旅立ちは船がいい

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船が動く。
ゆっくりと岸壁を離れ、速度をあげていく。
遠くなる日本の陸地。
吐き出される黒煙。

photo:02




船内放送は韓国語なので何を言ってるのかわからない。

さっきヒッチで乗せてくれたお兄さんがくれたセブンスターをぼんやり吸っていると、白人のおじさんが声をかけてきた。
もちろん英語。少したじろくがなんとか会話はできる。
俺のこれからの旅、彼のこれからの旅、そんな話をした。

イギリス人らしく、今まで世界中を回って、今回も北欧からモンゴルまで色んなところを旅する予定だという。
俺が世界に行くのは初めてだと言うと、

おじさん
「ビッグアドベンチャー。」

文武
「うん、おじさんもやん。」

おじさん
「イエー、マイラストアドベンチャー。」

初老の彼は遠く海を見ながらそう言った。
シワの刻まれた目尻。
潮風にゆれる白髪。
その顔はまさにハリウッド映画のクリントイーストウッドみたいに人生を雄弁に物語っていた。
セイリングを歌ったら彼は微笑んでロッドスチュアートと言った。



部屋に行くと、そこは二段ベッドが4つ並ぶ8人部屋。
日本人の男が2人。
韓国でおりるおじさんと外国語学校のショッペー。
2人とも外国経験豊富な旅人で、外国での話をリアリティを持って話してくれる。特にショッペーはカウチサーフィンだとかクーポンの鉄道券だとか賢い旅の仕方をたくさん知っている。


デッキに出て日本人3人でビールを飲んだ。
500mlが500円。
喉に流し込むとすでに不安もなにもなくなっていた。
もう日本の影はどこにもない。吹っ切れたように俺の意識は世界に向いていた。

ショッペー
「はぁ?!あと6000円?!あはははは!!俺この人大好き。初日からこんな面白い人に会えるなんて!」

残金6000円。なんとかなんだろ。
楽しくてビールをもう一本。


勢いがついてしまい、広間でギターをいじってる韓国人の若者にからむ。

文武
「ベロベロー!韓国の女の子を口説くハングルのセリフ教えてよ。」

若者
「んー………ノーキヨウワ。」

文武
「ノーキヨワ?」

若者
「はいはい。アー!ソリ!」

若者が同じグループのかわいい女の子をこっちに読んだ。
「猟奇的な彼女」のヒロインみたいな気の強そうな女の子。

文武
「ノーキヨワ。」

女の子
「アー!」

恥ずかしがってる。かわいい。
Facebookの名前を交換した。

photo:01



部屋に戻るとベッドの上でショッペーが日記を書いていた。
ショッペーは英語ペラペラで旅慣れしてるようだが、俺がどんどん知らない人に声をかけまくってるとこにはついてきてくれない。
真面目なんだろうな。
ていうか俺が浮かれすぎなのか。
いや、浮かれたっていいじゃん。




初日からこんなに楽しくていいのか?
異文化交流ってこんなに楽しいのか?
もしかして世界って楽しいことばっかりなんじゃないのか?

タバコを吸いにフラフラとデッキに出た。
酔った体に潮風が心地よい。
周りはどこまでも暗闇だった。空も海もない、途方もない漆黒の闇。その中を飛ぶ飛空艇。

知らない場所に行くんだ。
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えー、お腹がですね……

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こ、こわれてないもん!!
ちょっと頻繁にお腹が痛くなって柔いのが出るだけだもん!
一度もお腹を壊さないで一周してやるって決めたのに、たった一日で終了するわけないやんー(^_^)

あー、トイレ行ってこよ。




7月1日 日曜日

韓国人はやかましい。
声がでかい。
女の子スタイルいい。

船内放送が流れる。この船はこれから9時に韓国のトンへ市に入港し、6時間の滞在を経てウラジオストクに出発する。


陸地が見えてきた。
はじめての海の外の地。知らない言葉を話す人たちが住んでいて、知らない文化が営まれている。
まるで古の旅人になったかのような、壮大な物語が待ち受ける予感。

船を降りてターミナルでカードを書く。
一時的なものでも入国は入国。
ということで俺のパスポートに刻まれた初めての国は韓国ってことになった。

青木さん、別木さん、ショッペーの4人で駅に向けて歩く。
寂れた港町。境港と同じような感じかな。建物は古く、日本の昭和の町並みのよう。民家はさらにボロい。

青木さんと別木さんはここでお別れ。彼らは韓国を旅する。
お別れの前にみんなでご飯を食べに食堂に入った。


えー、


………メニューが何書いてるか一つもわかんないんですけど(´Д` )
そりゃそうですよね。日本の食堂でメニューに韓国語訳を書いてるとこなんてほぼないですもんね。

別木さん
「メンミョンジュセヨー。」

別木さんは何度も韓国に来てる韓国マスター。ハングルペラペラ。
青木さんも普通に朝鮮日報を読んでる。

うわー、みんなすごいよ。

んで、俺はビビンバ。
6000ウォン。
え?お金ですか?
あるわけないじゃないですか?

どうしたかって?


別木さん!ゴチになります!
ありがとうございました!

海外で食べる初めてのご飯。
日本風じゃないからあんまり美味しいとは思わないけど、人間が食べるものなんだからきっとこれも慣れるさ!

photo:01



青木さん、別木さんと連絡先を交換して彼らを見送った。たった一日だけど、寂しい。そして心細い。当たり前だけどそのうちショッペーとも別れてひとりになる。
別れがあれば新しい出会いがあるはずさ。


港に戻り、改めて出国手続きをして船に乗り込む。
ここで早速新たな出会い。アイルランドから来てる兄さん、ウィービー。
ショッペーと会話が盛り上がっている。俺はそこに入っていけない。だって英語だから。ショッペーはICUの学生だから英語ペラペラ。だからウィービーも気を使わずにペラペラ。俺涙ポロポロ。

夜も3人で色んな話をした。
さっきに比べてほんの少しだけ理解できるようになった。
船の中は圧倒的にロシア人が増えた。あとは韓国人と少しの欧米人。日本人はほぼいない。
船内を飛び交う言葉の中に、日本語はない。
もはや日本語を話すことさえ不自然に感じてきた。
こうやってずっと知らない言葉の中にいれば、自然と慣れて、話せるようになってくれるはず。
そう信じる。


