お母さんへ

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5月20日 火曜日
【ニュージーランド】 オークランド
~ 【シンガポール】 シンガポール





お母さんへ




拝啓お母さん。お元気ですか?僕は元気です。お父さんも兄貴も元気ですか?犬のしんごは脱走はしていないですか?
いつもしんごが逃げるたびに心配して夕焼けの中でみんなで探しに行きました。しんごはいつも浜の岩場に鎖が絡まって動けなくなっていましたね。




今僕はニュージーランドの北部にあるオークランドという街の空港にいます。
ゆうべはこの空港の片隅で床にマットを敷き寝袋で寝ました。
お母さんやお父さんからしたら、空港の中で床で眠るなんてそんなみすぼらしい……と思うかもしれませんがこうしてバッグパックを背負った旅をしていると、快適な気温や警備員のいる治安の良さ、虫や雨風を防げる空港の中というのはそんじょそこらの安宿よりもはるかに安眠を得ることができるものです。

お母さんも山登りをしているので、過酷な状況で山小屋に泊まったりしていますよね。
それに比べれば空港なんてホテルみたいなものです。


毎日を堅実に真面目に生きるお母さんが週末に山に出かける時、寂しさもありましたが嬉しさももちろんあります。
お母さんの活発さとささやかな冒険心は今僕の中でしっかりと息づいています。









いつもお父さんに起こされるまで絶対に起きなかった僕が朝の5時半に起きたのは飛行機のためです。
オークランドからオーストラリアのメルボルンを経由してシンガポールに行きます。


昔お父さんが会社の慰安旅行かなにかでシンガポールに行きましたね。
海外なんて遠い海の向こうのことでそんなところに行けてしまうお父さんはすごいなぁと思ったおぼろげな記憶があります。

玄関の下駄箱の上に置いてあるマーライオンの置物は今も花瓶の横にありますか?
今からあのシンガポールに行くのかと思うと、時間の経過が自分の存在の確かさを示してくれるようです。








僕の今回の飛行機はLCC、ローコストキャリアーと言ってとても安い飛行機です。
普通なら7~8万円くらいするニュージーランドからシンガポールを、たったの2万7千円足らずで飛んでしまいます。

もっとも、その格安さにつられて購入してしまうのですが、別途でとても高い荷物代がかかってしまうというのが彼らのやり口ではあります。

ただそれを差し引いてもやはり格安の航空券ではありますが。


なのでまずは荷物の重量をきっちりと制限内に収めるために、朝からバッグと格闘しました。
制限重量は15kgです。それを超過するとさらに多額の追加料金が発生します。
なかなか厳しいもので1kgのオーバーでも1万円近く取られる、なんて話も聞いたりします。


あーでもないこーでもないと、バッグの中身をひっくり返して上手くまとまるように出し入れします。
まるで温泉旅館のテーブルの上に置いている木でできたパズルゲームみたいに、綺麗に容れ物に収めないといけないです。

でも僕がこういうパズルものはそれなりに得意ということはお母さんも知ってると思います。

急須の横に置いてある茶菓子を食べながらいつも1番にパズルを完成させてお母さんたちに自慢するのが好きでした。
こんなことを思い出しながら荷物を詰め込みました。


そして勇んでチェックインカウンターへ向かいました。

予約の紙を見せて荷物を重量計の上に乗せます。



17.8kg






ブフォオオ!!!!



おっといけません、受け付けのお姉さんに飲んでた水をぶちまけてしまいました。これはいけません。
子供のころにお兄ちゃんと牛乳を飲みながら笑わせあった頃を思い出しました。
お母さん、いつもカーペットを汚してすみませんでした。





「いいわ!時間がないから早く行って!!」


なんということでしょう。2.8kgもオーバーしているというのに搭乗時間が迫っているので見逃してもらえました。
お母さん、これもお母さんの躾の良さの賜物です。


言われたとおりに急いで走り、イミグレーションで2秒で出国手続きを終わらせて搭乗ゲートへとたどり着きました。

そしてチケットを見せてゲートを抜けたところでした。
お母さん、やはり美々津の駅の改札のようにキセルし放題とはいきませんね。
呼び止められました。



「おい、そのギターはなんだこのクソ野郎?」


外国というのは怖いものです。威圧的に僕の大事なギターを指差しました。

見ればわかんだろああん?!!このたくましいラガーマンめ!!

