痛い。

叫び声と牛と牛とクラクションとデコボコと牛と牛。



もうなんでもいいから早くブッダガヤまで行ってくれ……と頭狂いそうになっていたら、いきなりトゥクトゥクが止まってドライバーが客のオッさんと本気の喧嘩を始めた。

てんめぇ降りろコラ!!とトゥクトゥクから出て、目の前でヒンドゥー語でものすごいエキサイトして怒鳴りあってる。



あの………もうお願いだから喧嘩とかやめてくれませんか………




あいつイカれてんだよ!!みたいにマジギレしながら運転を再開したドライバー。

はぁ、もう頼むよ……と思っていたら、膝の間に挟んでいた俺のバッグの上のポケットのチャックが開いている。

中に手を突っ込むと財布がない。


悲しそうな顔で俺のことを見ている目の前のサリーちゃん。


インド人でも顔みればだいたい生い立ちがわかる。
悲壮感のあるサリーちゃんの顔は完全に物乞い。


おい、財布をどこにやった、と顔を見ると知らない知らない、みたいなジェスチャー。

もう一度言う、財布をどこにやった、と言うと、足元から俺の財布を拾い上げた。

そして口に手を持っていってご飯を食べる仕草をする物乞いのいつもの動作をしてきた。

これは世界共通の金くれのジェスチャーだ。

金盗もうとしたやつがなにをぼざいてんだ?とバッグに財布を戻すと、




ん?iPhoneのバッテリーや外貨を入れてたビニール袋もない。




サリーちゃんの顔を見ると、悲しそうな顔で口に手を運ぶジェスチャーをしている。

ガバッと体を乗り出してサリーちゃんの体を押すと、股にビニール袋を隠していた。


それまで走っていたトゥクトゥクもさすがに騒動に気づいて止まった。
全員英語はまったくダメなのでジェスチャーで伝えるとすぐに理解してくれ、サリーちゃんはそこで無理やりトゥクトゥクを降ろされた。

降りながらもまだ俺に何かくれと言ってくるサリーちゃん。
すると勝手にバッグの横に入れていた水を抜き取って飲みやがった。


まぁいいよ水くらい。置き去りにされたサリーちゃんはこっちをずっと悲しそうに見ていた。










トゥクトゥクは長い一本道を進んでいく。

するとしばらくして検問所みたいなところがあって、そこで止まった。

警察と何か話しているドライバー。

そして戻ってきてこう言う。

この道は通れないみたいだから遠回りして中心部まで行く、だから代金を多く支払え、とのこと。


うるせぇそんなこと知ったことかボケ、と言いたいところだけど、もともと20ルピーとかゲロ安なんだから30ルピーくらい払ってやるかと思ったら財布の中に100ルピー札しかないという凡ミス。

やっちまった。


案の定、町の中心部までやってきて降りる際に、30ルピー払うよと言いながら100ルピー札を渡すがお釣りは40ルピーしか返してこない。

おい、と睨んだらもう10ルピー渡してきた。

ダメだ、100ルピー札なんて渡した時点で諦めないといけない。
ちゃんと小銭である程度持っとかないといけないという基本的なルールを守らなかったほうが悪い。



駅からトゥクトゥクに乗ってくるだけで、喧嘩、盗難、ボッタクリの3大イベントをまとめてインクルーディングしてくれるサービス精神。

さすがインド。









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photo:16



ブッダガヤはほんの小さな村。

しかし中心部にはたくさんのトゥクトゥクやリキシャーがひしめいており、安宿も多い。

なぜこんな小さな村にこんなに観光客がやってくるのか。

それはここが全人類にとってとても重要な場所だから。




今から約2600年前、インドの王子として産まれたシッダールタという男が人生に悩み、その地位を捨てて放浪の旅を始める。

どうして人間は生きるのか。

そのシンプルで、そして途方もない疑問の答えを探して男は様々な苦行を行いながらさまよった。


そしてたどり着いた小さな村で一本の木の下に座り瞑想に入る。

そして男は悟った。

真実を発見し、宇宙の真理と一体となった。

男は人間がどう生きるべきかを迷える人々に説いて周り、その教えは男の死後も広がり、山を越え、海を越え、数千年経った現在も人類の心の拠り所になっている。


このブッダガヤは仏様が悟りを開いた地であり、仏教発祥の聖地なのだ。










というわけで観光客相手の客引きがわんさか寄ってくる。
もちろん日本語ペラペラのやつもいる。



「あ、こんにちはー、元気?ナマハゲー、なんちゃって。笑いすぎー。」


「うるせぇ、消えろ。」


ナマステじゃなくてナマハゲだとこの野郎めちゃくちゃ面白ぇじゃねぇかと心の中で思いながら悟られないようにポーカーフェイスで歩く。

5~6人の客引きに群がられ、そいつらの足をキャリーバッグで轢きながら歩きさっさとやってきたのは、中心部にある安宿、ウェルカムゲストハウス。

photo:14



ネットで調べたら1番最初に出てきたので目星をつけていた。

値段はドミトリーで100ルピー、170円。

ドミトリーといってもベッドがふたつ置いてあるだけで、客も他にいないのでただのツインルーム。
今の時期のインドは閑散期なのでどの宿もお客さんはほとんどいないようだ。








時間は16時。荷物を置いてすぐに出かけた。

歩いて1分で村の真ん中にある大きな寺院に入る。

ドキドキする。ついに来たんだ。
ここのためにインドに来たと言ってもいい。

こここそが仏教徒にとって聖地中の聖地。
仏陀が長い瞑想の果てに真理を悟ったというその地に建てられた寺院、マハーボディー寺院だ。





たくさんの人々が行き交うエントランス。
まずは荷物預け場所で携帯電話を預けないといけない。
モバイルフォンの持ち込みは厳禁となっているみたい。

カメラの持ち込みはOKだけど、写真撮影許可証を100ルピー、170円で買わないといけない。

しかし俺は写真は全てiPhoneで撮っているので持ち込むことはできない。

てなわけで遠景のこれが限界。

photo:15






iPhoneを預けて通路を進んでいく。

ボディーチェックのゲートが2重に設置されており、かなり厳重に体を調べられる。

エルサレムでもそうだったもんな。

宗教の聖地ってのは争いの総本山だ。







そしてついに境内へと踏み入った。

そこには巨大な塔がそそり立っていた。

塔というかパレスというか、中米の遺跡を思い出すような厳然とした佇まいは不気味にすら見える。

幾何学的な模様が彫り込まれた石の尖塔。
その中に人が引き寄せられるように吸い込まれていく。

まさしくファイナルファンタジーの光景。
ここで聖なる僧侶になんかの伝説のソードでも授けてもらえそうだ。






ゆっくりと近づいた。

中に入るととても狭い空間で、中心に仏陀の座像が祀られていた。

そのわずか6畳くらいの広さの礼拝堂の中、数人の尼さんが隅に座って一心不乱にお経を唱えている。

参拝客はみな台座に頭をこすりつけて最大の礼をもって仏陀を讃えていた。


あまりの神聖な空気に身が震える。

嘆きの壁も、岩のモスクも、キリストの生誕教会も、どれもその存在の重大さに震えたけど、日本人にとってやはりここはあまりにも特別。


目の前には見慣れた仏陀の像。


「いいことをしたらいいことが返ってくるんだよ。」


「悪いことしたら地獄に堕ちるよ!」


婆ちゃんや爺ちゃんから教わった言葉。それってこの人が最初に言ったんだよな………


「愛が買えるならその涙のわけを教えて。」


ってのもあったな。あ、これはハマショーか。




まだ人間の歴史が浅かった当時は、こうした今で言う道徳という観念すらまだあまり発達していなかったのかな。

そこにこうした指導者が現れ、教えを説いた。

いやいや、現代では物や文明に毒されているので、逆に生や死に対する捉え方が退化しており、当時の方が鋭い思考力が発達していたのかもしれない。

もっともっと複雑で、霊的で、現代人の及びもつかない世界を見ていたのかな。


日本を回っている時に比叡山に行って、名前忘れたけど本堂の中でものすごくたくさんの僧侶たちが読経をしていたのを見てうすら怖い感覚を覚えた記憶がある。

ロケットで宇宙に行ったり、インターネットで地球の裏側の友達とビデオ電話するような現代社会で、未だこんな世界があるのかと思った。

あの時はまだ何も知らんかった。

でも今こうして世界中を回って、人間と宗教の関わり合いを見ていると、それもごく自然な人間の生き方のひとつなんだと思う。

宗教がないと生きていけないとまでは言わないし、別に無宗教って胸を張っていいと思う。

でも日本人である以上、土着レベルで仏教の教えは俺たちの中に根付いている。



徳を積むこと、つまり道徳。
みんな学校で習ってる。

俺たちは仏教徒。
そのボスがここにいたんだよな。
すげぇ。








般若心経を唱えて外に出て、塔の裏手に回ってみると、そこにはたくさんのお坊さんたちが地面に座ってお祈りをしていた。

みんなひとつの大きな木を囲んで、お経を唱えたり、座禅を組んだり、リラックスして目を閉じてる人などがいる。

誰もがその大きな木に向かって祈っている。

葉っぱが青々と茂っており、太い幹が伸びて広く木陰を作っていた。



もう目の前のことがにわかに信じられない。

この菩提樹の木の下に仏陀が座っていたなんて。

祈り続ける熱心な信者もいれば、ただ木陰でのんびりくつろいでるだけの人もいる。

野良犬があくびをしており、枝の上でリスがかけまわっている。

人間も動物も、みなが仏陀に寄り添っていた。

俺もその木陰に座り、ぼんやりといろんなことを考えていた。


ずーっと、時間を忘れてそこにいた。

ここなら何か達観した考えにたどり着けるんじゃないんだろうか。

ここならいい歌詞が浮かんでくるんじゃないだろうか。






まぁ、そんなことないんだけどね。

これからもやっぱり俺は小さなことにチマチマ悩んで、誰かの陰口を叩いて、殺生をして、生きていく。

でも少しは人に優しくならないとな。





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1人でのんびりと町の中を歩いてチャイを飲んで宿に戻った。








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7月25日 金曜日
【インド】 ブッダガヤ





そういえば航空券を買った。


数日前にとある方からメールをいただいて、中国にビザなしで行くならばアウトチケットを用意しておかないといけないですよというアドバイスいただいていた。

慌てて調べてみたところ、前もってビザを取得して行けばアウトチケットの提示は必要なく、ビザなしで行くならばアウトチケットを買っておかないといけない、という情報に行きついた。

俺は中国は空港でアライバルビザを取るつもり。
なのでなにかしらの出国チケットがないといけないのだ。




というわけで、香港から台湾へと飛ぶ飛行機を買った。175ドル。

中国がどういう場所なのか見当もつかないので台湾入りがいつになるか全然見えていなかったんだけど、もう買ってしまった。

8月26日。この日が1番安かった。

というか俺の財布事情でこの日くらいしか買えなかった。

大地君、クレジットカード貸してくれてありがとう。本当に助かった。マジでありがとう。





中国の滞在期間は26日。
昆明に着いて、そこから東チベットをグルっと回って成都へ抜け、一気に香港を目指す。

中国のアライバルビザは15日だが、大都市で延長することが可能だと聞いている。
値段は100元、1700円くらい。


本当は上海も行きたい。
もちろん北京も行きたい。
できることなら中国はもっともっと時間をかけたい。


しかし8月26日でも本当はダメなんだよな………

彼女との約束の2年はすでに過ぎている。
6月いっぱいで帰るという約束だったのに、この時点で8月いっぱいももう不可能だ。



台湾と韓国を1週間ずつにすれば9月の上旬には帰れるはず。

しかし現在の時点で怒りまくっている彼女を納得させるのは…………至難の技だ………


彼女に伝えるのが怖くてチケットを買って3日経った今もまだ言えていない。

怒るだろうなぁ…………






昨日の夜にとある人からメールが来て、すごくお世話になった親しい方が亡くなったという訃報を聞いた。

若い頃の俺の夢を全力で応援してくれた方。
帰ったらすぐに挨拶に行くべき人の1人だった。

死は受け入れがたいショックで、ゆうべほとんど眠れなかった。

そしてご遺族の方となんとかして連絡をとらないといけない。





日記、路上、金、曲作り、大切な人間関係、迫り来る日程、

やるべきことが積み上がり、考えることが頭の中で渦巻いて、投げ出してしまいたくなる。









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宿を出てブッダガヤの小さな村の中を歩き回った。

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仏陀のお膝元なので村の中には無数のお寺が存在し、タイ寺、チベット寺、日本寺など、仏教国各国のお寺がここに集結している。

このお寺でお勤めをすることは各国の僧侶にとって名誉なことだったりするのかな。

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ゆうべ屋台で焼き飯を食べたんだけどそれが意外にもめちゃくちゃ美味くて、また食べに行ってみたがお昼は営業していなかった。