部屋に戻って日記を書く。
夕日がとてもきれいだった。
誰もが写真を撮り、歓声をあげる。
水平線に消えていく赤い球体。
地球の営みの壮大さを感じずにはいられなかった。

photo:02



ウラジオストクに着いたよ

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7月2日 月曜日

島影が見えてきた。
ウミネコのお出迎えに韓国人のおっさんがパンを投げて食べさせている。
ロシア人の女の子が投げたそうに横で見ているのにおっさんは楽しそうに全部投げきった。

昼すぎ、ウラジオストクの街が見えた。
うわー!ロシア?ねぇここロシア?うひょー!!と言いたいところだがショッペーとアイルランド人のウィービーしかいないのでやめる。
大人しく出入国カードを記入し、iPhoneの時計を2時間早めた。


そしてついにユーラシア大陸に足を下ろした。
あ、韓国もユーラシア大陸か。
ぞろぞろと歩き、入国審査のゲートへ。
かなりの混雑。順番もよくわからん。

ショッペー
「遠慮したらダメだよ。ガンガン行かないとドンドン抜かされるよ。」

よーし!やってやろうじゃねえか!抜かせるもんなら抜かしてみやがれ!
日本人なめんなよ!

文武
「あ、どうぞ。」

韓国人の兄ちゃん
「アー。」

韓国人の兄ちゃんのほうが先に並んでたから当然譲ったんだけど、彼もどうぞって譲ってくれた。
いい人(^_^)


そしてついにウラジオストクの街に出た。
あー!
ロシアー!
ロシア人しかいないー!!
すげー!

「Picture!」

声をかけられて振り返るとロシア人の女の子。なんだ?
片言の英語で一緒に写真を撮りたいと言っている。
は?俺?なんで?
意味がわからないまま女の子と並んで写真を撮る。
なんだこれ?
どうやら日本のことが好きみたいなのだが、出国前にみんなからさんざん脅かされまくっている俺にはこの可愛い女の子が悪魔の化身にしか見えない。
どうやって俺をはめるつもりだ!

ショッペー
「フミ!カモン!」

ショッペーに呼ばれバイバイして別れたのだが、きっとあの子は純粋にコミュニケーションしたかっただけだったんだと思う。
そう思うとふとロシアが暖かい国に感じた。もっと話したかった。ゴメンね!

photo:01





あー、すごい、あー、すごいよー。
白人さんだよー。
建物が日本と違うよー。
ベランダとかない、窓がたくさん並んでるやつ!そんなやつ!

photo:02



photo:04



誰かわからん人の胸像を撮るふりをして美人の写真を撮ったりしながら、ご飯食べられるところを探して歩き回る。
ショッペーもウィービーもちゃんとガイドブックを持っていて、その詳しい地図からカフェ・レストランを探している。
俺?
なにも持ってませんよ。

やってきたのは奥まったところにある落ち着いたカフェ。
店員さんに英語で話しかける。
しかしロシア人には英語は通じない。
まったく。
かけらも。
メニューを見たところでキリル語の表記は英語表記とまったく違うのでお手上げ。
テキトーに注文。
出てきたのはハンバーガーとポテト。
美味い!こんな美味しいハンバーガーなかなかないぞ。
しかし量は少ない。
24時間前にカップラーメンを食べただけの胃袋を満足させるにはいたらず。
値段は250ルーブル。
だいたい650円くらい。
韓国で2000円換金したんだけど、あんまりレートがよくなくて800ルーブルくらいもらえるところが、730ルーブルにしかならなかったんだよな。
なんとかこれでロシアはまかないたい。

「ごちそうさまでした!」

なんて言ってるかわからんやろうけど、笑顔を返してくれたロシア人。
極力日本語を使ってやるぞ。



ストリートでこまごましたものを売っている屋台でタバコを買おうとおばちゃんに声をかけるが、悲しいほどまったく伝わない。
シガレット、も通じない。

文武
「This one.This one.」

ロシアおばちゃん
「ピロシキピロシキマトリョーシカ!ピロシキ!」

ほんとにパニックになる………
必死に身振り手振りでやっとこさ購入。
安!安すぎる!
1箱25ルーブル。だいたい60円!
北欧のタバコめちゃ高いらしいからロシアで買い込んで行くとしよう。


さてさて、ここでショッペーとウィービーとお別れ。
彼らは自分でビザを取得してるツワモノなので、もちろんホテルも「ホステル」を予約している。ホステルとは安宿のこと。

2人と別れ、ついに見知らぬ外国で1人になった。
でもなんだか吹っ切れて心地よささえ覚える。
覚悟を決めて歩き出す!





…………迷子です。

道がわからんとです。




てかウラジオストクの街、汚ね!
ボロボロ。
ほんとに冗談抜きに宮城県みたい。
津波あったのか?ってくらいアスファルトも割れたり陥没しまくり。
建物もボロッボロ。
なので看板もろくにない。
というか文字が一切わからないので看板の意味がない。

ヤバイヤバイー!
どうしよう!
ホテルにたどりつけないー!

よし!覚悟を決めて現地人に話しかけるしかない!
怖いけど、同じ人間だもん!
よーし、あの優しそうなおばちゃんに………

文武
「ズドラーストビチェ。」

ロシアおばちゃん
「no,no,no,」

ハエを追い払うがごとく手を振られる。


…………………



日本人なめんなよ?


泣きそうになり立ち尽くす。
街の喧騒の中、1人ぼっち。
途方に暮れる。

その時、横に1台の車が止まった。

ロシアおじさん
「ヘイ」

こっち来いと手招いてる。
ホテルの名前を見せた。
多少英語の出来るおじさん。

ロシアおじさん
「OK.come.」

助手席を片付けはじめるおじさん。
これか、こいつが噂の追いはぎ野郎か!
そうかそうか、1人ぼっちの可哀想な俺に追い打ちかけるんだね。わかるよ。
その手には乗らん!と頑なに断る。
でも追いはぎ野郎もしつこく、ホテルまでけっこうあるよ、いいから乗ってきなと助手席を開ける。

いや、いいです。歩いて行きます。
いいから乗ってきな。
いや、ほんといいです。
あー、金?金なんていらんよ。プレゼントもいらんから。

もー、ほんとしつこいから乗ってしまう。
連れて行かれた先はボロボロの建物の前。
なんだこの廃墟……磯だろ?あ、いやいや、嘘だろ?