と心の中で言いながらギターでございます……と答えたところ、ギターを取り上げられました。




ひょっ!!!



「ちょ、あの、ちょ、ギターは、ちょ、さすがに勘弁していただけないでしょうか。俺ラグビーとかマジでブリリアントなスポーツだと思、」


「機内にギターなんてデケーもんが持ち込めるわけねぇだろ?メルボルンまで別荷物で送るから向こうで受け取れよ。ハバナイストリップ。」



慌てて書類を書いてくれ、ギターを壊れもので預かってくれました。
ラガーマンは優しいです。

ちなみにこれらは没収されましたが。

photo:01













飛行機は20日間過ごしたニュージーランドを飛び立ち、海上へと出ました。
オセアニア地域ともこれでお別れです。
シマンチュというやつは優しい素敵な人と相場が決まっていますが、ポリネシアの島の民たちもやはり例外なく、というか今まででもトップレベルに素敵な人種でした。
あのマオリの人々の屈託のない笑顔にこそ、マオリが白人世界で共存できている理由があるのではないかと思えます。
愛すべき人々です。










飛行機はあっという間にオーストラリアのメルボルンに着きました。
ここはただの経由地なので飛行機を乗り換えるだけです。なので荷物を受け取る必要もありません。

しかしさっき預けたギターは別です。メルボルンでピックアップしろよと言われていますので、またここでギターを預けなおさなくてはいけません。

そして荷物を受け取るためには一度入国イミグレーションを通過しなければいけないのです。

photo:02





面倒くさがりな僕ですが、ギターのためならばやらないわけにはいきません。

入国カードを記入して急いでイミグレーションに向かうと、そこには恐ろしいほどの長蛇の列が出来ており、入国カウンターが人ごみのはるか向こうに見えました。


おとなしく列の最後尾に並んではみたものの、次の飛行機まであと50分しかありません。

早くしろこのカンガルー!!と思いながらソワソワソワソワ並んでいましたが、一向に、一向に前に進まず、フライトの時間まで30分となってしまいました。



こりゃダメだ!!と猛ダッシュです。
空港の中を猛ダッシュ。


そしてトランスファーカウンターに行き、ジェットスターの職員さんをふんづかまえてこの次第を説明しました。

例外的なことだったのでなかなか理解してもらえなかったのですが、ようやくわかってもらえたようで、トランシーバーで色んなところに確認を取ってくれました。

時間はまったくありません。
しかしオークランドの職員さんはメルボルンで受け取れと言っていました。

段取りは出来ているはずです。世界を飛び回る航空会社なのですから、これくらい当たり前でしょう。


でもおばさんの口から出たのは、驚きの言葉でした。


「今、どこにあるかわからない。」



なんということでしょう。ウンコが漏れたみたいです。
小学校の帰り道を思い出しました。


ウンコを漏らしながらどういうことか問いただしても、今はわからない、とにかくやれるだけやってみる、今日は無理だとしても明日の飛行機でシンガポールに送るから心配するなと言うんです。ていうか早く飛行機乗れこのウンコマンめ、と言ってきます。