しょうがなく近くの戦後みたいなボロボロの食堂でエネルギー根こそぎもっていかれそうなくらいマズイ焼き飯を食べ、宿に戻る。

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そしてギターを持って人が1番集まるマハーボディ寺院の入り口にやってきた。








観光客もそれなりにいるんだが、この貧しい寒村の人々は物乞いとして生計を立ててる人が多いようで、広場には無数の物乞いが地べたに這いつくばっており、ズタボロの服を着た子供たちがそこらじゅうにいる。


こんなとこでやってお金が入るのか………

もうやらなくても目に見えてる。
物乞いや暇なリキシャーマンや客引きの兄ちゃんたちが集まってきて、拍手も起きずに真顔で見られて終わりっていうパターン。
お金なんてまず入らないだろう。


でもやらないといけないんだよ………
100ルピーでも稼がないと。






そしてインドに入ってもうひとつ路上演奏をする自分なりの意義を見つけている。

インドには半端じゃない数の物乞いがいる。
大人の物乞いたちはもう仕方ないが、幼稚園児とか小学校低学年くらいの子供ならまだ違う道を選ぶことができる。

毎日毎日人に駆け寄って惨めそうな表情を作ってお金を恵んでもらう日々に彼らもいずれ疑問を抱く。
どうしてこんなことをしないといけないんだって。


俺も同じ路上で生きている。

路上で金を落としてもらう行為自体に彼らとの差はない。

もしこのインドの子供たちが、音楽をやったほうが稼げるんじゃないかって気づいてくれたら、インドにはタブラやシタールといった独自の美しい楽器がある。


楽器の腕を磨いて磨いて磨いていけば確実に稼げる。これは間違いない。


音楽には希望がある。
貧しさを音楽で跳ねのけることができるならば、とそんな青臭いことを最近考えている。

俺の路上を見て、子供たちが少しでも音楽をやろうと思ってくれれば。

動機が金のためだなんて立派なもんだ。
こんなにも芳醇な音楽文化を持つインドなのに、もったいないよ。

それで一流の奏者になれば、確実に稼げるし尊敬される存在になれる。


そのことを分かってくれればな。












寺院の入り口に行ってどこでやろうかキョロキョロしていると、いきなり向こうの方から警察があるいてきた。

ここは仏教の聖地。警備がかなり厳重でそこらへんに警察がいるので止められるかなと心配していたが早速か。

そして目の前までやってきた警察がヒンドゥー語で話しかけてきた。

何か言いながら自分が歩いてきた方を指差している。
そこには仲間の警察が数人木陰で座っている。


「ウェラーユーフロム。」


ジャパンと答えるとうなづいて、英語で会話したことで満足げな顔をしている。

これインドで100%聞かれる質問。
必ず全員聞いてくる。


コンニチハーって話しかけてくるから日本語喋れるんだ、と思ったらその次にウェラーユーフロムって言ってくる。
おのれ分かっとるんじゃねぇのか?

この警察もそのクチで、ただ単に暇つぶしに俺に歌わせるために権力を利用して自分たちの休憩場所にこさせようとしている。


こんな人ばっかり。
ウェラーユーフロムの次に必ず、ギター弾いて、って言ってくる。
おのれの興味のためだけに。

商店で水を買ったり、道を歩いてるだけでこのやり取りが発生する。









警察がここならいいよと言うので道端でギターを広げると、一瞬にしてものすごい数の人だかりができた。

全員暇なリキシャーのドライバーと客引きと物乞いたち。

あまりに道にはみ出てしまうので、警察がもっと奥でやってくれと言ってきた。

隅に追いやられ、道路の近くまで来るともう狂ったクラクション地獄。

インド人は動くものが目に入ったらクラクションを押すので、道路は常に騒音の嵐。
本当にノイローゼになる。


こんな場所じゃギターもほとんど聞こえない。
もうどうにでもなれと演奏を始めた。







photo:10



あまりにうるさくて歌がほとんど聞こえず、最初は集まってきた暇人たちもすぐに散って行った。

残っているのは物乞いの子供たち。

チンチン丸出しのボロを着た男の子が、何してるんだろこの人?といった顔で俺を見上げている。

小学校低学年くらいの年ですでにドレッドになりかけてる髪の毛の女の子が目の前に座っている。

みんな体も服も、これでもかというほど汚れている。

よくテレビとかポスターとかで見る、貧しい子供に愛をみたいな悲惨さを強調した写真のそのままの光景があった。


みんな大人しく目の前に座って歌を聴いてくれている。
きっとテレビとかもほとんど見たことないだろう。
この異国の人間の弾くギターとハーモニカは今まで聞いたこともない音色なんだろうな。


木漏れ日の下で子供たちに囲まれて歌う姿はまるで何かの説法でもしてるみたいだった。






案の定いくらやってもお金はまったく入らない。

10ルピーだけおじさんが入れてくれた。
そのお金をまじまじと見つめている子供たち。
もっと稼いで、音楽で稼げるってとこ見せたかったんだけどな。



ギターをしまって、バッグから折り鶴を出して1人の女の子に渡すと、さっきまでの陰惨とした表情がパッと明るくなった。

他の子たちも群がってきたがキリがないのでもう1人にだけあげて荷物をまとめた。

折り鶴だけでこんなに喜んでくれるんだからアメ玉でもあげたらきっと大喜びする。
もっと彼らのために出来ることがあるはず。

でも俺はまだそこまで踏み込めないかな。

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ギターを持ってその足でマハーボディ寺院に入った。

警備員も2度目の俺の顔を覚えていて、顔パスでゲートをくぐる。


そして今日も菩提樹の下に座ってずっと考え事をしていた。

たくさんのお坊さんや観光客たちがのんびりとあちこちに座って思い思いの時間を過ごしている。

静かな広場に、尼さんの読経の声が乾いて聞こえる。


ああ、命の使い道ってこんなに自由なのにな。













お昼に食べ損ねた屋台に行くと夕方の時間はオープンしており、チキン焼きそばを注文した。

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うん、やっぱりここマジで美味い。
60ルピー。1ドル。



すると隣の椅子で焼きそばを食べていた若いお坊さんが話しかけてきた。


「コンニチハ、昔少し日本に住んでいたんだ。」


彼の名前はサテンドラ。
英語が上手できちんと教育を受けているのが分かった。

スマートなハンサム。

インド人はほぼ嘘つきなので路上やってる時以外はあまり会話したくないんだけど、彼は普通にいい奴そうだった。


「今僕は仏教の学校で勉強してるんだけど、お金は全部日本人の先生が出してくれてるんだ。すごいお金持ちの大きな人で、その人が助けてくれてる。」


へー、そんなこともあるんだな。
どんないきさつかまでは聞かなかったけど、何かしらの援助をしてる人がいるんだろうな。

ドキッとする。さっき俺が諦めたことをまさに実行してる日本人がいて、その成果がこの目の前の賢いインドの若者だった。




サテンドラの将来の目標は貧しい人たちを救う仕事に就くことだという。
住まいや仕事、寄付など、彼らに対してできることはきっと無限にあるし、インドの社会そのものを変えないことには何も解決しない巨大な問題だ。

途方もない仕事だが、18歳のサテンドラはこれからたくさん勉強して、きっと大きなことを出来る男になってみせると笑った。
ガンジーやマザーテレサみたいになってみせるよと。



さっきあんな路上の光景を見て、そして仏教の聖地であるこのブッダガヤでその言葉を聞けただけですごく意味深く、嬉しかった。

なんだか言い方は変だけど、少し救われたような気がした。

一緒に路上でチャイを飲み、君はゲストだから僕が払うよ!というサテンドラを制してチャイ代を払った。

いつかまた会おうと約束をして握手した。

サテンドラありがとう。
君に会えたことでこのブッダガヤに来た意味が倍になったよ。

photo:14









さぁ、今回のインド。見たかったものは見た。

明日は移動しよう。インド最後の町へ。








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7月26日 土曜日
【インド】 ブッダガヤ ~ コルカタ






目を覚ますと喉の奥が少し腫れている感覚がした。

風邪の引き始めの時の症状。イガイガする。

体も少しだるい。


マジかよぉ………もう病気は勘弁してくれよ………

インド、ずっと体調悪いままじゃねぇか………




でももうこれ以上はゆっくり出来ない。
所持金はあと6千円。着実に減ってきている。

この前タカシさんにボスニアとブルガリアのお金を替えていただいたけど、そのお金も中国アウトの飛行機を買ったことでほとんどなくなった。


マジで歌わないといけない。

バラナシ、ブッダガヤはまったく稼げなかったけど、コルカタはデリーに並ぶ大都会。
地図を見たら地下鉄も走ってるような街なので、きっと洗練されたインド人が多いはず。





コルカタでまず目指すのはサダルストリート。
バンコクのカオサンロードみたいな旅人たちが集まる安宿街になってるらしい。

なにやらパラゴンという有名な宿があるみたいで、この世のものとは思えないような汚い宿とのこと。
そしてザ・インド旅人っていうインドに長くいる俺超すげぇみたいな話をしてくるようなやつらの溜まり場になってるみたい。

そいつは面白そうだ。値段もきっと激安なんだろう。
コルカタに着いたらリキシャーつかまえてスパッとそこを目指そう。











宿を出て、そこらへんのシェアトゥクトゥクに40ルピー、70円で乗り込みガヤのトレインステーションにやってきた。

電車の時間も調べていないけど、多分1時間に1本くらい出てるだろう。

だいたいの旅行者が乗る指定席のスリーパーシートは満席のキャンセル待ちになることが多いようで前もってチケットを買っておいたほうがいいが、俺は今回もセカンドクラス、いわゆるジェネラルシートに乗るのでチケットは当日で問題なし。


ていうかあのセカンドクラスってほとんどの人が無賃乗車。

インドの駅は改札もないので出入りし放題だし、セカンドクラスには車掌さんがチケットチェックに来ない。

それに多くの人が駅じゃない線路の上から飛び乗ったり飛び降りたりしてるので、まさに勝手に乗りたい放題って状態だ。


まぁそんなんだけど一応買いましょう。

11時半出発で5時間の距離。

値段は160ルピー、270円。
相変わらずめちゃくちゃ安い。








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駅前のボロボロの屋台でサモサというインドならどこでも買えるスナックをゲット。

餃子みたいな揚げ物で、中にカレーが入っている。
ふたつで10ルピー、17円。


すでに汗だくなのでコーラを一気飲みし、それからチャイ屋さんで一服。

あー、俺本当チャイ好きだなぁ。見かけたらすぐ買ってる。
濃いミルクティーがタバコと本当によく合う。
ただインドのタバコはめちゃくちゃマズイが。

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今日こそ地獄のギュウギュウ詰めになるんじゃないかと思っていたが、また車内はスカスカの快適な空間。

みんな座席に横になったりして楽な姿勢をとっている。

全然ヨユーだなと思いながら車内ではなく入り口のところのスペースに座り込み、売り子から5ルピー、8円のチャイを買ってタバコをふかす。

ゆっくりと電車は走りだし、車窓というか明け放たれた入り口のドアから見える景色が貧しいブロックの集落を過ぎてのどかな田園風景へと変わると、セカンドクラスの床は特等席へと変わった。

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小さな駅には止まらず、それなりに大きな駅で人の乗り降りを繰り返しながら電車は進んでいく。

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日記を書いたり、外の景色を眺めたりしながら快適な時間が過ぎていく。
電車の移動もいいもんだ。




しかしこののんびりした時間を邪魔してくるのは、もちろんインド人。

好奇心の塊で我慢することができない彼らは、1人で窓の外を眺めている俺のところにわらわらやってきて話しかけてくる。

話しかけてくるとは言っても、ウェラーユーフロムとユアネーム?のふたつだけ。
他の英語は喋れない。

これマジでこのウェラーユーフロムとユアネーム?を1日に2万回ずつ聞かれる。


目が合うと言われる。
後ろからトントンと肩を叩いてきて、ウェラーユーフロムと言われる。

それを言い終わったら、そこからヒンドゥー語で喋り出す。
わからないと言っても、ひたすらヒンドゥー語で。

そしてしばらくしてまたウェラーユーフロムと言ってくる。


オノレさっき聞いたやろがあああんん!!!??と怒鳴りたくなる。



頼むからリラックスさせてくれよ………とげんなりしていると、兄ちゃんたちが座席の方から1人のおじさんを連れてきた。

どうやら英語が喋れる人を連れてきたみたいだ。


どれどれ、任せときなさい、と自信満々な顔してやってきた鼻ヒゲのおじさん、万を辞しての一言目。



「オホン…………フーアーユー。」



お前が誰だこの野郎!!!