中に連れて行かれる。
エレベーターに乗せられ、おじさんが外から7階のボタンを押す。

ロシアおじさん
「Have a good trip.」

ボロいエレベーターが開くと、そこは綺麗なホテルのロビー。
追いはぎ野郎は実はただたんに本当に親切なおじさんだった。

警戒しすぎるのはよくない。
しかし不用心はもっといけない。
日本人なら危ない人とそうでない人の区別ってだいたいわかるけど、つまらない旅にしないためにも早く見極める眼力を身につけたいな。

おじさん、スパシーバ!


ドキドキのチェックインを済ませ、部屋に行く。
グラグラのドアノブ、ネジの外れたシャワー、ヒビの入った窓ガラス、シミのある壁紙。
ボロいけど、ショッペーたちが行ってるホステルよりははるかにマシなんだろうな。

photo:03



テレビをつけると、もちろんロシアの番組。
もちろん何言ってるかわかんねー。

くだらなそうな番組でニヤニヤしていたら、いきなり、爆音が響いた。

なんだなんだ!!?

びっくりして外を見たら、そこには小さいながらも花火が上がっていた。
ウラジオストクの海に弾けるささやかな花火。
あちこちから聞こえる歓声。
おいおい、地面で爆発したりしてるぞ?あっぶねーなー。

ついにここまで来た。
といってもまだまだはじめの一歩なのだが。
これから色んなことがあるんだろうな。
その日本にはない雑な花火が、ユーラシア大陸に入った俺を歓迎する祝砲にしか思えなかった。




心配していたみんなゴメン!

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今、無事イルクーツクに着いたよ。
心配していたみんなゴメン。
とりあえず日記を更新するから足跡を見てみて下さい!



7月3日 火曜日

ゆうべふと考えた。
金はない。
ということは帰ることができないということ。
地球の反対あたりまで行って帰れないということ。
知り合いもいない。
ドンドン進んで行って、北欧に入って、金がなくなり途方に暮れたとき、俺は本当の一人ぼっちを知るだろう。
とてつもない恐怖が襲いかかってきた。
初めてこの旅の恐ろしさを感じてしまい、震えた。
合言葉の「なんとかなる」は通用するんだろうか。



目を覚ますと知らない部屋。
どこだここ?
ロシアだ。

ウラジオストクの空は雨模様。
暗い空の下、街には霧がかかっている。

ロビーに行ってWi-Fiをつないだ。
キーのついてないWi-Fiは無料なのかな。ちょっとビビりながらも接続してブログを更新した。

よっしゃーー!待ちに待った朝飯!
めちゃんこハングリー!
バイキングの朝食だー!
ゆで卵、美味しい!
ソーセージ、美味しい!
あとはなんか知らん料理!
コーヒー美味しい!
オレンジジュース最高!
パンが異常に美味い!
コーンミール美味しくない!
photo:01


でも腹が減りすぎてて逆にあんまり入らないんだよな。
とにかく食えるだけ食って、レストランを出るときこっそりパンを3つくすねた。


さて、シベリア鉄道の中はシャワーがないというのは有名な話。
3泊4日も乗りっぱなしなのにシャワーがない。
なめてんのか?
いや、旅ですからね。
我慢しますよ。
しっかり体を洗いまくってホテルを出た。


ウラジオストクはインフラ整備が行き届いていない。
というか日本がきれいすぎなのか?
未舗装の道路に雨が溜まり、サンダル履きの足は一瞬でドロドロになった。
ギターケースもドロドロに。
いいね。旅っぽくなってきたよ。


駅前に戻ってきた。たくさんの人々が歩いている。
今まで日本を回ってる時、
今日は雨だし、いっかな~、
とか、
今日はちょっと疲れてるからいいか~、
なんて歌うのをさぼることがよくあった。己に克つのはとても難しいこと。いっつも負けていたな。
そして今、ウラジオストクの駅前で俺はビビっている。
初めての海外。しかもよくわからないロシア。
果たして俺はこの駅前で歌っていいのか?
歌う?
何を?
もち日本の歌ですけど?
そんなんロシアで歌うの?
あぁ歌いますとも。
迷惑がられるよ?
かもしれませんよね………

心の中で己との格闘。怖い。
意を決して駅前の歩道に座ったものの、なかなか決心がつかず、ギターを取り出せないまま時間だけが過ぎていく。
すると、なんか汚いおばさんが横に座った。
どうやらこの歩道。コジキたちの定位置らしく、汚いおっさんとおばさんが手を差し出した状態でポツポツと立っている。
メッセージを書いた紙を手に持ってずっと座ってるおばさんもいる。あれなんだろ?

通り過ぎる人々が、コジキたちを見るのと同じ目で俺を見ていく。
おいおい、これでいいのか俺?
これでやっていくんだろ?
ビビっててどうすんだよ。
「今日はいいや」は即、死に直結だぞ?

どうにでもなれ!!!!






3間後。











ギターケースの中には数えきれない紙幣と貨幣。



音楽は……


信じられないほど偉大。


もちろん話しかけてきてくれる人々の言葉は一切わからない。

そんな困っているところに、天使が舞い降りる。

おっさん
「ピロシキピロシキマトリョーシカ。」

文武
「あー……わかんねー……」

天使
「ピロシキピロシキボルシチ。」

そこにやってきたのは英語の出来るロシア人。
しかもめちゃんこ可愛い!
音楽をやってるようで、話が盛り上がり、すっかり仲良くなった。

彼女はスヴィアタ。
モスクワから親戚に会いにウラジオストクに来てるところだという。

スヴィアタ
「フミ、 write Russia song?If you want」

マジでー!
各国でそれぞれの国の曲を覚えたいと思ってたんだけど、いきなりかよ!