僕にとってギターがどれほどのものか、お母さんならよくわかると思います。
晩ご飯の時にいつもジャカジャカ弾いていて早く食べなさい!!と怒られていましたよね。

そんな大事なギターなのに、どうとりあっても答えは変わりません。

明日、明日送る、それだけです。


仕方なく飛行機に乗りました。
飛行機がガタガタとよく揺れて不安の影はいっそう心に影を落としていました。

photo:03













シンガポールでもギターは見つかりませんでした。

そして荷物受け取り場で預けていたキャリーバッグをピックアップしたのですが、乱暴に扱われたのでしょう、土台のキャリーがぶち壊れて金具がぶら下がった状態になっており、1人では立つことが出来なくなっていました。

photo:04




お母さん、ギターがなくなり、キャリーバッグが壊され、おまけにナイフもシャンプーも没収されて、なんですかこれは?
シンガポールに着いたはいいもののズタボロです。アジア初っ端から無駄にトラブルまみれです。



とにかく黙ってるわけにはいかないのでインフォメーションに訴えました。

驚きました、スタッフが全員中国人なのです。いや、周りを歩いている人すべてが中国人と東南アジア人なのです。


そうここはもうアジアの一角だったのです。
僕と同じアジア人の顔をした人たちが暮らすエリアに突入したのです。
2年近く欧米人やラテンアメリカなどの人種の中で暮らしていたので、アジア人しかしないという状況がとても違和感がありました。

でも戦わないといけないことには変わりないです。



「ちゅー、ちょっちー、ちょーちゅー、」


何を言っているのでしょう、このシンガポール人は。
そんなに焼酎が好きなのですか?

と思って僕もだよと答えかけたのですが、どうやら彼は英語を喋っているようです。


しかし中国語と英語が混ざりまくっており、人生初の言語に聞こえてしまうのです。
それがとても東洋的で、この時に初めてアジアに来たことを実感したんです。

シンガポールとは一体どんな国なのだろう!!僕はついにアジアに着いた!!









バゲッジフロントでは簡単な書類を書いただけで終わりました。
なかなか状況を飲み込んでもらえず、キャリーバッグが壊れた、壊れたんでしょ?ギターがない?だからバッグが壊れたんでしょ?いやギターもないんです!!ギターどこですか!!というもどかしいやり取りを謎の英語でなんとかやり取りし、2枚の書類を作ってもらいました。

バッグに関しては2~3日中に業者が金丸さんの元にバッグを受け取りに行き、修理の段取りをさせてもらいます、とのこと。

ギターに関してはどこにあるかわからないのでまた連絡しますとのこと。

そんなあやふやな対応のまま空港ロビーに放り出されました。



床には立ち上がらなくて横たわったままの壊れたキャリーバッグ。そしていつも右手に持っているはずのギターは影も形もなく、手持ち無沙汰ですごい不安に襲われます。

シンガポールという未知の国の空港で、中国人、マレーシア人、インド人が入り混じった人ごみの中にポツリと立ち尽くしました。

どうすればいいのか混乱しました。
ギターがない。今頃まだメルボルンの空港に放置されているのか、それとも誰かが持って行ってしまってもはや行方は風のみぞ知る状況なのか………

犬のしんごの迷子なら鳴き声でどこにいるかわかりますが、こんな海を越えた迷子なんて絶望という文字しか頭に浮かんで来なかったです。










とにかく、今はシンガポールです。
やるべきことをやらないといけません。


Wi-Fiに繋いでメールのチェックをしました。
そうです、先日オーストラリアで会った世界一周中のカメラガール、アンナちゃんと今日このシンガポールで待ち合わせをする予定なのです。

アンナちゃんも着いたばかりのシンガポールで1人で不安でいることでしょう。

高校生のころに僕が家に女の子を連れて来るたびにお母さんに小言を言われていましたね。
頼むから子供は作らないでね、と言われていたことを思い出します。
ひどい高校生時代でした。

今ではあの頃よりもう少しジェントルマンになれていると思います。


なので早く落ち合って僕のマーをライオンにしなきゃ!
ジェントルにマーをライオンにしなきゃ!