まぁ俺もヒンドゥー語喋れないので偉そうなこと言えないけどね。

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とまぁそんなうっとおしいインド人に絡まれ続けていると、どこかの駅に止まった時に突然ものすごい勢いでたくさんの人がなだれ込んできた。


うおらああああ!!!どけやああああ!!!


よ、夜逃げですか!?みたいな巨大な風呂敷包みを車内にブン投げてきて、周りに膝蹴りとエルボーをかましながら突撃してくる集団。

誰もがいい場所を確保するために血眼になっており、慌てふためく俺は特等席をはじき出され、通路にギュウギュウになって汗まみれのオッさんたちに挟まれる。

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ま、まぁこれがセカンドクラスだよね……!!と言い聞かせていたら、そんな大混雑の中にチャイー!!チャイー!!ってヤカンを持った売り子が登山みたいに人をかき分けてやってくる。


おっちゃん、今はやめとこうよ。



立ちっぱなしで押し合いへし合いになってると、さっきまで快適空間を共にしてちょっとした連帯感が生まれていた人たちが、こんなもんよといった表情でニコリと笑ってくる。

そうそう、こんなもんさ。
これを求めてセカンドクラスに乗ったようなもんだもん。
この状況を楽しまないとねオッさん俺の肩を肘置きにするな。

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暑さはそんなにないが、さすがに狭くて疲れてきたなというところで、どこかの駅で夜逃げ集団や他のたくさんの乗客たちがゾロゾロと降りて行った。


座席が一気にがら空きになり、好きなところに座れた。


あー、やっとゆっくりできると窓際のシートに座ると、また売り子がチャイを持って回ってきた。


「あ、チャイ1杯ー。」


リラックスしてタバコでも吸うかとバッグの中の財布を取り出す。








ん?









財布を取り………














財布がねぇ。











ここに入れておいた。

さっき大混雑になる前にチャイを買ってここに財布を入れていた。











ない。


いくら探してもない。













………………………













えーっと………ちょっと整理しようかな。







えーっと、全財産なくなった。

それだけ。

うん。整理するところがねぇ。













えーっと…………











財布に40ドルと1500ルピーくらい入ってたよな。


うん、紛れもなく全財産。


少ないけどインドでは何日も滞在できる金額。













えーっと…………














わぁ、田んぼの緑が綺麗だなぁ。

photo:17

















ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク(´Д` )









ちょっと待とうか。

えーっと…………













死んだ。









あ、あれ、俺なんでこんなところにいるんだろう……?

そうだ!!ほっぺたつまもう!!

目が覚めたらアパートの部屋の中でテレビの前でチューハイ飲みながら眠りこけけてて、もー、ちゃんとベッドで寝なさいーって彼女が俺の肩をトントンと叩いているっていうやつだよね!!

そうだよね!!




トントン。


ん?



「ウェラーユーフロム。」


うがああああ!!!
このカレーが!!どっか行け!!








ちょ、ちょっとマジでどうしよう。

いくら探してもないもんはない。

あのドイツのミュラーだったかな?小物屋さんで買った皮の財布っていうか筆入れには全財産が入っていた。

他にはお守りと、証明写真と、ギターのピック。

60ドルしかなかったけど、それだけあればご飯も食べられるしトゥクトゥクにも乗れるし宿にも泊まれた。

それがゼロ?

え?チャイも飲めねぇ。
水も買えない。
トゥクトゥクでサダルストリートに行くどころか宿に泊まる金がねぇ。




う、嘘だろ!!

あああああ!!!!
なんてこった!!!
マジでやべぇ!!!こればっかりはマジでシャレにならねぇ!!!


電車の中で1人呆然としながら頭をフル回転させる。


と、とにかくギターはある。
歌えばなんとかなる。コルカタだから場所さえ間違わなければ多分稼げる。

問題はこの電車がどこに止まるのか。
コルカタといっても中央駅なのか郊外の駅なのか。もし乗り換えなければいけないような距離だったら電車賃すらない。中央駅だとしてもその周辺に歌えるような場所があるのか。

インド滞在はあと5日。
そして中国に飛んで中国のアライバルビザ代が1700円だからそれは確実に必要っていうかそんな先の話じゃなくて今日の飯どうしよう。
今朝サモサふたつ食べただけなのでお腹が減って仕方がない。
もうペットボトルの水も残りわずか。


ああ………鼻水がジュルジュルだ………
なんでこんな時に風邪ひきかけなんだよ…………





俺の絶望した顔を見て話しかけてくるインド人たち。

身振り手振りで説明すると、さっきまであんなに興味津々で話しかけてきてたのに、いきなりみんな離れていった。
関わり合いになりたくないって感じで。



ははは………もういいよ、たったの60ドルだもん………持ってけ泥棒だよ………

持ってけ泥棒って言葉そのまんまだね…………

持ってかんでよ……………

photo:18












5時間で着くと言っていたのに電車はいつまで経っても走り続け、夕日を眺めながら1人で焦りまくる。

photo:19



早く着いてくれないと歌う時間がなくなってしまう。

駅に着いてもサダルストリートまで歩いて行くしかないし、その周辺に歌える場所があるかどうかなんてわかったもんじゃない。

時間は18時を過ぎた。


頼むよおおおおお!!!











電車の中で座っていられずにウロウロしながらドアを叩く。

空腹と風邪気味のダルさとアドレナリンで手が震えてしまう。

やらなきゃ、やらなきゃ終わりだ。
インドで野宿はシャレにならない。マジで命の危険がある。

とにかくダッシュでサダルストリートの周辺まで行くぞ。


電車は2時間半遅れて19時にコルカタの駅に着いた。

到着と同時に飛び降りてダッシュでプラットホームを駆け抜ける!!


というわけにはいかない。

photo:20



人が多すぎる。

大混雑の中を荷物を抱えてかいくぐっていくが、駅がでかくて出口すらわからん。



やっとこさ外に飛び出すと、そこはもうバイクとバスとトゥクトゥクとリキシャーが狂ったように飛び交うクラクション地獄。

すでに日は沈んでおり、汚いボロボロの街の中はやはりどこまでもインドだった。


「ハローフレンド!!どこ行く!!サダルストリート!?OK!!カモン!!」


「カモンじゃねぇ!!俺は金がねぇんだ!!」


「OK!!200ルピーでいいよ!!たったの200ルピー!!」


「だから金がねぇっつってんだろがこの野郎!!今盗まれて1ルピーもねぇんだよ!!」


「OK!!100ルピーでいいよ!!」


「消えろ!!」


「50ルピイイイイイイ…………」




客引きたちを振り払って、デコボコ道をキャリーバッグをガツンガツン引きずりながら、とりあえず賑やかな大通りへと出た。

photo:21



イカれたレーシング会場になっている通りは路面電車まで走っていて、よくこれで交通が機能してるなってほどの無秩序状態。


汗と汚れでこの世のものとは思えないような顔で、サダルストリートはどこですか!!と道ゆく人に聞きまくる。


あっちと指差すほうに向かってとにかく急いで歩いた。

ボロボロの地面、ボロボロの建物、ギターに吠えてくる野良犬、ギターを見て弾いてくれよ!と言ってくる屋台のオッさん、クラクションの嵐、嵐、嵐。


腹が減って体がだるくて座り込みたくなる。
荷物が重い。手が痛い。

でも早く歌わないと飯が食えん、宿に泊まれん、水も飲めん。

気合いしかない!!














汗まみれのドロドロになりながら1時間くらい歩いたころで一本の通りに出た。

あ!!なんだここ!!ケンタッキーがある!!マクドナルドがある!!
バーやレストランがたくさん並んでいて綺麗な服装の人たちが歩いている!!

ここしかねぇ!!!


物乞いや物売りの人たちがかなりいるが、彼らから離れて賑やかな歩道の脇に荷物を投げ捨ててソッコーでギターを取り出す。

あああ!!真後ろが道路だからクラクションがうるせぇ!!

うおらぁ!!根性!!









photo:22





1時間半後。


体力が限界を突破してギターを置いた。

もう1ミリも歌えねぇ………








ポケットの中には930ルピー。1500円。


や、やった………

飯食える………宿泊まれる………路上ってすげぇ………

ついさっきまで無一文だったのに今俺は飯も食えるし宿にも泊まれる。
ギターあってマジでよかった………



鼻水ジュルジュルになりながらそこらへんの商店で水を買い、お金払うなりすぐにがぶ飲みした。

冷たい水が身体中に染み渡った。

はぁ………疲れた…………







今日のありがとうヤバかった。


うあ、あ、ありがとうございますうううう!!

って情けなく声を震わせながらほぼ全員と握手させてもらった。

10ルピー札、たったの17円がめちゃくちゃデカく感じたし、聴いてくれてるたくさんの人だかりの拍手と笑顔が心底嬉しかった。

こんなに感謝したの久しぶりだったかもしれない。

こんなに気合い入れて歌ったのも久しぶりだったかもしれない。











もう一刻も早く横になりたい。

どうやらこの通りはパークストリートというコルカタの盛り場らしく、サダルストリートはすぐそこみたいだった。

言われたほうにフラフラ歩いて行くと、ネオンがたくさん光るそれなりに賑やかな通りがあった。

photo:23



カオサンには程遠いが、ある程度観光客向けの通りになっている。


そしてすぐに客引きが声をかけてくる。


ホテルはどこだ!?俺の知ってるとこは安いぜ!!


そんなことを言ってくるオッさんたちに道を聞きながら、やっとこさ裏路地にあるホテルパラゴンに辿りついた。



や、やっと横になれる………



頭がショートしそうになりながら、その怪しげな建物に入り、怪しげな爺さんにドミトリーでお願いしますと言った。


「あ?ドミトリーはないよ。シングルが300ルピーだ。」



えええ!!シングルが300!!500円!!
この世のものとは思えないほど汚いって評判のくせに500円!!
しかもWi-Fiなし!!

ブッダガヤではWi-Fiありでシングル100ルピーだったのに!!


ちょっと他も見てきますと行ってサダルストリートを端から端まで見て回ったが、どの宿もドミトリーはなくシングルが500ルピーとか600ルピー。

高すぎるだろ………



さっき稼いだ金は900ルピー。
300ルピーはきつい。

なんとか200ルピーでないかとさまよい続け、23時を過ぎて口から魂出てきそうになったころに奇跡的に200ルピーの部屋を見つけた。




photo:24



photo:25



そこはもう監獄というかただの廃墟にベッドをドンと置いただけのボロいにもほどがある部屋だったけど、もうそんなことは関係ない。

荷物を置いて落書きだらけの壁に手をついた。


明日も、明後日も、インドを出るまで歌い続けないといけない。

大丈夫、なんとかなる。
ギターと根性さえあればきっと乗り越えられる。

photo:26



足がインド人並みに汚い………





水シャワーを浴びて汚れを落としたら、朝から何も食べていないということも忘れてベッドに倒れた。







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7月27日 日曜日
【インド】 コルカタ





独房の中で目を覚ました。

天井のファンが勢いよく回っていて部屋にかなりの風を起こしている。


喉が痛い。
風邪が悪くなっている。
体もダルい。




ふとベッドの枕元の壁を見る。落書きだらけの壁に、「エブリアンサーインユアハート」と書かれている。

バッグパッカー宿の壁によく書かれていそうな青臭い言葉。






photo:02



ゆうべ路上をやっていて警察は来なかった。
周りのお店の人たちも大歓迎でやらせてくれたし、物売りや物乞いの縄張り争いもそんなに厳しくないようだった。

コルカタでは歌える。

デリーの時のように爆発的には稼げないが時給で10ドルはいく。
インドで歌えるのはあと4回。

この風邪次第だけど、頑張れば1万5千円くらい持って中国に行けるはず。

もはや何も持たないことにそんなに恐れも感じない。
所持金は千円。
今日も根性で歌うぞ。










すでに昨日の朝のサモサ2つから24時間何も食べていない。
また痩せていく一方だな………

photo:01



宿の目の前にあるカフェでWi-Fiをつなぎ、チキンサンドイッチを食べた。

欧米人向けのお店のくせに質素なそのサンドにかじりつく。
そして風邪薬を飲んだ。

そしてたくさんのメールに返事を書いていく。
みんないつも応援メッセージありがとう。


そんな中、お母さんからメールが来ていた。
久しぶりだな。元気にしてるのかな。



「お盆には間に合わなさそう?お婆ちゃんの初盆だからみんなでご飯食べに行くけどあんたは1人で留守番してなさい。」



う、うん、お婆ちゃんの死に目に会えんかったしね………婆ちゃんとたくさん話すこともあるからそれでもいいよ。

もう一個メールが来てた。



「この夏に劔に挑戦してくるから。」



おいおい、劔はダメだって………

お母さんは山登りをする。休日ごとにあちこちの山に出かけて行く元気なお母さんだけど、近隣の安全な山ならまだ心配ない。

しかしもう60歳というのに剱岳はシャレにならんよ………

本州最難関のマジの山をおばちゃんが攻めるなんて気が気でない。

穂高や十勝岳縦走もやっているお母さんだけど剱は別格だよ………


不安になると同時に俺もそんな気持ちを味あわせているのかということに気づく。
そしてやっぱり常にチャレンジし続ける血は親から受け継いでるもんだなと思い、頼むから無理せんでねと返事を書いておいた。