スヴィアタが書いてくれた曲は、彼女の祖母がよく歌ってくれたというロシアのとてもとても古い歌。
スヴィアタが歌ってくれた。


なんて美しい曲なんだ。
日本にはないメロディ。叙情。

歌詞を書いてくれたんだが、キリル文字なんで読み方もわからない。
でもなんとしてでも、辞書で調べてでもこの曲は歌えるようになりたい。

photo:02



スヴィアタ
「ヨーロッパ回ってからまたモスクワに戻ってきて。会いたいよ。」

俺も会いたい。
旅の孤独が恋を求めているのか。
いや、先に進まなければ。

Facebookの名前を交換し、彼女は去って行った。
スヴィアタ、またどっかで。



兄ちゃん
「よし!俺んち行ってウォッカ飲もうぜ!!」

さっきからずっと聴いててくれてた兄さんがそんな感じのことを言った。
この兄さん、名前をキルユ。
英語は小学生レベル。でもロシアじゃ喋れるほう。


いやー、電車の時刻まであと2時間しかないし、
乗り遅れたらシャレにならんし。
ちょっと早めに電車に乗っておきたいんだよなー。
やっぱ初めての海外だしさー。




………………




photo:03


うっひょー!
やっぱロシアならウォッカだよねー!
さすがに家に行くと電車に間に合わんなるので2人で駅前のスーパーに入ってウォッカ購入!
路上で飲むのかと思ったらキョロキョロしていて、なかなかビン開けないキルユ。
なんとロシアでは路上でウォッカを飲んだらいけないらしい。
ビールはいいけどウォッカはダメなんだと。

キルユ
「OK、フミ、come on.」

途中、ノリで加わった兄ちゃんも一緒に、3人で駅の倉庫群へ。
そしてお巡りさんに見つからないように隠れてこっそりウォッカを開ける。

いえーい!
カンパーイ!
ウッヒョー!
ぎゃぁぁぁー!!

大騒ぎしていたらいきなり倉庫のドアが開いて中から荒くれ者っぽいおじさんが出てきたのでヤバイ怒られると思ったら俺にも飲ませろ!いえーいカンパーイ!

さらにそこに運送のトラックが入ってきたかと思うと、荷下ろしの人たちが出てきて、お?日本人かこいつ?みたいな雰囲気でもうわけわからん大盛り上がり。

トラック運ちゃんのアントニオ
「フミ!Do you like ニルバーナ!?」

文武
「レイプミー!!」

いえぇぇーーー!!!
うっひょぉおぉぉー!!!
ポニョポニョー!!

ウォッカをイッキ!
喉が焼ける!
キルユに渡されたオレンジにかぶりつく!
これがロシアンスタイル!
美味い!

photo:04




そんな意味不明な大騒ぎも、いつまでもしてるわけにはいかない。
みんなそれぞれの仕事へ。
キルユだけ俺を送りに鉄道駅へ。

けっこう複雑な駅構内。
しかしキルユが全部ロシア語で駅員さんに聞いてくれるので迷うことなくプラットホームに着いた。
ホームにはすでに電車が止まっていて、見送りの人々がそれぞれの窓に手を降っている。
ロシアは北極に近いせいかとても日が長く、22時半になってようやく夜の闇が訪れようとしていた。


文武
「キルユ! I miss you. スパシーバ!スパシーバ!」

キルユ
「フミ!ユージャポニーズフレンド!」


電車は走り出す。

シベリア鉄道の始まりだ。

22時半の夕焼け

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7月4日 水曜日

広大な原野のただ中を走り抜ける電車。
空に続く草原の地平線。
ここはシベリア鉄道の中。


それにしても、

狭い……。
狭すぎる………

photo:02



シベリア鉄道の3等寝台にはプライバシーなどかけらもない。
膝を突き合わせる近さでおばさんと娘さんが座っている。
怪訝そうな目でチラチラ見てくる娘さん。
なんかヒソヒソ話してるけど聞こえてるけどね!
聞こえてるけどわかんないけどね!

俺は二段ベッドの下段なんだけど、下段はみんなの共有ベンチとしても使うので、それぞれがベッドに戻らないと俺は横になれない。
しかも上段にのぼるはしごがないのでみんな下段のベッドを踏み台にして新体操みたいな動きで上によじ登っている。

ちなみに電車内の設備としては、

★トイレ有り(無料、臭い)
★お湯有り(無料)
★喫煙スペース有り
★シャワーなし
★洗面所なし(トイレの水道で洗え)
★電源有り
★軽食・飲み物の販売有り
★プライバシーなし
★ついでに金もなし


そんな不思議な状況の中、なんだ?このアジア人は?みたいな感じで空気のごとく誰も話しかけてこないので、俺も空気に徹していたんだけど、1人の可愛い女の子が話しかけてきてから一気に壁が決壊。みんな気になってたんだよな。

アルチョン
「フゥミ!ピー!ピー!」

パシャ
「シガリョータ!」

ぬるいビール片手に言葉の教え合いからスタート。
身振り手振りで内容を伝えて、それをノートに書いてもらう。
この身振り手振りってのがもどかしくてしょうがない。
最初に話しかけてくれた可愛い女の子、アライサに可愛いいと伝えたいのだが、
「かわいい」
ってどうやって伝えればいいんだ?
プリティとかキュートとか言ってもそのレベルの英語でさえ理解してくんない。

文武
「あーかわいいかわいいねー(^_^)」

小さい子供をなでるジェスチャーをしてみるが、子供のことを言ってると思われる。あー!もう!

しかしこのもどかしさが楽しく、周りも巻きこんでビールとウォッカ飲みまくりで、俺もすっかり慣れて上半身裸で電車の中をウロウロ。
てか1人くらいアジア人いてくれよな。



photo:03



ウラジオストクよりもさらに日が沈むのが遅くなった。
22時半の夕焼けが空を真っ赤に燃やしている。
時間の感覚が狂うな。
赤く染まる荒野を走り抜ける列車。
その中には可愛い赤ちゃんを抱いたお母さん、紅茶を飲みながら本を読んでる老人、ケータイばっかいじってる若い女の子。

人間はどこにでも行けると感じた。



photo:01



ちなみにこの写真は、写真撮るからエロい格好してよとお願いしたものではない。
目のやり場に困るよね!
アライサ、かわいい!