マーをライオンにするために待ち合わせ場所を指定するメールを前もってアンナちゃんに送っていたのですが、ちゃんと確認してもらえたかな。

ブルジュハイファという大きなランドマークのホテルがシンガポールにあるので、そこで会おうと伝えていました。
あそこなら誰でもわかるはずなので迷うことはないでしょう。

ギター紛失の手続きで遅くなってしまったので、心配でした。



心配…………でした……



あれ?



ブルジュハイファ………?








まさかのドバイ指定。



なんということでしょう。
ブルジュハイファはシンガポールではなくてドバイにあるホテルの名前でした。

ドバイで会おうね?何をほざいてるんだこのホーケイは?


と困惑してるアンナちゃんが目に浮かびました。
僕のおっちょこちょいはまだ治っていないみたいです。



マジやっべェと思って急いでメールを確認しました。






その1時間後。








photo:05



photo:06




お母さん、僕はブルジュハイファ、じゃなくてマリーナベイサンズの屋上で空中プールからシンガポールの街を見渡しました。

とてつもない近未来の街が広がっていました。
想像を絶する人工物です。人間はここまでのものを作り上げてしまうのですね。
ボンベルタと山形屋を超えてきました。

photo:07



photo:08





屋上庭園にはとある方の紹介で入らせていただきました。

シンガポールにはたくさんの日本人が住んでおり、各方面の様々な方からご連絡をもらっていたんです。

こちらにいらした際には是非お会いしましょうと言っていただいておりました。

そしてシンガポールに着いてわずか2時間後に、僕はシンガポールの頂点にいました。

お母さん、この街はなんでしょう。
こんな場所がこの世界に存在するのかと目を疑うほどの光景です。

バビロンの塔は人間の傲慢さと神への冒涜の象徴ですが、この街もまたそのような匂いを感じずにはいられない人智を超えたスケールなのです。

もちろん、作り上げたのは紛れもなく人間の手ですが。


宮崎の、美々津の、あの穏やかな空と潮騒、菜の花畑、線路と汽笛、

これが同じ地球上に存在するのですね。

お母さんに見てもらいたい。いや、見ないほうがいいのかもしれません。

この街には、きっと何かを壊してしまうほどの力があるように思いました。

photo:09
















photo:10



アンナちゃんとは無事会うことができました。
そして一緒に全てが計算され尽くしたマリーナの桟橋を歩きました。

photo:11




光があらゆるところで瞬き、影はより強い影になりますが、その影さえも計算して作られたもののように見えます。

人々はその異様なまでに作り上げられた美しさというか圧倒的な存在に酔いしれ、誰もが夢とうつつの狭間を漂うように光を眺めていました。


photo:13




アジアとはどういうところなのでしょう。

人間の本能と欲が渦巻き、その熱による蒸気が夜空へと立ち昇っていくようです。


仏教の哲学や、貧しさへの恐れや、臭ってきそうなほどの人間の業が充満しているような……アジアとはそんな場所だと想像していました。

ひとつ言えるのは、この凄まじい近未来都市の中にいても、ここは白人世界とは完全にかけ離れた独特の空気に満ちているということです。


生暖かい夜風がねっとりと肌に絡みつき、これからのアジア旅を濃厚なものにすることを予感させてくれました。

photo:14





その先に待ち受けているのが、あの線路と汽笛、空と潮騒、故郷の宮崎です。

あともう少しです。
心配かけてごめん。
いつも応援してくれてありがとう。

きっと無事に帰るから、帰った夜にはすき焼きと、いつも日曜日のお昼に作ってくれたあの玉ねぎと豚バラのヤキメシを作ってください。


お母さん、定年退職おめでとう。長い間お疲れ様。
そして誕生日も、母の日も、ろくにお祝いしないでごめんね。
帰ったら一緒に山に登りましょう。


子供の頃から下駄箱の上にあったマーライオンの置物。
たくさんの観光客に囲まれていました。
いつかお父さんもここに立ったんですよね。

photo:12





僕は元気です。









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5月21日 水曜日
【シンガポール】 シンガポール





確かアメリカを回っているあたりの頃に1通のメールをもらった。

シンガポールに在住の女性で、もしシンガポールに来た際には連絡を下さいということだった。


こうして顔も何もわからない方とメールのやり取りをすることはよくあるんだけど、アメリカを回っていた頃にアジアのシンガポールのことなんて遥か先のことで何の約束も出来ないままで月日は流れた。