さて、コルカタの観光地ってなんだろうていうか観光なんてしてる場合じゃねぇ。

ギターを持って宿を出て、サダルストリートを抜けパークストリートへと向かった。

photo:03




何車線もある大通り沿いにケンタッキーやマクドナルドやたくさんのお洒落なカフェが並ぶパークストリート。

歩いてる人も洗練された綺麗な服を着た人が多い。

昨日も歌ってる時に話しかけてきた人はみんな上手な英語を喋ったし、みんな当たり前にビートルズやボブディランを知っていた。

俺の写真を撮ってくるそのモバイルもほとんどがギャラクシーやiPhoneだった。

完全にお金を持った人たちが遊びに来るエリアだ。






しかしその分、物乞いが多い。

photo:04



道のあちこちに真っ黒な服を着たおばさんたちが寝そべっており、その周りで汚れきった体の子供たちが風船やガムを持って通行人に近寄っていく。

ゆうべ俺が歌ってるのを見ていた彼ら。俺には金くれーって言ってはこない。

しかし悲惨なもので、5歳くらいの子供が2歳くらいの子供を抱きかかえて、高級なファストフードレストランの窓際で中の楽しそうなお客さんに向かってずっと手を口に当ててお腹空いてるのポーズをしている。

するとお店の警備員のおじさんが出てきて、大きな声を出してあっちへ行け!!と怒鳴ると、子供たちは恨めしそうな、そしてなんでいけないの?といった疑問の顔をして離れていく。



はっきり言って見てられない。
しかしそれが彼らのやり方。悲惨さをお金を変えるのが物乞いの技術。いかに悲惨であるかで稼ぎは大きく変わる。

インドでは子供のころにわざと手や足を切り落とし、目を潰したりしてカタワとなり、それによって物乞いの収入をあげるという。
しかも彼らが所属している派遣会社みたいなマフィア組織があって、彼らはシステマティックに物乞いをしているとのこと。

きっと他の貧しい地域でもこんなことはあるはず。

生まれついて物乞いしか人生の選択肢がないなんて、なんて恐ろしいことなんだろう。
しかしそれをやれてしまうのが人間なんだよな。










photo:05



ギターを取り出して歌った。

まばらに集まってくる人たち。

しかしゆうべのような活気はなく、暇そうな屋台のオッちゃんとかボロボロの服を着た爺さんばかり。

photo:06




かろうじてお金はポツポツと入るが、お金を入れてくれそうな綺麗な服装の人が足を止めると、すかさず物乞いの子供たちがその人に群がり追い払ってしまう。

邪魔すんなよ、と見つめると悲しそうな顔で俺を見上げてくる。

なにがいけないの?といった瞳。



あまりのクラクションのうるささと物乞いの子供たちの妨害でキレそうになり、場所を移動。

しかしわざわざ反対車線の方に場所を変えても、物乞いの子供たちはずっとついてきて、ひたすら歌を聞いてくれる人にお金を要求して回る。


ダメだこりゃ………





はぁ……とため息をついてギターを置くと、俺のとこに来てまっすぐ見つめてくる汚れた子供。

バッグの中から折り鶴を取り出して渡すと、パッと表情が明るくなり大喜びしてどこかへ走っていった。



あんな子供らしい表情をしててくれたら何か変わるかもしれないのにな………

彼らはまだ幼稚園とかそのくらいの歳。子供同士でじゃれあっている時はキャーキャーと無邪気な笑顔で楽しそうに駆け回っている。


しかし大人の物乞いを見ると、もうその顔に微塵も喜びは見られない。

悲壮感をにじませることが生きる道として何十年もやってきた物乞いにはもう惨めさ以外のものは何も感じられない。いわば物乞いのプロ。子供たちはまだ染まっていない。
きっとまだ何か他のことができるはず。


ひとつあげたことで、どんどん他の子供たちもやってきてしまった。
みんな折り鶴をくれと手を差し出してくる。

仕方ないので目の前で折り方を見せてあげながら彼らに渡した。

みんないい笑顔をした。
汚れている以外はそこらの裕福な家庭の子供となんら変わりない表情だ。

photo:07











photo:08



屋台で45ルピー、80円の安い焼きそばを食べて気合いを入れ、路上後半いくぞ。

夕方になってパークストリートは少しずつ人通りが増えてきた。
やはりここはカフェやレストランがあるので夜が賑やかになる通りらしい。

鼻水ズルズルで喉もかなりきついが泣き言なんて言ってる場合じゃねぇ。
根性で歌うぞ。







photo:09



photo:10



夜の客層は昼間とはガラリと変わった。

みんなシワのない綺麗なシャツを着こなし、髪の毛もきっちり刈りそろえられて清潔感に満ちている。

女の人のサリーも色のくすんだものではないし、バッチリメイクでインドのモダンな流行に乗っている。

彼ら教育をキチンと受けている人々は外国の文化に明るく、そして何事もスマートだ。

ウェラーユーフロムもあまり言ってこない。

photo:11



photo:12











順調にお金も入り出し、たくさんの人だかりができ、その真ん中で汗をぼたぼた流しながら声を張り上げる。

後ろが車道なのでクラクションに負けないためにフルパワーで歌わないといけないので喉の負担がでかい。





その時、人だかりを割って1人のオッさんが俺の前に立った。

綺麗な服を着ており、良識のありそうなおじさん。

しかしなにか不服そうな顔をしており、俺に問いかけてきた。



「君はなぜ世界一周をしている?フォーワイ?フォーワイ?」



なんだこのおじさん。この質問はよくされるけど、口調が穏やかじゃない。
この乱入者の登場に人だかりがさらに増える。


「何かメッセージを伝えたくやってるのか?」


「世界を見たいから旅しています。」


「なぜここで金を稼いでいる。君は自分のお金を使うべきだろう。貧しい人たちを助けるべきだろう。」




あー、この手の人か………

確かに俺は今物乞いの人たちの目の前でお金を稼いでいる。
彼らはいつも1ルピーとか2ルピーのコインしかもらえないが、俺のギターケースには50ルピーや100ルピー札がバンバン入っている。


不思議に思う。
それがなぜ入るのか考えないのか?

泣きそうな顔して手を口に当ててるだけで100ルピーが入るわけがない。

芸を披露してパフォーマンスをしているから入ること。



路上で金を稼ぐのに1番大事なことは目を引くこと。物珍しいこと。

もちろん実力も大事だけど、路上パフォーマンスってのはそういうもんだ。


インドで物乞いなんて野良犬と同じような風景の一部だ。そんなんで稼げるわけがない。
風船やガムを買ってもらうのは悪くない。何もなしに要求するわけじゃないからだいぶマシだ。
でももっとやり方はあるだろう。


俺がやってるのは路上パフォーマンス。誰でも見ていいし、当たり前に素通りすればいい。チケットなんてない。
お金のない人は入れないし、お金に余裕のある人がいくらかを置いてくれる。
それだけのこと。




「なぜ貧しい人たちを助けないといけないんですか?」


「君は世界を一周するお金を持っているんだろう。そんな大金があるのにここでお金を稼いでいる。良くないことだ。君は日本人だろう。裕福な国の人間だったらお金を稼ぐんじゃなくて使わないといけな、」


「僕昨日電車の中で財布すられて全財産なくなったんですよ。稼がないとご飯が食べられないんです。」


「…………ま、マジで?」



勢いよく喋っていたおじさん。同じインド人が盗みを働いたということにバツが悪くなったのか、すごすごと去って行った。



「気にすんな兄ちゃん!!やってくれやってくれ!!」


「俺たちは音楽を楽しんでるんだ!!あんな馬鹿らしいこと気にするな!!」



オッさんの登場で逆にめちゃくちゃ盛り上がり、人だかりがすごいことになった。
今夜は日曜日。目の前のレストランのマネージャーが明日は月曜だから人が出ない、今夜稼げるだけ稼ぐんだぜ!と肩を叩いてくれる。

喉が潰れるまでやってやる!!

photo:13



photo:14














帰りにチャイ屋で4ルピーのチャイを飲んだ。6円。
ガラガラの喉に暖かい生姜のフレイバーが優しく染みた。

宿の独房に戻り、シャワーを浴びてベッドに倒れる。咳き込みながら体を丸めた。



今日のあがりは2630ルピーと5シンガポールドル。

計48ドル。








さっきのおじさんの言いたいことはもちろん分かる。
貧しい人々の目の前で外国人の俺が稼ぐことに違和感を抱く人もいるだろう。

しかしそんなん知ったこっちゃない。
路上は自由なものだ。誰もがアイデアと芸でお金を生むことができる。

あの物乞いたちだって、やり方さえ変えればきっといいお金を得ることができる。

あの子供たちならば、必ず大きなことをやれる。
その可能性しかない。

あんな博愛を気取るならば、彼らの可能性を伸ばすような社会の仕組みを作れないのか?
野良犬のように彼らを追い払うことしかしないで、なにが彼らを助けろだ。

すごくムカムカして体が熱くなるのは風邪もせいもある。




枕元の壁の落書きを見る。

エブリアンサーインユアハート。

青臭いよ。


電気を消して目を閉じた。

photo:15









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7月28日 月曜日
【インド】 コルカタ





目が覚めてもベッドの上でもぞもぞしながら考えていた。

昨日のおじさんの言葉。

お前がここで金を稼ぐのは良くないことだ、とあのインド人のおじさんは言っていた。

それがずっと引っかかっている。




俺がやっているのは路上パフォーマンス。
路上で歌って少しの娯楽を提供し、お金の余裕のある人がいくらかの気持ちを置いてくれる。
物乞いでは断じてない。

俺がクソつまらない芸しか出来なければお金なんて入らない。



しかし見ようによっては物乞いの人たちのショバを荒らしている外国人という捉え方をする人もいるだろう。
それがあのおじさんだと思う。

では俺が歌うことで周辺の物乞いの人たちに入るお金が減るかというと、そんなことはないだろう。
物乞いに落ちるお金と俺のパフォーマンスに入るお金はまったく別物だ。

物乞いの人たちは、どうしてこいつはこんなに稼ぐのに自分たちは………と恨めしく思うだろう。
もっと稼ぐための努力などなにひとつしないのに。







なんだかモヤモヤが取れなくてベッドからガバッと起きた。

喉が痛い。歌いすぎたのと風邪のせいで喉が完全に潰れていた。
こいつはとても歌えない。

でもこのモヤモヤをどうにかしたくてギターを持って宿を出た。








photo:01



サダルストリートを抜け、いつものパークストリートにやってきた。

月曜日の通りには昨日よりもたくさんの人が歩いており、このまま歌えばそこそこ稼げそうだ。

でも今日はそんなつもりはない。
人波をかき分けてキョロキョロしながら通りを歩く。




そして向こうの方に1人の物乞いの女の子を見つけた。
昨日、歌ってる俺のそばにいて風船を売って歩いていたあの女の子。

折り鶴をあげた俺のことを覚えていて、パッと笑顔になって近づいてきた。

その笑顔はどこにでもいる無邪気で人懐こい子供のものだ。俺に少し心を開いてくれてるよう。

今日は風船ではなく小さなガムを持って売り歩いていた。


今日はこの子のことを探していた。







ちょっとこっちに来なと呼び、歩道の端っこに一緒に座った。

今日は何をくれるのかな?みたいにワクワクした顔の女の子。

歳は8歳だがなかなか上手い英語を喋る賢さがある。




この子に歌を教えたい。
1曲でいい。
パフォーマンスすればお金がもっと稼げるということを知ってもらいたい。

とても簡単で、メッセージのあるイマジンを覚えて弟と一緒に路上で歌っていけば、きっと何か違う展開がおきるはず。

そりゃ最初は下手だろうから、物乞いの延長みたいにしか見られないかもしれない。
そんな子供たちも世界中でたくさん見てきた。

でも、何年も練習して、曲をもっと覚えて、いつか楽器も手に入れて一生懸命歌っていけば、必ずガムや風船を売ったりするよりも大きなお金を稼ぐことができる。

音楽はすごいってことを知ってもらいたい。

そのほんの小さなきっかけでいいから、音楽に触れてもらいたい。




女の子に持ってきたイマジンの歌詞を書いた紙を渡した。

あまり乗り気ではない女の子。
なんだ、何かくれるんじゃないか、といった表情。


強引でもいいからとにかくちょっと歌ってみようぜとギターを弾いてメロディを教えた。

歌詞カードを見せながら歌って聞かせるが、大事なことを忘れてた。

いくら賢いこの子でも、彼女の英語は路上で覚えたものであって、リーディングは出来なかった。

英語を読むことができない。
俺が強引に教えようとしてもあまり興味を示してくれない。


「んー、フミ、明日にしようよー。」


「最初は難しいかもしれんけど、もし歌を覚えたらすごく稼げるし家族を助けてあげられるんだよ。俺がゆうべたくさんお金をもらってるの見ただろ?」


「んー……でも明日でいいかなぁ。」



おそらくイマジンの原曲は知らないはず。
でも俺が歌うと、その後を上手に追いかけて歌うことができる。
きっと1週間も練習すればマスターできる賢さをこの子は持っている。