ロシアの歌はAm~Dm~G~Eができれば大丈夫。

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7月5日 木曜日

アルチョンは軍人だ。
なのでアメリカが大嫌い。
言葉はわからないが、俺のノートに日本の国旗を書きグッドグッドと言い、次にアメリカの国旗を書いたかと思うとグシャグシャにバッテンで潰して親指を下に向けた。

レーニンもスターリンも嫌いみたいで親指を下に向ける。
するとアライサが、やめなさい、そんなことないよレーニンもスターリンも偉大な人よ、と訂正した。


ルーブルの計算がよくわからないのでゆうべアライサに数えてもらったんだが、ウラジオストクで路上をやって稼いだ金額は518ルーブルだった。
1300円ってところだな。
うーん、微妙。
食いつなぐくらいは出来る金額だが、これからヨーロッパでフェリーや電車に乗って動くことを考えたらなんとも心もとない金額だ。
まぁ最初の路上だったからな。
0円よりはマシだ。

なので、極力節約して過ごすために今のところ一日一食でなんとか乗り切っている。
出会った人にパンやハムをもらった時は、日本から持ってきたラーメンはおあずけ。
カップラーメンを1つと袋入りのチキンラーメンとサッポロ1番を12個持ってきており、袋入りのやつはカップラーメンの容器で食べるって寸法。
てかチキンラーメンはいいんだけど、サッポロ1番は鍋で調理しないといけないよね!
アホゥだよね(^-^)/
まぁ食えんことはないだろう。
水はウラジオストクの港で1リットルのペットボトルに補給したやつをちびりちびりと飲んでいる。なくなったらお湯を飲めばいい。

いい加減腹が空きすぎて空腹が慢性的になっているので、もはやどんな状態が空腹状態なのかってのがよくわからないという面白ゾーンに突入している。
お遍路の時でもこんなのなかったなぁ。

いつ金がなくなるかわからない。
節約するに越したことはない。





それにしても………


ぅぅぅぁぁぁぁああああ暑いぃぃぃぃーーーーーーー!!!!!!!

もうほんと灼熱地獄!!!
汗が吹き出して止まらねー。
上半身裸でベッドに寝転がって、崇史から餞別でもらった扇子をパタパタパタパタ。
電車の中はうんざりムード。
みんな退屈そうだ。
あー、さすがに俺も退屈。




そんな退屈な電車なので、たまの停車駅ではみんな外に降りて体をのばす。
田舎の町ののどかな駅。
どこまでものびるレール。

photo:03



するとアライサがなにやら若者の集団を連れてきた。

アライサ
「フミ!イボンスク!」

兄ちゃん
「コンニチハ。アナタニホンゴワタシワカリマス。」

うおー!!
めちゃくちゃな日本語だけど話せるロシア人ゲット!!
大学生の兄ちゃんたちで、日本語を勉強しており、これから電車に乗るそうだ。


彼らの出現により、電車の中での俺の知名度がヤバイことになる。
日本から来てるギター弾きがいるみたいな噂が駆け巡り、色んな人がやってきて声をかけてくる。
そしてあちこちの部屋をギター片手に巡業。
おかげさまで飯にありつく。


アレクサンダー
「フミ、コノオンナノヒト、ヨンデマスカラ。」

ミーシャ
「フミ、ニホンノウタウタイマス。」

しまいには車掌さんまで加わって大合唱。みんなの手にはもちろんウォッカ。
ばちあたりもんが異常なウケをみせる。



言葉が通じなくて話せなかった鬱憤が一気に解放され、色んな話題で盛り上がった。

セルゲイ
「サハリン、ワカリマスカ?」

文武
「わかります。樺太といいます。」

セルゲイ
「ハイ、ワカリマス。ロシアノシマ。」

文武
「そうだけど、そうだけど、日本は日本のものだと思ってます。」

セルゲイ
「ハイ、ワカリマス。ソレハニホンガワルイコトイイマス。」

文武
「ロシアでは、日本が悪いと言うけど、日本ではロシアが悪いと言います。」

セルゲイ
「アーアー、ハイ。ワカリマス。デスカラ、ニホントケンカ、イヤデス。」


みんな優しい。
こんなデリケートな話、ヤバイかなと思ったけどみんな冷静で友好的だ。
他にも、ロシアには色んな民族がいるとか、ロシアの家庭料理の話とか、色んな話をしたはずなんだけどウォッカが効きすぎてあんまり覚えてない(´Д` )



列車中を動き回ったせいで、俺が乗ってる3等車がいかに貧乏人たちの車両かがわかった。
だって前のほうの2等車、

クーラーきいてんだもんーーーーーーー!!!!!!!

めちゃ綺麗だし。
乗ってる人、みんな上品そうだし。
いやー、3等車、ひどいわ。マジでサウナみたいに暑いし、臭いし。
野蛮そうな人が多いし。
女の人にはオススメできないな。



怖そうなおっさんに腕を掴まれたりしながらも、アライサが助けてくれ、なんとか自分の席に戻ってきた。
信じられんくらい暑くて臭いけど、2日間もいたらとても落ち着く空間になっている。


アライサ
「フミ、ニャムニャム。」

photo:01



そう言ってお菓子をくれるアライサ。物を食べる擬音語、日本ではモグモグだけどロシアではニャムニャムと言うみたい。
これをアライサが言うと可愛くて仕方が無い。
アルチョンもパシャも、無口なおばさんも、ウォッカで疲れた俺を周りのおっさんたちから守ってくれる。

photo:02



窓の外の風景は相変わらず牧歌的。夜の8時だというのに鮮やかな緑と白樺の幹の清冽さが、目を見張るほどに美しい。
あの草原の向こうには何があるのかな。
あの小さな村ではどんな生活が営まれているのかな。



明日の夕方、イルクーツクに着く。

バイカル湖が見えてきた

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7月6 金曜日

夜中の2時。
慌ただしい物音で目を覚ます。
アライサたちが荷物をまとめていた。
もうすぐチタの街に着く。
アライサ、アルチョン、パシャ、そして優しいおじさん、
6人部屋の中の4人がここで列車を降りる。