そして先日久しぶりにこのエミさんからメールが来た。


もうそろそろシンガポールですよね?ウチに泊まっていいですよ、との嬉しいお誘いだった。

アメリカから始まったメル友さんと1年越しの出会いなんて面白いものだし、シンガポールはアジアの中でも飛び抜けて物価の高いところなのでホテル代を浮かすことが出来るのはとても有難いことだった。


信頼と実績のイクゾー情報では空港で快適に泊まることができるという話だったが、お宅に泊まれるに越したことはない。


お言葉に甘えますとメールを返し、そして今、エミさんの家で目を覚ました。





photo:01




「金丸さん、おはようございますー、アンナちゃんもおはようー。」



シンガポールにある日系企業で働いているエミさん。
アンナちゃんも是非泊まってくださいと言ってくださり、ゆうべは朝の4時までコンドミニアムの中庭のプールサイドで飲みながらお話をした。

シンガポールに着いてゆうべからたくさんの方とお会いし、そしてまだたくさんの方とお会いする約束をしている。
全員との約束は果たせないかもしれないが、時間の許す限りお会いし、シンガポールでの生活ってやつを聞かせてもらいたい。








あと、そう、このシンガポールでもう1人、どうしても会いたい人がいる。

どうしてもこの人には会いたい。





その人とのメールのやり取りを一部ご紹介。







「金丸さん、今どこですか?」



「今マリーナベイサンズの屋上のプールだよ。すごいよ。」



「なんすかそれ!!?………その情報ツライっす………」



「そんで知り合いのとこに泊めてもらえることになってるよ。そっちはどこ?」



「チャンギです………」



「ウケる(´Д` )」









さてこのメールの相手は誰でしょう。

僕が最近で1番好きな人です。
あ、チャンギってのはシンガポールの空港の名前です。チャンギ国際空港。


そう、現在、チャンギの主といえばあの男…………









photo:02



シンガポールといえば真っ先に思い浮かぶのがマーライオン。
そして次が罰金大国ということ。

地面に唾を吐いたらいくら、タバコをポイ捨てしたらいくら、などなど、とてつもなく厳しい規則があるということだが、確かにこの果てしなく整備されつくした近未来都市にはゴミひとつ落ちていないし、ともすれば地べたに座るなんてラフな行為すらはばかられる。

街のあらゆるところに監視カメラが備えつけられているし、もし警察にお世話になるようなことがあったら2度目はない、ということだ。

例えば万引きをして捕まって前科がつけばそれは生涯シンガポールで職に就けないということを意味し、16歳の女の子がマリファナを吸って死刑になったという話もあるそう。




アジアといえば本能と欲望が渦巻くカオスの代名詞。
規則なんてあってないようなもので、その自由なまどろむを空気を求めて世界中のヒッピーたちが集まるバッグパッカーの聖地。