美人な顔立ちをしているし、そこらの物乞いの子にはないある種の品さえ感じる。

なんとか興味を持ってもらいたいんだが………



「分かった、じゃあ明日な。」


「うん!!明日ね!!」



そう言って可愛らしい笑顔を残して女の子はまたガムを持って人ごみの中を歩いて行った。









何も手応えを感じることができずに無力さにやるせなくなってぼんやりと座っていると、いろんな人が声をかけてくれる。

もう2日ここで歌っているので、通りのレストランやカフェの店員さんやマネージャーたちと顔見知りになっており、まぁチャイでも飲もうぜと誘ってくれる。



「さっきはあの子と何してたんだい?」


「歌を教えようと思って。そしたら彼女たちももっと稼げるし、町の雰囲気もきっと良くなるから。」


「うん、それはいい。グッドアイデアだよ。音楽は素晴らしいもんな。でも、なかなか難しいことだと思うけどね。」



みんなでチャイを飲みながら話をして、なんとも言えない気持ちで歩いた。











それからカフェに行ってカースト制度について調べてみた。

インドにはヒンドゥー教に基づいた身分階級がある。バラモンとかクシャトリヤとかのやつ。

5つほどの階級があるようで、1番上はバラモンという聖職を司る人たち。
次に貴族や王族、その下が大衆レベルで、その下になるといわゆる差別を受けるような職業しか出来ない階級になる。
この階級の人たちはバラモンの影にすら触れてはいけないという厳しい差別がある。

しかしさらにその下があって、ここまでくるともはやその存在自体がないものとして扱われるような、いわば動物と同じレベルの階級になるらしい。

そしてこのカーストというのは親から引き継がれるものであって、生まれた時からその階級が決定しているとのこと。

階級だけでなく、大工は大工にしかなれないし、チャイ屋はチャイ屋にしかなれない。
やはり、物乞いも物乞いにしかなれないのだ。


カーストは現世で良い行いをして、生まれ変わった時に来世で上の階級に上がるという方法でしか逃れることのできないものなのだという。




おそらく、道端で物乞いをしてる人たちもこのカーストによって生まれた時から物乞いしか選択肢のない人生を歩んできている。

あの女の子もまたそう。




カースト制度は1950年に法律によって廃止されている。差別も禁止されている。

しかしこのヒンドゥー教が生活の根幹をなしているインドでは未だ厳然とカーストの意識は残っており、階級の高い人たちによる階級の下の人々への暴力やレイプが起こっているとのこと。

文明国として世界の先進国の仲間入りをしようとしているインドでは、なんとかこの悪習を断ち切ろうとはしているが、やはり問題は根深い。

きっと何百年もかかるような問題だと思う。






カーストは親から代々受け継がれるものという文字を読んだ時、ふと今日俺がやろうとしていたことが、愚かしい、出過ぎた行為のように思えた。

インドにはこの人間扱いをされない最下層の階級の人々が1億人もいるといわれている。

どの町でも見ることができる、道端にゴミを積み上げてそこで寝ているような人たちがきっとそうなんだと思う。

GDPが世界10位という国でありながら国民の12分の1が人間以下の生活をしているという現状には、確実にカーストの意識が影響しているとしか思えない。

それが未だにインドの普通であり、罪悪感もなく共存できている理由だろう。


インドというとてつもない怪物は、日本という過保護な国で生きてきた俺にはとても理解しきれるものではないのだ。





あの女の子は幼いながらに理解しているのかもしれない。

いくら努力しても、自分の境遇が何も変わらないことを。

レストランのマネージャーが難しいかもね、と言った言葉にはそういった意味が込められていたのかもしれない。

俺がいくら夢を語ったところで、インドのことを理解していない外国人の戯言でしかないのかもしれない。












虚無感で力が出なくなり、宿に戻った。
薬を飲んでベッドに横になる。



だったら昨日のあのおじさんの言葉はなんだったんだ。

貧しさをカーストのせいにしてしまえば心は痛まないのか?

彼ら貧しい人たちの真横でステーキを食べて車に乗ってるインド人と俺にどんな違いがある?



ああ、喉痛い。

もう3時だ。寝よう。








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水と油

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7月29日 火曜日
【インド】 コルカタ





喉が痛い。

鼻水がじゅるじゅるで鼻で呼吸ができない。

ああ、結局このまま最後まで体調悪いままっぽいな………


インドを出る飛行機は明日の夜。
今日と明日でいくら稼げるか。

現在の手持ちは3千円てとこか。
中国のアライバルビザ代が1700円くらいということなので、それを差し引いても5千円くらい残せればなんとかなると思う。


この前ラオスで久々に会ったコータ君が中国の情報をくれたんだが、昆明の近くに大理という町があり、そこは一大観光地として中国国内に限らず世界中から旅行者が訪れる場所だと言っていた。

欧米人観光客も多く、路上で自作のアクセサリーを売ったり音楽のパフォーマンスをしてるバスカーもいたりするという自由な町らしい。

おそらく稼げる。

昆明は面白い町ではないということなので、飛行機で昆明に着いたらすぐに電車に乗って大理を目指そう。


5千円スタートでなんとか香港までたどり着いてやるぞ。


そのためにも今日と明日は喉がボロ雑巾になるまで歌い散らかしてやろう。





と、張り切って目を覚まして体調がこんな状態。

勘弁してくれよ……と思いながらもやらないといけないもんはやらないといけない。

コルカタは昼間は人があまりおらず夕方からが人通りが増えるので、ひとまず体力を温存しながら部屋で日記を書く。
iPhoneをぽちぽち。


最近1人旅なので集中して日記を書くことができている。

やっぱり誰かといると日記に費やす時間が減ってしまうもの。

現在はキチンとその日その日の日記を書けているので記憶も鮮明に記すことができている。





のだが、このモロッコで買ったiPhoneはどこまでも使えない。

すぐに動きが止まるし、フリーズしたかと思うと強制終了。
アプリを起動する際に3回に1回は強制終了するし、やっと起動しても動きが遅すぎてものすごく無駄な時間を使わないといけない。

金丸、と例えば打ち込んだとして、普通は上に漢字の変換候補が即座に出てくる。

しかしこのiPhoneは変換候補が出てくるのに3秒くらいかかる。

ネットを使ってる時も、クリックをしてそのクリックが反映されるまでに5秒くらいかかるし、イラついてもう1回押すとその5秒後にやっと反映されて変な広告とかに飛んだりする。

写真も昔使っていたiPhoneは連射もできるくらいに処理能力が高かったが、今のボロだとまずカメラを起動するまでに5秒かかって、イライラしながら写真を撮ってもシャッターが切れるまでに2秒かかるので決定的瞬間なんて夢のまた夢だ。

いつも人の写真を撮る時に、みんなキメ顔で待ってくれてるのにあまりに遅くて、まだー?と気を緩めた頃にシャッターが切れるのでうまいことナチュラルな表情をゲットできるって意味では斬新なカメラアプリだけど。



そんなiPhoneなので出会った人のiPhoneを触らせてもらった時に、本当のiPhoneってのはこんなにも動きが早くてよく出来たものなんだとアップルすげぇって思うと同時にこのモロッコで買ったやつは一体なんなんだと悲しくなる。

しかも最近では、いや最近でもないか。しばらく前から、アプリを起動すると「プッシュ通知を使用するとうたらかんたら……」というウィンドウが出てきてそれ以上前に進めなくなる。

OKを押してウィンドウを消してもまた出てくる。

何度消しても無限に出続ける。


そしてそのウィンドウが出てる間は全ての操作が出来ない上にホームボタンもきかなくなるという地獄のループ。

OKボタンを押してウィンドウが一瞬消えた瞬間に操作ボタンを乱打しまくると、たまに奇跡的にウィンドウが出てこなくなる。

そうしてようやくブログを投稿できるし、メールを確認できたりするわけだ。



もう本当ストレス………
これがなかったらどれだけ時間の節約になってるかわからんよ………








そんなクソiPhoneなので、今日もメモ機能で日記を書いていると画面にバグが現れた。

チクショウ!!とイライラしながらバグった部分を削除した。



その瞬間だった。

画面が強制終了された。



まぁこんなのはいつものこと。

はぁ……またさっきまで書いてたとこが消えたかな………

とゲンナリしながらメモを再起動しようとした。






メモが起動されない。

タップしてアプリが開いた瞬間に強制終了する。

何度やってもパッと画面が消えてしまう。

電源を落として再起動してみるが、やはり何も変わらない。


お、おい、嘘だろ……?と設定やらなんやらをいじくり回してみるが一向に改善されない。







え?……なにこれ?





え?






焦りがじわじわと吹き出してきた。

え?メモが開けなかったら今までの日記が全滅……なんだけど………

思いついた時に書きためていた詩の欠片たちが………


最悪そこはまだいい。日記はすべてブログに上げているので問題ない。

でも最近調子よく書いていてブログと時差があった分の10日間の日記が闇に葬り去られてしまった。




ちょ、ちょっと待て!!!
ここ数日色んなことがあって自分なりに色々考えて気合い入れて書いていた10日間の日記が消滅!!!

嘘だろおおおお!!!








なんとかなるはずきっとなんとかなると、ひたすら様々なことを試してみるがどうしようもない。

そ、そうだ!!iPhoneのソフトウェアを最新のものにアップデートしたら復旧するんじゃないのか!?


宿を出て目の前のカフェでネットに繋いで、アップデートボタンを押す!!


これがまためちゃくちゃ時間がかかって、一向に処理が進まず焦りはつのる一方。

夕方前にはパークストリートに行って歌い始めないといけない。
早くしないといけないのにアップデートは1時間経っても終わらない。

カフェの店員さんたちも長居してる俺を白い目で見ているのでちょくちょくお茶を注文するが、早く出て行かせるためにいきなりWi-Fiルーターの電源を落としやがった。

おい!!ちょっと待て!!今ダウンロード中!!





なんとか白い目に耐え続けること3時間。

時間は16時。

もう限界だ。早く路上に行かないといけない。
10日分の日記消滅の危機で気持ちが動転してるのに歌は確実に歌わないといけない。


もー!早くしてくれーー!!



というところでiPhoneにポンとウィンドウが出た。
やった!!終わった!!




「アップデートを完了できませんでした。最試行しますか?」



ものすごい勢いでiPhoneをカレー鍋の中にぶち込みそうになるのをギリギリでこらえてカフェを出た。













日記はだいたい1時間半くらいかかる。

早い日は30分で終わるけど、色んなことがあった日や考えることが多かった日は2時間半くらいかかる。

最近は激動のインドだったので、毎日が力作というくらいキチンと書いていた。

それが全滅と思うと………



もう日記やめようかな…………って全てのやる気がなくなってしまう。

書き直すとかもうやだよ…………










望みを託してパークストリートにあるスマートフォンショップへ行ってみた。

アプリが起動できなくても、iPhone内のデータは取り出せるんじゃないか。

それに専門のスタッフなら何かいい方法を知ってるかもしれない。
インド人ってのはコンピュータに強いというイメージもある。

頼む………とスタッフに相談してみた。



「ふーん、リストアしたら?」


「リストアってなんですか?」


「買った状態に戻すってこと。初期化。」



おい、俺はこのiPhoneの中の情報を取り出したいから相談してるんだぞ?



「パソコンにデータを移すことは出来ないんですか?」


「自分のパソコンでiTunesと同期しないとダメだよ。」


「パソコンないです。」


「ふーん。」





終わり。

そっから先はもう知らないと無視。

ガックリと肩を落として店を出た。











書き直したくなくても書き直さないといけない。
バラナシからのあの超刺激的な日々を、面倒だからといってささっと書いてしまうのは絶対に許せない。


はぁ………とため息をつきながらパークストリートのいつもの場所でギターを準備する。
小雨が降っているが、このマクドナルドを過ぎて少し行ったところにある屋根つきの通りなら気にせず歌える。

頑張らないとなぁ……と思っていたら誰かが声をかけてきた。



「ヘイメーン?世界一周中ってマジなのかい?」



顔を上げるとそこにはインドの最先端のオシャレをキメた、いかにもアメリカにでもいそうなめちゃくちゃ垢抜けた男前が立っていた。

フレンドリーな笑顔で、英語圏で育ったのか?ってくらい流暢な英語を喋る。


「おいおいマジかよ。60ヶ国も行ったのかい!?ギター弾きながら!?最高にクールじゃんかよ。」


いい教育、人当たりの良さ、モデルみたいにオシャレな服装。育ちの良さがにじみ出ている。

名前はフィリップ。



俺にすごく興味を示してくれてそこから少し会話をしていたら何か困ってることはないかい?と言う。

こんなこと彼に話すことでもないけれど、藁にもすがる思いでiPhoneのメモがバグってることを伝えてみた。



「よし、じゃあ俺の部屋に来なよ。Wi-Fiあるし、パソコンもあるから何か出来るはずだよ。」


「え?で、でも、俺今から歌わないといけないし、家ってどこなの?」


「ここさ。さ、行こうぜ。」



ここってどういうことだ?