これだけ長い時間、狭い空間の中で寝食をともにしていると不思議な連帯意識が生まれる。
6人部屋のメンバーが家族のように、そして1つの車両が町のような雰囲気となる。
4人が降りたらまた新しい人が乗ってくる。変な人じゃなきゃいいけどなぁ………

アライサ
「ピロシキピロシキマトリョーシカ。ハラショー。(ハラショーってのは本当に言ってる)」

そう言って俺のノートに何やらメッセージを書いてくれた。
みんなに回してそれぞれが名前を書いてくれた。

アライサ、ちょっと好きだったな。
たぶん彼女も俺のこと悪くは思ってないはず。
でも別れは別れ。
みな荷物を抱えておりて行く。
俺も見送りをしようと後について行き、電車を降りた。
夜中のプラットホームにはたくさんの人々がお出迎えに来ている。


文武
「アルチョン、体に気をつけて!」

アルチョン
「フミ、ハラショー。」

文武
「パシャ!飲み過ぎ注意だよ。」

パシャ
「フミ、フレンド。イボーニャ!」

さぁ、アライサと感動的な抱擁を………





イケメンな男と抱き合ってさっさと帰って行くアライサ。



………いいもんね!別にいいもんね!!


はぁあ、寝よ。


真夜中のシベリア。
原野をこうこうと照らす月。
夜霧が川を包み、列車は走って行く。
寝静まった車内。
詩を書かずにはいられない、幻想の夜。
一編、書き終えて眠りについた。

穏やかな眠り。


のはずだったのが、このあと結構怖い出来事に見舞われた。



ベッドに何かが激しく座った衝撃で目を覚ました。
そこには、昼間俺の腕を力まかせに掴んで横に座らせた乱暴なおじさんがいた。

なにやらまくしたてている。
もう1人アジア系の顔の男もいてそいつが片言の英語を喋ってくる。
向こうでビールを飲もう、と言う。
時計を見るとまだ朝の5時。
みんな寝静まっている時間。
やべーチョー怖い。

「ノー、I want sleep 」

眠りたいからごめん、と断るが笑いながらしつこく腕を掴んでくる。
屈強なロシア人の握力には有無を言わせぬものがある。
朝の5時、乱暴で下品なロシア人とアジア人。ゲイじゃないのか?パスポートを奪われるんじゃないのか?という不吉な予感を連想させるは充分すぎるシチュエーション。

やばいどうしようどうしよう!
と思っていると、横のベッドに寝ているいつもはムスっとしている無愛想なおばさんが助けに入ってくれた。

あんたたち何時だと思ってんの?
眠りたいって言ってるでしょ!
かわいそうでしょうが!

たぶんそんなようなことを言ってくれたんだと思う。
彼らはすごすごと帰って行った。

文武
「スパシーバ。」

おばさん
「フン、パジャールスタ。」

おばさんは横になったままそう言った。
怖かった。ドキドキしてしまって目が冴える。
また来るんじゃないかと思うと緊張して眠れなかった。



朝、肩を叩かれて目を覚ますと、おばさんがパンとローストビーフとトマトを切ってご飯を作ってくれていた。温かい紅茶まで。


アライサたちが降りて空いたベッドには新しい人たちが入っている。最初からのファミリーはママだけ。何かと気にかけ、面倒をみてくれる。

無愛想だけど優しいママ。太っちょで愛らしい、お母さんって感じの雰囲気に心が安らぐ。ロシアのママはみんな料理が上手らしく、ピロシキやボルシチはお店のものではなくママが作るものが1番美味しいんだって。

やっぱり男はお母さんが大好き。


今日も色んな席の人たちにつかまってウォッカを飲んで歩く。
陽気な人、シャイな人、無愛想な人、
人間の性格なんてどこの国でも一緒。

photo:01



窓の外にはバイカル湖が見えてきた。
余裕で水平線。
そりゃそうだ。
日本の本州くらいの広さの湖だもんな。
ロシア人はみなロシアの風景、自然を愛している。
みんなが口を揃えて美しいだろ?と自慢してくる。

「ダー、ハラショー!」

と言うと何やら鮎みたいな魚の燻製を進めてきた。
イルクーツクにはオーモリという魚がいて、それが最高に美味いんだよとみんなが言っていたんだが、そう、これがオーモリ。美味い!


ウォッカを飲んだり歌を歌ったりして盛り上がっていたら、ママが呼びに来た。
もうすぐイルクーツクだから準備しなさいって。

4日間散らかした荷物をまとめ、やっとイリクーツクの駅に列車が入る。
たくさんの人が列車を降りて見送ってくれた。
手紙やチョコレートをたくさん持たせてくれる。
ロシアの軍人さんから兵隊帽子までもらった。
みんなありがとう。スパシーバって何回言ったかな。

photo:02



別れを惜しんでいると、ママがついてきなさいと言った。
人ごみの中をママについて歩く。イルクーツクは都会だ。駅は大混雑。ママは俺がはぐれないよう何度も振り返り俺がちゃんとついてきてるか確認しながら歩いてくれる。
駅前に出ると、そこにはママの息子さんらしきお兄さんがいて、なんと車でホテルまで送って行ってくれると言う。
やったー!
イルクーツクはとても危険な街らしく、この鉄道駅からホテルまで歩く2kmの間に強盗被害に遭う人が多いって話を旅行会社からもロシア人からも聞いていたので少し怖かったんだよな。

これがアンガラの川、これが1番古い教会、そんなふうに街の案内をしてもらいながらホテルに着いた。

ママ、本当にありがとう。
いつもムスっとしていたママが最後に照れ臭そうに笑った。
泣きそうになりながら車を見送った。あー、ママの作るピロシキとボルシチが食べたかった。きっともう二度と会えないんだろうな。


日本人のみんなにお願いがあります。
もし日本で外国人を見つけたら優しくしてあげて下さい。
日本語でいいから挨拶をしてあげて下さい。
1人でいたら話しかけてあげて下さい。
日本の食べ物をご馳走してあげて下さい。
少し強引でもいいからお酒に誘ってあげて下さい。
何かお礼の物をもらったらその倍はお返しして下さい。
礼儀正しくして下さい。
決して見下さず対等な目線で接して下さい。

そうすれば、相手にも、自分にもより深い慈しみが生まれ、世の中にある悲しい出来事が少しは減るはずだから。
そう願います。



ところでさ、タバコちょうだい。

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はいどうも!!!
生きてます!!
モスクワ!!!
日記アップ行きます!!