わけもわからずとにかく行ってみようと荷物をかつぐと、いきなり目の前のウルトラ高級なホテルに入っていくフィリップ。

ちょ、ちょ、どこ行くの?

勝手に入ったらダメだ………




photo:02



photo:03



photo:01







よ?


photo:04






「さ、くつろいで。お茶でも飲む?」



あんたナニモン?

ここがインドなのか目を疑うようなスーパーラグジュアリーなホテルのスーパーラグジュアリーな一室。

クローゼットのハンガーにガウンがかかっている。


え?なにこれ?



「Wi-Fiのパスワードはこれね。」


「あ、う、うん。ここには馬糞は落ちてないみたいですね。」



話を聞くと、なにやらスポーツ関係の仕事をしているというフィリップ。しかしプレイヤーではないそう。

インド国内の様々な一流スポーツのプロモーションかコーディネートか、そんな感じ。

拠点はインド最大の都市であるムンバイだが、インド全土、そして海外にもガンガン遠征に行くような仕事みたい。

とにかく会社が用意するホテルがこんな超一流のものというだけで、どれだけ稼げる仕事かということがわかる。


「よし、じゃあ問題を解決させようぜ。」


「ちょ、ちょっと待って。俺たちまだ会って10分くらいだよ。なんでここまでしてくれるの?」


「だってフミがやってることに感動したからさ。まるで映画の話みたいじゃんか、ギター持って世界一周なんてさ!!」


なんかもうホテルの外と中のあまりの差に頭が混乱してくる。

さっきまで騒音が鳴り響き、ボロ切れをまとった人たちが歩き、幼児が行き交う人々の足元でハエにたかられて死んだように横たわっているという風景だったのに、扉を1枚隔てたこちら側は贅の限りを尽くした大金持ちたちの世界。

外で物乞いをしてる子供たちが1年かけて稼ぐお金を1日で使うような暮らしをしている。

そのリッチな世界と最底辺の世界の距離がたった扉1枚という事実があまりに衝撃的だった。








そしてフィリップはいとも簡単に俺のiPhoneのバグを解決する方法を発見した。


YouTubeで「iPhone note crash」と検索すると、これがよく起こる症状らしくたくさんのハウトゥーフィックスの動画が出てきた。

いくら起動させようとしてもシャットダウンしていたメモアプリ。

フィリップが発見してくれた解決方法は、まずiPhone内の検索でメモの中に書いていたキーワードを入力する。

すると検索結果でメモの内容がヒットする。

それを開くと……あら不思議。


メモの画面に移動した。



それを何度か繰り返していくと、どんどんバグがほぐされていき、いともたやすくホーム画面からタップでメモアプリが起動して問題は完全解決した。



「わー!!フィリップ!!お前は天才だ!!」


「調べたらわかることさ。力になれて嬉しいよ!!」


photo:05




なんてスマートなやつだ。
頭はいいわ、金持ってるわ、ハンサムだわ、オシャレだわ、さらにめちゃくちゃ優しいときたらもうモテない要素がひとつもない。

インド人というだけでどこか信用できない懐疑を持ってしまうけどフィリップは別だわ。

こんなインド人に出会えたことに嬉しいを通り越して感動してしまった。



「また何か困ったことがあったらいつでも連絡してくるんだぜ!!」


フィリップに何度もお礼を言ってホテルの外に出た。

その瞬間、さっきまでの清潔感溢れるラグジュアリーな空間が嘘のようなインドの世界に戻った。

けたたましく鳴り響くクラクションが耳をつんざく。

これがインド。あれもインドだ。









気がつけばもう18時を回っている。
フィリップはご飯食べに行こうぜと言ってくれたが、それどころじゃない。
インドのエリートとご飯なんて一体どんなものを食べるのか気になるところだけど、今俺がやるべきは少しでも稼ぐこと。

ソッコーでギターを構えて思いっきり声を上げた。









photo:06



喉の調子はひどいもんだ。
鼻水で鼻がつまって綺麗に声が出ない。

必死に声を出すが、クラクションが全てをかき消してしまう。
本当にクラクションが途絶える瞬間がない。
常に、常に鳴り響いている。

photo:07





それでも根性で歌い続け、2時間でヘトヘトになってギターを置いた。

チクショウ………せめて体調が万全ならまだ声も通るんだろうが………


インド人のみんながすごく歌が上手ね!!と声をかけてくれるのが申し訳なかった。

今日のあがりは1425ルピー。
ドル換算で23ドル。

photo:08














今日はあの風船売りの女の子にイマジンを教えて一緒に歌い、その間に入ったお金を全部あの子にあげようと思っていたんだが、珍しく姿を見せなかった。
いつも人だかりのどこかで俺のことを見ているのに。


雨のせいか、それとも親に関わるなと言われたのか、

今日のパークストリートには物乞いたちはいなかった。



ボロボロの体で宿に戻る。

雨が地面を濡らし、インドの豊かさと貧しさを水と油のように分離させていた。

photo:09









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インド、バイバイ

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7月30日 水曜日
【インド】 コルカタ





朝、チェックアウトのために荷物をまとめていると誰かが部屋のドアをノックした。


お、来たかな、とドアを開けると、そこにはカンボジアで一緒にアンコールワットに行った中国人のハンが心細い顔をして立っていた。

俺を見た途端、明るい表情になるハン。



「フミさんー!インド怖いですー。」



今日の朝にインドに到着するとメールをくれていたハン。
先にインド入りしていた俺に、インドはどう?危ない?汚い?ご飯は大丈夫?とビビりまくりながらメールを送ってきていた。
ここのホテルも昨日教えておいたのだ。

さすが慎重な中国人。
インドほど未知な国はないもんな。



他に3人いた友達はみんなアジアから中国に帰ったみたいで、あのメンバーで1番アグレッシブだったハンだけがインドにやってきた。
これからインドを回ってネパールに行き、そこからバスでチベットを抜けて中国に帰るそう。
それが1番安い帰り道なんだそうだ。

チベットに入るために10万円以上のツアーを組まないといけない日本人に比べて中国人は自由に出入りできるんだな。








photo:01




表のカフェでハンとお茶をして、それから1人で中国入りの準備。

まずは今夜、路上を終えた後にバスで空港へと行かないといけないが、このグチャグチャの街の中で空港行きのバスを探し出すのはかなりリスクがある。

昼にうちにバス停の場所を確認しておかないと怖い。

雨が降りしきる中、ズタボロの街を歩き、水たまりが池みたいになってるのを避けながらバス停を目指す。

photo:02



誰に聞いてもあまりハッキリした答えは返ってこないが、20分ほど歩いた頃にようやくボロボロの屋台通りの隙間に小さな発着場を見つけた。

こんなんゼッテーわかんねぇよ。

この汚い道を荷物全部担いで歩くのかと思うとかなり面倒くさい。


タクシーならもちろんめちゃくちゃ楽なんだけど値段は根性で値切ったとしても250ルピーだそう。
だいたい300ルピーが相場。500円だ。

誰か仲間がいれば代金をワリカンできるんだけど、1人で500円は今の懐ではなかなか痛い。


エアポートバスはどうやらエアコン付きのインドには似つかわしくない新しいもので、お金持ちや観光客が乗るようなバスだ。

値段は60ルピーとのこと。1ドル。

頑張って節約してバスで行くか。










次に写真屋さんを探す。

明日の朝に中国に入るが、俺はビザは持っていない。
アライバルビザを中国の空港で取得するつもりだ。

なのでインドの時のように色々と準備しておかないといけないはず。

アライバルビザのために何を用意しておくべきなのか調べたいんだけど、なにせ中国の情報は少ない。
バッグパッカーもほとんど行かないし、行く人もたいがいは事前にビザを取得しているので、アライバルビザの情報が見つからない。





なのである程度慎重に色々準備してきた。

中国から台湾へ抜ける飛行機チケットも買ったし、中国での滞在先のホテルの住所もひかえている。

そして証明写真も撮っておこう。

この前インドのために撮った証明写真は財布を盗まれた時に一緒にとられた。
また写真屋さんに行くのは面倒くさいけど、ここは最善を尽くしておこう。

中国は世界一周で1番行きたかった国。
確実に入国して楽しんでやる。








ズタボロの廃墟みたいなカメラ屋さんで2秒で写真を作ってもらった。
パソコンで画像の修正をして、肌をきれいにしてくれたりと意外なサービスをしてくれてたったの60ルピー。1ドル。

安すぎ。


これで中国のアライバルビザは完璧、なはず。
あとは申請代が1700円とのことなので、今日頑張って最低でもそれは稼いでしまうぞ。

インド最後の路上だ。









photo:03



慣れ親しんだパークストリート。

歩いていると物売りのおじさんたちがハーイと笑顔で手を上げてくる。

レストランやバーの店員さん、チャイ屋の爺さん、そして通行人も、みんな声をかけてくれる。

photo:04



photo:05




中にはまったく知らない人から、あ!あなた歌ってる人!?あなたの動画をFacebookで見たわ!!と言ってくれる人も。

路上を撮影した人がFacebookにこんなやつがいたぜーって投稿したんだな。

photo:06














いつもの場所で路上開始。

photo:07



photo:08




喉は相変わらずヒドイが今日がラスト。
明日は移動日だから1日は喉を休ませることができる。


中国が稼げるかはまだわからない。
でもアジアに入ってからの中国人たちのフレンドリーさと優しさは半端じゃなかった。
あの反応は親日と言ってもいいほどだ。


きっと稼げる。
そう願う。

だから今日は喉が潰れるまでやってやるぞ。









photo:09



photo:10




今日も雨が降っており、湿気と熱気で汗がとめどなく噴き出てくる。

頭クラクラしながら歌っていると、足元に置いているお水がなくなったのを見計らって観客の誰かが冷たい水を買ってきてくれる。

ペットボトルを首や顔に押し当てると、ジュッと音がしそうなくらいに体が茹で上がっている。



インド、暑かったなぁ。最後まで暑すぎたよ。

こんなにぶっ倒れそうになりながら路上したのはアメリカの南部くらいだ。

あの時はカッピーとユージン君と3人でデカいカップにしこたま氷とコーラをぶち込んで歌ってたなぁ。
多分1番コーラを飲んだ国だろうな。

もはや懐かしい。あのアメリカの寂しげな風。











休憩を挟みながら3時間。

19時を過ぎた頃にギターを置いた。

たくさんの拍手が起き、人だかりの中にハンの姿もあった。

お世話になったレストランのおじさんに別れを告げ、パークストリートを後にする。

photo:11





ていうか俺、宿とパークストリートの往復しかしてねぇ(´Д` )

コルカタって何があるんだ(´Д` )










photo:12



宿に戻ってハンの部屋に置かせてもらっていた荷物を取り、それからいつものカフェへ。


気になるインド最後のあがりは……



1760ルピー。
ドル換算で30ドル。


そしてこの数日で必死こいて貯めたすべてのお金を換金屋さんでドルに換金。





電車の中で全財産を盗まれて、コルカタに着いてからボロボロの体で根性で歌い、なんとか作ることができた俺の全財産は、


80ドル。


がんばった……………




これだけあればしばらくなんとかなるだろう。

さらにアジアで歌ってる時に中国人観光客からナンボかの元をもらっている。50元くらいある。

ハンに見せると、10元あればチャーハン、25元出せば贅沢なものが食べられるよと教えてくれた。


うおお、憧れ続けた中国。ついにあの中国に向かう。
四川出身のハンから色んなことを教えてもらったけど、聞けば聞くほど中国が楽しみになっていく。

なんて魅力的な国なんだ。

最高の旅にしてやるぞ。




ハン、本当に会えて良かった。

ありがとう。ハンの国をキッチリ見てくるから。
またいつか日本にも来てくれよ!!













荷物を担いでボロボロの街を歩く。

夜の街はにぶく街灯が光り、相変わらずけたまましくクラクションを鳴らしながら車とバイクとトゥクトゥクがぶっ飛ばしている。

その隙間をフラフラと歩くゾンビみたいなインド人たち。
ゴミを積み上げた隙間で何か謎の食べ物を売ってる人、何か叫んでる人、暗がりで死んだように寝てる人。


今インドにまた戻ってきたいか?と聞かれたら、食い気味で嫌ですと答える。

戻っ、のあたりで、うわあああ!!!思い出したくない!!って泣き出すかもしれない。



いやー、強烈な国だった…………

きっと10年くらいしたら、人間てのはバカなもんで、この強烈な経験が美化されてまた行ってみようかな……?って血迷ったことを考えるかもしれない。

その時の自分を全力でぶん殴りたいですね。
インドにだけは行くなこのやろう!!って怒鳴りたいです。


でも、わかんないな。
あまりにも強烈だったから、また経験してみたくなるかも。

怖いものみたさで。






今思えば悪くはなかったかな。

財布を盗まれたのはもうしょうがない。
これは俺の不注意だし、別にこのことがマイナスイメージにはならない。

クラクションは最悪だけど。
割り込みも。
臭いのも、汚いのも、嘘も、顔も。顔はごめん。





たった2週間だったけど、俺なりにインドを感じることはできた。
ここはこの世のカオスの中心だ。渦のど真ん中で人々は生と死とゴミにまみれて暮らしている。

うん、今は語るまい。
インドを語ったらウザい旅人でしかない。

悪くなかったよ。インド人も愛すべき性格なのかもね!!




photo:13



というわけてバスの発着場に到着。

オッさんが近づいてくる。



「もうバスは終わったぜ!!ところでチャイを飲みたいから5ルピーくれ!!」




死ね!!って言いかけたけどどうせインドルピーを余らせてもしょうがないから2人でチャイを飲みながらお喋りっていうかバスが終わったってどういうことだコノヤロウ!!!


「21時で終わりなんだよ。もう15分過ぎてる。ワッツユアネーム?」


「タクシータクシー!!ハウアーユーカントリー?」


「ハウアーユーカントリーってなんだよ、日本だよ日本。タクシーはいらん。」


「ノーバス!!ノー!!タクシーオンリー!!500ルピー!!」


死ね!!って言いかけたけど、最後なのでそんなにひどいことは言わんとこうと、優しく答える。



「もうインドのお金100ルピーしか持ってないんですよ。100ルピーで行ってください。お願いします。もうバスはないんですよね。お願いします。」


「あーはいはい、あそこ、そこ曲がったとこにバス停があるからそこ行きな。」



だからもうバスはないって嘘をついたすぐ後に言葉をくつがすな。そして俺いいことしてやったみたいな顔をするな。







というわけで言われた通りに歩いて行くとバス停発見。

空港行きのオンボロバスに乗り込むと乗客は誰もいない。俺だけ。
ガラーンとした薄暗い車内に座る俺。


するとバスの集金係の濃くまろがやってきて俺の隣に座る。

ニヤニヤした顔で何か言っている。

英語がまったく喋れないが、バス代を払えと言ってるようだ。



「いくらですか?」


「ジャワ、バーモント、ジャワ。」



指を2本立ててピースしてくる。
20ルピーね。34円。

まぁ外国人用のエアコンバスが60ルピーだったのでこのズタボロバスならそんなもんだろうな。

20ルピーを渡そうとすると、違う違うと言う。

まさかと思って2のあとに0をふたつ書いてみた。


そうだとうなづく濃くまろ。




死ね!!と言いかけたけど、最後なので優しくしようと、50ルピーくらいだろ?とたずねると、ニヤニヤしながら200だと繰り返す。

なんで綺麗なエアコンバスの3倍もするんだよと思っていると、バスのエンジンがかけられ動き出した。

仕方ない!!もう大サービス!!100ルピーでいいよ!!とニヤニヤした顔で言ってくる濃くまろ。

だからなんで市バスの値段がいきなり半額になるんだよボケがと思いながら、そこからは無視。


今バスの中に誰もいないから好きなことを言ってるんだろう。

他の乗客が乗ってきてから払おうと濃くまろを無視するが、濃くまろも焦って俺の肩を叩いてくる。

おい、ボッタクるならせめて英語くらい喋れ。






しばらくしてから他の乗客たちがわらわら乗ってきて、バスの中は満席になった。
お金を回収して回っている濃くまろ。

俺の席に来て、隣のおっちゃんたちからお金をもらっていく濃くまろ。

しかし俺には何も言わずに通り過ぎて行きやがった。



「おーい!!お金!!いくらだよ!!いくらだー!!」


手のひらを出して、後で後でという仕草をする濃くまろ。
1分前に200ルピーって言ってたのに本当の金額を言えないんだろう。
他の乗客もいるし。バカすぎる。


それでも、おい!!いくらだよ!!と気まずそうにしている濃くまろに叫んでいると、隣のおっちゃんが衝撃の言葉を発した。


「空港か?8ルピーだよ。」








濃くまろコッノヤロウ!!!!!

8ルピーを200ルピーとはよくぞ言いやがったな!!!あああんん!!??


それからも俺の前を通るたびに8ルピーを払おうとするが、後で後でと受け取らない。

もうこうなったら降りる時になんて言うか楽しみになってきて、空港まで待った。









バスは40分くらいしてただの道端に止まった。

ここまで来ると乗客はほとんどいない。


空港どこだよ?と聞くと、向こうだと指さす濃くまろ。
ターミナルの前まで行くんじゃねぇのかよ。空港内ってめちゃくちゃ広いのにここから歩いて行かないといけない。

面倒くせぇなぁと思いながら、10ルピー札を渡そうとすると、何だこれは?と強気な態度に出てきた。

すでにお客さんはほとんど降りていて、俺と隣のおっちゃんしかいない。
これを待ってたとばかりに張り切る濃くまろ。



もう1人料金回収のオッさんがいたんだけど、2人して俺を取り囲みバスから降りられないようにしてくる。

そして荷物を指差して100ルピー100ルピー!!と叫んでいる。


降りようとしていた隣のおっちゃんを呼び止めてもう一度バス代っていくらですか?と尋ねると、8ルピーだよと言うおっちゃん。


しかし濃くまろたちは荷物があるから100ルピーだ!!と叫んでいる。


「俺が8ルピー、バッグが92ルピーなんですか?」


「そうだ!!早く払え!!」


隣のおっちゃんはこの濃くまろたちの横暴を見てヤレヤレといった顔でバスを降りて行った。



「わかったよ、荷物は確かに大きいからね2人分払うよ。はい、16ルピー。」


「違う100ルピーだ!!早くしろ!!飛行機に間に合わんぞ!!」


「まだ3時間あるから余裕だよ。人が8ルピーなのにバッグが92ルピーっておかしくない?」


「早くしろ!!早くしろ!!」


「死ねボケ!!!」



濃くまろを押しのけてバッグをつかんでバスを降り、降り際に10ルピー札をくしゃくしゃに丸めてバスの中に投げ捨てた。


歩いて行く俺をバスの中から大声で罵っているバカ。


本当、最初から最後までインド人はインド人だわ。















道に迷って空港の敷地内を汗だくでさまよい、タクシーに300ルピーでターミナルまで行くぜ!!って言われて、なんで街から空港までが250ルピーなのに同じ敷地内でそんな値段するんだよと笑いながらなんとかターミナルまで歩いてやってきた。

photo:14




着いてすぐにバッグを開き、重たいものを取り出して重量を調整。

預け荷物20kgマックスのところを18kgでクリアーして、ギターは機内に持ち込めませんよなんてことも言われず、余裕でチェックイン完了。

イミグレーションの出国手続きも2秒で終わってあとは飛行機に乗るだけ。


バスが意外に安かったので余ったルピーでカフェに行き1番高いモカラテを注文。
1番高いと言っても80ルピーだけど。130円。

photo:15





喫煙ブースでインドのまずいタバコを吸いながら心を落ち着ける。

狭いブースの中には中国人たちがタバコを吸っている。
中国語で喋っているが、もちろんまったくわからない。
中国は世界でもトップレベルに英語が通じない国と聞いている。

そしてハンに聞いたところ、中国には観光地にあるような小さな両替屋さんがなく、銀行でしか外貨の換金ができないという。


日本もそうだ。
換金屋さんなんてない。

今まで訪れてきた国々が外国からの観光客相手のビジネスに力を入れていただけで、中国や日本みたいに自国の国内だけで観光も成り立てるような国はよほど珍しい。

きっと様々なシステムが変わるだろう。

どうなってしまうだろう。







日付が変わって夜中の1時前。

飛行機に乗り込んでシートベルトをしめる。


さぁ、ついに中国だ。








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中華人民共和国入国 前編

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7月31日 木曜日
【インド】 コルカタ
~ 【中国】 大理





飛行機はわずか1時間半ほどで降下態勢に入った。

本を読み始めてすぐだったので、インドと中国がそんなに近かったのかと驚いた。


時計を見るとまだ夜中の2時半。

時差を整えると表示が朝の5時に変わった。




時間が縮まり、夜が一気に朝になった。
つまり今日という1日を21時間と30分しか生きていないということになる。


この感覚がまったく新しいものだった。

今まで俺は常に西へ西へと移動してきた。
時差が発生するたびに時間が広がり、いつも1日を25時間、26時間も生きてきた。


西へ移動し続ける旅。
地球を一周するならば、同じ方角に向かわなければいけない。


しかし今、俺は時差という目に見えないものを通して自分が東へと向かってる事実に気づいた。

今まで広がり続けてきた時間のズレ。その帳尻を合わすように時間は2年前へと戻ろうとしていた。











飛行機は無事に滑走路に着陸し、みな降りて行く。

俺もドキドキしながら飛行機を出てターミナルの中を歩いていく。



緊張する。別にやましいことなど何もないのに手に汗がにじんで鼓動が早くなる。
相変わらず国境恐怖症は治らない。
中国という未知の国は一体どんな国境審査があるのだろう。









平静を装いながら歩いて行くと、イミグレーションカウンターが現れた。
みんなそこに並んで審査を受けている。
スタンプが捺されるバスンという音がまだ6時前の静かなターミナルに響く。

中国は入国にビザが要る。
そして俺はビザを持っていない。
インドの時のようにアライバルビザのカウンターを探す。
インドでは奥まったところに手続き場があり、そこでビザをゲットしてからイミグレーションに向かうという流れだった。



しかしいくら周りを探してみてもそれらしきカウンターは見つからない。
ビザ代とかどうすればいいんだろ?と思いながら、まぁイミグレーションで聞けばいいかなと簡単な入国カードをささっと記入して列に並んだ。




そして俺の順番が来た。

おばさん審査官にパスポートと入国カードを渡す。

ドキドキしながら質問されるのを待つ。
多分ビザはどうしたとか、出国のチケットとかを聞かれる。間違いない。



「中国はどこに行くの?」


「大理と成都に行きます。」


「…………」











バスン!!



パスポートにスタンプが捺されて、行っていいよと言われた。





え?





行って……いいの?






終わり?








1700円のビザ代は?



アウトチケットの確認は?






え?え?と戸惑いながらイミグレーションを抜ける。

え?終わり?







終わりです。

アウトチケットの確認もないです。

中国での滞在先ホテルの住所とかも聞かれないです。

ていうか証明写真を撮ってきたのに1ミリも必要ありません。

荷物のX線チェックもありません。

中国の入国、マジ余裕。



あ、一応何日滞在できますか?と聞いたら15日だと言われました。
そこは情報通り。

もしオーバーする場合は大きな街の警察署で延長できるという情報。


マジ楽勝。










photo:01



空港のデカさと豪華さにビビりながらターミナルを出ると、ひんやりとした空気が頬をなでた。


うわ、涼しい。
涼しいってなんて素晴らしいんだ。

あのインドのむせるような熱気から、一気に初秋の朝の爽やかな冷気へと変貌を遂げた。



明け方の空の白く寂しげな色がなんとも言えず胸に迫った。

しんとした静寂がまるでこの国の大地の広さを語りかけてくるよう。

ああ、ここは中国なんだ。





「コケー!!コッ!!コッコッ!!!クワーーー!!!」


その静寂を打ち破って、向こうのほうでニワトリの鳴き真似を本気でやってる変人がいた。

コッコッ!!コッ!!とかなりマジに真似している。

な、なんだあの人!!頭イカれてんのか?!と思ったらそのおじさん、すごい勢いでペッ!!と痰を吐き捨てた。

ニワトリのモノマネではなくただの痰切りでした。

そこらへんでやってます。

中国人は痰を吐きまくるというのは本当らしい。






ヤベェ中国怖えと思っていたら、今度は反対車線のほうから1人の中国人が歩いてきた。
シャツをはだけてタンクトップをさらしたジャッキーチェンの映画に悪役で出てきそうなおじさんがタバコをくわえながら俺のところにやってきた。


な、なんですか………何か文句でもあるんですか……




いきなり何かをまくしたててきた。
もちろん全部中国語。
1ミリもわからない。


ちょ、こ、怖い!!
いきなり中国人にアグレッシブに話しかけられて怖い!!