7月7日 土曜日

イルクーツクの街は雨。
汚い水たまりが道路のあちこちにたまって、それを跳ねながら車が行き交っている。

バイカル湖に行くつもりだったけど、街から湖まで結構距離があるんだよな。バスか電車を使うんだろうが、今日からまたモスクワ行きのシベリア鉄道に乗るので時間の余裕はない。
バイカル湖は別にいいか。電車の窓からさんざん見たしな。

photo:03



とりあえずメシ!
ロシアのカップラーメン、ビッグボン!たぶんビッグボン!
それとピロシキ!初ピロピロ!スーパーで買ってきた!
いただきます!カップラーメン美味い!
ピロシキ、まじい!
キャベツの千切りしか入ってねぇ!
まぁ、スーパーの安いだからな。
あー、家庭料理食べたい。


ホテルをチェックアウトする前に近くにある教会に行ってみた。
日本にも教会はあるが、本場のものはもちろん初めて。
大きな十字架がかけられたレンガ作りの教会。
入っていいのかな……?と挙動不審になりながらドアをくぐる。


静まり返った聖堂。聖堂と言っても大きなホールではなく、洞窟のように小さな空間にたくさんのロウソクが光っている。その灯りに照らしだされる壁一面のキリストの絵。うー、すごい。
あ、あれなんだっけ?懺悔?告解?女の人が前かがみになってクッションみたいなのに顔をうずめており、その背中に神父さんが手をあてて何か唱えている。
神父さんの格好もマジな感じ。
本場って感じ!

うおー、やべー、教会は分け隔てなく誰にでも開かれているものってのは知ってるけど、信心がないのに来ていいのか?って戸惑ってしまう。

photo:01



1番奥の十字架の前にやってきた。ひときわ神聖な空気。十字架には磔にされている悲痛な顔のキリストが描かれている。
そこにはおばさんが1人いて、右手を胸に当ててうつむいたまま動かない。
祈ってる、んだろう。

祈るとはなんだろう?
キリストに願いを伝えることか?
キリストを慰めることか?
今までの悪い行いを悔いることか?
このおばさんの心の中には今、何があるのだろう。
俺も見よう見まねで右手を胸に当た。

かなり長い時間そうしていた。
するとおばさんは静かに祈りを終えると、十字架に近づいた。何するのかと思ったら、なんとおばさん、十字架に描かれているキリストの足に口づけをした。
あー、なんてこった。
目の前で起きてることが信じられない。
このキリストとはなんという存在だろう。
仏教とは明らかに違う。神仏は畏れ敬うものであって慈しむものではない。
キリストは人間の罪の象徴なのか。祈りとは謝罪なのか。
人間はそんなにも罪深いのか。
ふと恐ろしくなって教会を出た。

photo:02



息苦しいほどの神聖な空気から一転、外はこんなにも汚い。
駅に向かってたらおっさんが声をかけてきた。
なんて言ってるかわからん。
しばらく聞いてると、ようやくわかった。金持ってねーか?と言ってやがる。
ないない、ってジェスチャーしたら、クレジットカードは持ってるだろ、だって。
キリストさん、これだよ。
なんもねーよって言ったら、じゃあせめてタバコくれって。しょうがなく一本あげたらスパシーバも言わないでどっか行った。

ロシア人はタバコはもらえるもんだって思ってんな。
駅に着いたらまたおっさんが声かけてきて、

「おー、ギター弾くのかい?どこから来てる?日本かい?いやー、俺もギターが好きでさー、あ、タバコ一本いい?」

的な感じでとても自然にさも当たり前のようにタバコを欲しがる。
するとおっさん、一緒に飲もうぜ、とペットボトルの安いビールを買い、俺について来いと言う。
話しながら歩いていくとどんどん裏道に入って行き、森の方に連れていかれる。
おっと、これ大丈夫か?と多少ドキドキしながらも、そんなに悪い人にも見えないしと思っていると、あーよかった。酒は隠れて飲もうぜっていつものパターン。
いちいち怖いよ。

他にも何人かやってきて、ビールを回し飲みながら歌を歌う。ロシアのビール、なかなか美味い。
するとそこに通りかかった女の人がこっちに歩いてきた。
肌が黒ずんだ、一目でなにかしらの病気だとわかる面持ちをしている。どんな人生を送ってきたかわからないが、涙を流してながらもう一曲、もう一曲と、人差し指を立てていた。



みんなと別れ、駅でモスクワ行きの列車を探す。
これがかなり難しい。言葉も文字も一切わからない状況でたくさんあるホームの中から自分の列車、車両を探し出さないといけない。

とにかく聞きまくるのが手っ取り早いと、駅員さんに声をかけまくり、なんとかそれっぽい列車を発見。あー、よかったと女の車掌さんにチケットを見せる。すると面倒くさそうに手を振るだけで相手にしてくれない。この列車じゃないのか。


………いや、なんか嫌な予感がする。
見送りに来てる人たちに聞いてみた。チケットを見せる。
この列車だよ、急いで!あっちあっち!
マジー!
ダッシュで走って前の方の車両に飛び乗った。
あのブス野郎、この列車じゃないんだなと思って俺がベンチに座ってるの見てたくせに放ってやがったな。
乗り過ごしたって知ったこっちゃないってことか。
隣人愛って教わってんだろがてめー。



さて、また長い列車の旅だ。

シベリア鉄道の2等車

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7月8日 日曜日

シベリア鉄道の2等車はオススメしない。
そりゃあエアコンが効いてるし、4人部屋でドアはついてるし快適っちゃあ快適だけど、はっきり言って全然つまんない。

3等車では、誰もが声をかけてきてみんなで飲んで大騒ぎしてすぐに仲良くなれたのに、ここに乗ってる人たちはみんなお上品で自分と他人をキチッと線引きしている。
ほとんど話しかけてこないし、話しかけても会話が広がらない。
喫煙スペースに行けば仲良くなれるかなと思ったんだが、こっちの人、誰もタバコ吸わねー。

散らかし放題のテーブル、裸の男、ウオッカで潰れてる酔っ払いはここにはいない。
あー、なんてつまんないんだ。

photo:01





7月9日 月曜日

今日もやっぱり交流のない一日。
ロシアも中央から西の方に来ると人々はより上品になり、服装もオシャレだ。

あー、退屈だなー、と時間を持て余していると、



奇跡が起きた。



なんと、隣の部屋に日本人が乗ってきた。
しかもロシア語ペラペラ。

日本人の兄ちゃん
「あ、あの日本人ですか?」

文武
「日本人ですー!!」

彼の名前はマサフミ。
大阪出身の留学生!!
しかもめちゃ気のいいやつで、すぐ好きになった。
あー!!ありがとうーー!!!!

彼のおかげで周りのロシア人たちとコミュニケーションがはずみ、同室のおばさんがモスクワに着いてからホテルまで連れてってあげるということに。

地下鉄に乗らんといかんのが不安だったんだよーー(´Д` )

ロシア語でわからなかった言葉や、よく使う単語を快く教えてくれるマサフミ。
あー、マジありがとう………

マサ
「ロシア最高ですよ。ロシアの人ってみんなホントに優しいし、景色はめちゃくちゃ綺麗だし、ご飯も美味いし。ロシア来て平和ボケしてますもん。」

宗教の話や食べ物のこと、ロシア人の彼女のこととか、夜中まで喋っていた。

同室のロシア人のおじさんにどんな仕事してるのかきいたら、建設業をやってるみたいだった。
僕も日本で建設業やってましたと言うと、一ヶ月の給料はいくらだい?と聞いてくる。
宮崎だと20万くらいで、東京だと30万くらいですとマサに伝えてもらうと、いきなりなんか会話のトーンが低くなる。

文武
「ん……な、なんて?」

マサ
「あ、あー、たくさんもらってるねって……ロシアの3、4ヶ月分だって………」

おじさん、あきらかにブルーになってる。貧乏旅行みたいなふりしてやっぱり日本人は金持ってんだな、みたいな気まずい雰囲気が漂う。
そうか、やっぱり日本人は裕福なんだよな。

綺麗な服着て、美味しいもの食べて、お酒飲んで、
今までの日本での飽食がどれほど恵まれていたかがよくわかる。
貧しいなんて言ってちゃいけないよな。
photo:02



photo:05




7月10日 火曜日

よっしゃー!
ロシアの首都、モスクワ到着!!
うわー!都会ーーーー!!!!!
地下鉄の路線図が東京みたい!!
みんなオシャレ!!
そしてやっと観光客ってやつを発見!!
バッグパックをかついでデジカメで写真を撮ってる外国人の集団。
嬉しい!


列車の中で知り合ったおばちゃんにホテルまで連れて行ってもらう。
またこのホテルがモスクワ中心部から15kmくらい離れた郊外にあって、地下鉄を2本乗り継いで行かなきゃいけないという困難なミッション。

文字も言葉もわからんのにそんなハイレベルなこと出来ませんよ(´Д` )

複雑な駅構内。1人じゃ絶対たどりつけない。でもママが一緒だから安心。
モスクワの地下鉄ホームはまるで宮殿のような美しさ。
太い柱が並び、シャンデリアが吊り下げられ、壁や天井にはおそらく宗教画だろう、美しい絵が描かれている。

photo:04



やかましい電車に乗ること10分。
ヴィラデキノ駅に到着。
ホテルにチェックインし、外に買い物に出かけた。
久しぶりにビールが飲みたい。
ビールが飲みたいーーーー!!

スーパーマーケットを探して入ってみる。
クーラーの中にたくさんのビール。でも目当てはこれじゃない。
ロシアのスーパーにはビールのサーバーがって、その場で1リットルのペットボトルにビールをついでくれるのだ。
これを飲みたい!



が、言えない。

ドンドン常連さんが入ってきてロシア語で注文するので声をかけるタイミングがわからない。
あー、これが欲しいんだよ!
これが欲しいだけなのに………
哀れにも立ち尽くすのみ。

そしてすごすごと店を出る。
もうちょっとすいてる店を探そう。

何軒か回ったが小さいお店にはビールサーバーはない。
しょうがなくビンビールを買うことにするが、ロシアのクーラーってドアが開かないんだよな。
日本だったら勝手に開けて商品をレジに持って行って精算だけど、こっちでは先に金払ってから開けてもらうって順序なのだ。

会話しないと物が買えない(´Д` )


まぁでもなんとか買えたよ。

ビール……65ルーブル
チーズ挟んでるパン……75ルーブル

あー、苦労した………


なめんなよコノヤロー!!ってビールをあおる。


うますぎるーーーーー!!!!

あー、ビールの爽快さに生の喜びを感じる。
パンは美味しくない。
トム・ウェイツの歌の登場人物、ビッグジョーが吸っていたヴァイスロイ。マズイ(´Д` )吸えたもんじゃねえ。

今夜はゆっくり眠れそうだ。

photo:03



現在、モスクワでひと騒動中

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路上やってたらウズベキスタン人のイーガルと仲良くなった。
いい感じのダメ男。でも優しい男。
一緒にビール飲んで盛り上がって、駅まで送ってくれた。


しかし、




トイレに行くと言って俺にバッグを預けてどっか行ったきり、2時間もどってこない。
かなり酔っ払ってたらから、どこかわからんなってるんやろな。

お巡りさんに成り行きを説明するとなんだかものものしい雰囲気になり、

そのバッグを地面に置きなさい、
みんな離れて!!

みたいな感じでおおごとになる。

なんか探知機みたいなのでバッグを調べたりして人だかり。

イーガルーー!!!

どこ行ったんだー!!

photo:01




👆これ、数時間前のイーガル(´Д` )
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