どうやらよく聞くと、タクシー、という単語が混ざっている。
なるほどタクシーの客引きか。

近くにあった昆明の街のマップを指差して、ここか?それともここか?と聞いてくる。
行きたい場所はどこかと尋ねてきているみたいだ。


その看板には中国語表記の横になんとかホールとか、トレインステーションといった英語表記も書いてある。

しかしおじさんは完璧に中国語オンリーしか喋ってこない。

空港で、外国人を相手にタクシーの客引きをしているのに、トレインステーションという英語もわからないという驚愕の事実。

そしておじさんはトレインステーションならこれだ、と自分の財布の中から100元紙幣を出して見せてきた。1700円。

ここから街までどのくらい離れているかもわからないし、中国の物価もまるでわからない。
ただアジア、インドから来た俺からすると1700円はとてつもなく高い。

中国ってそんなに物価高いのかな?という気持ちと、完全にボッてるだろという気持ちが混ぜこぜになりながら、今手持ちが50元しかありませんと言うと、OK、50元でいいよ!!と手招いた。



2秒で半額。

ぼったくり決定。




怖え……と思いながら歩いていると、バスのチケットブースを見つけた。
空港から昆明のトレインステーションまでのシャトルバスが25元、400円。
どうやらそんなに安くはないようだ。

photo:02










しかしやってきたバスを見て、その値段に納得した。

photo:03



インドだったら王族レベルが乗るようなピカピカの外装で、中はもう神の住居みたいな清潔感溢れるシート。

そして走り出しても驚きと嬉しさでアドレナリンが出まくる!!





photo:04



道路が!!!道路が綺麗!!!

みんな車線を守ってる!!!

誰もクラクションを鳴らさない!!


その全てが先進国のそれで、アジアとインドを抜けてきた身からすると快適この上ない!!

ああ!!嬉しい!!インドから解き放たれて嬉しい!!

インド人見てみろ!!クラクションはいざという時しか鳴らさないんだ!!









いや、普通なんだけどね。アスファルトに穴があいてなくて、みんな車線を守って走るなんて当たり前のことなんだけど、それがどれほど嬉しいことか。

もうこの時点で中国が好きになっているんだけど、街に入ってきてさらにドキドキがはち切れそうになる。

大きなビルが立ち並び、綺麗な歩道が伸び、ゴミがまったく落ちていない。
巨大スクリーンには美しいモデルの女性が映り、きらびやかなコマーシャルが流れている。

photo:05





興奮しながら駅前の大通りでバスを降りると、中国の匂いがブワッと漂った。

こんな文明国の整備された街並みだけれども、通りの食堂では大衆的なご飯の写真が貼られ、当たり前の小さな商店や洋服屋さんやカメラ屋さんなどの日常の光景が目に飛び込んできた。


歩いてる人たちはもちろん全員中国人。
日本人と同じ顔をした人々。


世界中を旅して、目の色や髪の色や顔の作りの違う様々な人種の地域に行ってきたが、とうとう俺と姿形の同じエリアに入った。

こここそが俺たちアジア人のホームグランド。
そのいたってシンプルな事実があまりに強烈に胸を叩く。

世界ってすげぇ。








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そんな街の中をドキドキしながら歩いていく。

大きな目抜き通りの車道にはたくさんの車とバイクが走っているんだけど、ふとあまりにも静かだなと思った。

バイクが俺の横を通り過ぎる時、エンジンの音がまったく聞こえない。

もしここで歌ったとして、反対側の歩道まで声が聞こえそうなほどに騒音がない。

そう、バイクが全て電気バイクなのだ。
まったく、まったく音がしない。

車もハイブリッドが多いのか、ほとんど音がしない。



中国は巨大な国だ。
恐ろしい数のバイクや車が走ってるはず。
環境に配慮するのが先進国の義務ならば、交通面においては中国は確実に世界トップのエコ意識を持ってる。








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昆明の駅はものすごい人ごみだった。

まず駅舎の前に大きなゲートが設置されており、1人1人全員の荷物と身体検査が行われていた。
こりゃ駅に入るだけでも時間がかかる。

なんとかゲートをくぐって中に入り切符売り場へ。

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うおおおおおお!!!!自動券売機いいいいいいい!!!!!

文明ええええええ!!!!!




なんか久しぶりすぎて操作がよくわからなくて、でもそのよくわからないのが嬉しくてポチポチやりながら大理の文字を探す。



目的地……大理ね、

時間は……30分後の次のやつね、


うんうん、なにからなにまで親切。



シートは……硬座と硬臥ってのがあるな。
多分、硬臥ってのは文字からして寝台のことだろう。
ならば硬座のほうが安いはず。


そして値段が、64元。千円。




ここで気づく。

あ、お金ない。



えーっとどこで換金できるんだろう、と駅舎の中をウロウロしてみるがどこにも換金屋がない。

そうだ、昨日ハンが言ってた。中国では換金するためには銀行に行かないといけないって。


ぬおおお………なんて不便なんだ………

アジアなら換金屋なんてそっこらじゅうにあったのに。

仕方なくまたゲートを出て銀行を探し、近くにあった銀行へ。

まだ朝早いので開店するのを待った。











ようやく8時になってオープンした銀行で窓口に行き、ドルを出してジェスチャーで換金したいと伝える。

しかし帰ってくる言葉は全て中国語。
銀行の職員というそこそこの教育を受けているであろう人なのに英語ゼロ。

ここの銀行では替えられないというような雰囲気なので、どこなら出来ますか?と頑張って伝えようとするが、中国語であしらわれるのみ。


おおお………怖え……なんにも通じねぇ………


なんとかそこらへんの人に尋ねてみるが、みんな英語がわからず、まるで話にならない。

途方に暮れて立ち尽くす。
東南アジアならば、そしてこれまで訪れた外国の国々ならば、こうして途方に暮れていると必ず誰かが声をかけてくれたもの。

どうしたの?大丈夫?って心配してくれた。


しかしここは中国。俺は彼らと同じ顔をしている。
ここは俺のホームグランド。つまり今まで外国人ということで甘やかされていたことがここではもう通じないんだということに気づいた。


マジか………

こいつはなかなかハードだぞ………



どうしようもなくて銀行を出てとぼとぼ歩く。

話しかけようにも俺は中国語は喋れないし、いきなり英語で話しかけるのがすごく失礼なことのように思えて気が引けてしまう。

同じアジア人同士で英語で話すってのはどこか違和感があるもの。


しかし尋ねないことには何もわからないんだよ。ガイドブックなんて持ってない。
今まではどの国でもだいたい何がどこにあってどうやればいいかってのは感覚でわかったものだが、この国はどうやら様子が違う。
ここは今まで訪れてきたバッグパッカーご用達の国ではないようだ。
培ってきた旅の感覚がほとんど通じない。


旅に出た最初の、あのロシアに入った時の心細さと無力さと悔しさが入り混じった感覚が胸を支配する。

まるでスタート地点に立ったかのようなこの気分はとても新鮮な感情をもたらしてくれるが、同時にすごくタフな道のりになることを表している。








それからも勇気を出して何人かに声をかけて身振り手振りで換金する場所はどこかたずねてみるが、みんな中国語なのでまったく理解できない。

別に冷たくあしらわれるというわけではない。
みんな足を止めて時間をとってくれる。
しかしお互いまったく理解し合えずに終わるということを繰り返していると話しかけるのが申し訳なくなってくる。



歩き疲れてヘトヘトと座り込んだ。

はぁ……こんなに言葉の壁で苦労したのっていつぶりだろう。



疲れがドッとのしかかってくる。

そういえばもう24時間近く寝ていないし、風邪がまだ治っていないので意識が朦朧としてくる。

ああ………どうしよう………
こんなんで中国をどうやって旅していけばいいんだよ………







うなだれながらかなり絶望的な気分になっている時に、ふと街に溢れる看板に目をやった。


当たり前に漢字で書かれている看板たち。
そりゃそうだ、ここは中国だもん。


ん?漢字?

あ、書けば分かりあえるかも………

そうだ、俺も発音は聞き取れないけど、漢字で書いてもらえばほとんど意味はわかる。

そうだ、と思いノートとペンを出してまたおじさんに尋ねてみた。





おじさんはペンをとって、ノートに文字を書いてくれた。

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そこには「中国銀行」と書かれていた。
そして通りの向こう側を指差した。

シェイシェイと言って言われたほうに歩いていくと、そこにはまさに中国銀行があった。



うおおおおお!!!!
すげぇ!!筆談すげぇ!!

こんななんてことないことがあまりにも感動的だった。

漢字って、まさに漢民族の字。

やっぱここはホームグランドなんだ。












無事ドルを30ドル換金し、184元をゲット。

そのまま駅に戻り、また身体検査を受けてゲートをくぐって自動券売機で大理までのチケットをゲット。

売店で1.5リットルの水を4元、65円と、カップラーメン5元、90円を買って電車に乗り込んだ。

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もう目に映るもの全てが新鮮な衝撃をくれる。

中国人はタバコが好きみたいで、どこでもそこでも吸っている。
駅舎の中のトイレの中でも吸ってたし、この電車の中でも吸っている。

飲み水コーナーが充実してるかと思ったらそれ以上にどこにでも公衆のお湯の蛇口があり、みんなそこでポットや水筒にお茶を飲むためのお湯をくんでいる。
おかげでどっこでもカップラーメンを食べることができる。



そして電車に乗り込んだものの座席が満席になってしまい、仕方なく連結部分のスペースに立っていたら車掌さんが小さなプラスチックの椅子を渡してくれた。

シェイシェイと言っても、真顔で去っていく車掌さん。

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中国人たちはみはそんなに笑顔を見せない。でもそれは不必要な干渉をしない彼らの距離感だ。
iPhoneをいじっていても、バカみたいに横から覗き込んできて勝手に画面を触ってくるというインド人みたいなことはもちろんしない。

その落ち着いた雰囲気がなんだかとても心地よい。
どんどん中国の印象が良くなっていく。









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しかし今のズタボロの体で座席なしの小さなプラスチック椅子はなかなかきつくて、6時間で電車が大理に到着したころには身体中がバキバキになっていた。

腰が痛すぎる………



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満席だった電車の中の乗客のほとんどが大理で降り、ものすごい人波になってゾロゾロと駅を出ると、そこにはたくさんのホテルの客引きたちが集結しており、口々に叫んで客をつかまえようとしている。

しかし誰も俺には声をかけてこない。
みんな中国人に的を絞っている。
汚いバッグパッカーに用はねぇってとこか。

アジアならいの一番に俺に群がってきてたってのに、本当何から何まで中国は外国人をあてにしてない国だ。



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大理も想像以上に大きな街で、いくつものビルディングが立ち並び、都会的に整備されている。

本当中国はどんな小さな街でもそこそこの人口があって、そこそこ栄えている。
1000万人都市がいくつもある。





この大理は古都として知られている街。
京都みたい、という話を聞いている。
しかしどこにそんなエリアがあるかわからないし、どうやって行けばいいかもさっぱり分からない。

しかし筆談という技を覚えた今、俺はほぼ中国人。漢字なら理解できる。
いやー、これ欧米人大変だろうなぁ。

まぁ俺も今まで散々欧米諸国やアルファベットの国を周ってきて肩身の狭い思いをしてきたんだ。
英語やスペイン語やヨーロッパの言葉がわからなくてどれほど苦労したことか………

ここは欧米人にも苦労してもらおう。
世界はお前たちの言葉だけで周ってるんじゃないんだぞ。







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駅前から2元、30円のバスに乗って大理の歴史エリアを目指す。

バスは街の中を抜けて郊外へと向かい、のんびりとした風景の中を走っていく。

遠くに大きな湖が見える。
山に囲まれており、湖の周りには瓦屋根の民家が並び、懐かしさがこみ上げてくる。

少しだけ作りや色合いは違うけれど、その町の風景はもうほぼ日本と変わらないノスタルジーをたたえていた。

中国から文化が入ってきたんだもんな。いわば母国みたいなもんだ。

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バスを降りると、わずかに観光地っぽい臭いがした。

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巨大な城壁があり、その城壁沿いに人が歩いている方へと向かって行くと、どんどん食堂や土産物屋さんが増えていく。

そして城壁の途中に壮大な楼門が現れると、そこにはまさに一大観光地の様相を呈していた。

無数に行き交う人々、賑やかな食堂、目の前にある中国の歴史映画に出てくるような壮麗な城門。

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あまりの異国っぷりに震えがくる。
久しぶりすぎる、こんな感動。

本当、旅の初心者に戻ったかのようだ。
うー、やっぱり中国はどこまでも期待を超えてくれる!!!







後編へ続く………







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