しかしこのシンガポールだけはその自由でルーズなアジア人たちを強靭な規則で縛りつけ、世界トップレベルの経済大国という位置を保たせているようだ。




喋る言葉は英語。
人種の入り混じり方。
ひとつの国にひとつの街しかないという小ささ。
アジアにあってまるでアジアでないその不思議な雰囲気。
謎しかない。

これから12日間でどれだけその謎を解き明かせるか。







しかし…………







俺がその国の懐を覗くための武器であるギター。

そのギターは未だ行方不明のまま………






アンナちゃんやエミさんといるのは嬉しいんだけど、ずっと気分が浮かない。

メルボルンの空港職員は今日の便でシンガポールに送るからと言ってはいたけど、本当かなぁ………



「金丸さん、空港に行く前にまず電話して確認しましょう。私に話させてください。こういうのは任せてください。現地の人間の性格は理解していますから。」


エミさんがそう言ってくれる。
日系企業で働いているエミさんはクレーム対応の仕事をする時もあるそう。
欧米人から中国人からインド人まであらゆる人種を相手にしてきてるので、クレームの扱い方もつけ方もプロ中のプロってわけだ。



「ハロー、ロストバゲージでギターがなくなったんですがまだシンガポールには着いていませんか?まだ着いていない?どうなってるんですか?とても大事なものなんです!!早く調べてください!!」


エミさんのツボを突いた的確な訴えで強めの姿勢を見せていく。

相手が言うには情報が入り次第連絡させてもらいます、とのこと。



「お願いしますよ!いつでも、本当に何時でもいいので早く連絡してください!!あともうひとつの預け荷物のバッグも壊れてるんです!!こっちはどうしてくれるんです!!」



エミさんの一歩も引かない話し方に、そ、そこまで言うと向こうも怒っちゃうじゃ………とつい腰が引けてしまう。


「金丸さん、ダメです。この人たちはキッチリ言わないと絶対に調べないです。遠慮したらダメですからね。」


ありがとうございます、エミさん。









しかし、そんなエミさんの健闘も虚しくまだギターは行方がまったくわからないとのこと。

ムクムクと黒い影が心ににじり寄る。
ここに来て初めて、まさか……という最悪のシチュエーションが頭に浮かんできた。



結構楽観視していた。

ちゃんとした航空会社だもん。
荷物がなくなるなんてあり得ない。乗せ忘れてしまうことはあるかもしれないが、所在はキチンと把握されていて、いつ何処に動くかなんて調べればすぐにわかるもんだと………


それが、どこにあるかまったく情報がないなんて………




大丈夫ですよと言ってくれるエミさん。
また夕方に電話してみることにするが、とにかく今日はギターがないので何も出来ないことは確定した。












気を取り直してとある男にメールを送った。
今から落ち合おうと場所を指定し、近くの電車の駅に向かう。

そう、あの男。


今アジアの路上を引っかき回している、世界で1番世界一周できなさそうな旅人…………





「あー、金丸さんー、お久しぶりですー!!」







photo:03



小林イクゾー、参上。



「うわー、なんかあれから1ヶ月くらいしか経ってないのにめちゃくちゃ色んなことありましたよね。ニュージーランドどうでした?」


「よかったよ。そっちは?チャンギ空港って寝やすいの?」


「チャンギマジ最高っすよ。いつもチャンギの中を歩いたりしてます。チャンギのことなら任せてください。」




オーストラリアのシドニーで初めて会い、毎日一緒にセブンイレブンの1ドルコーヒーを飲んでいた日々が懐かしく思い出される。

なんか心なしかあの頃に比べてイクゾー君が小ざっぱりしている気がする。


髪の毛もサラサラだし顔もキチンとしている。
あの頃はもっとぬか漬けみたいになってたのに。

まぁ、あれから1ヶ月だもんな。
イクゾー君もだいぶ旅慣れしてきて体が馴染んできたのかな。









俺のブログを読んでいるエミさんなのでイクゾー君のことは知ってくれているし、アンナちゃんもランキングに参加しているブロガーだ。
ブログランキングに旋風を巻き起こしたイクゾー君のことはもちろん知っている。

自己紹介にそんなに時間もかからず、みんなでエミさんの家へと向かった。

photo:06



photo:04









「ところでどうしてチャンギなの?なんかメールで高級ホテルに泊まってるんですって言ってたじゃん。」


「そうなんですよ。でも1泊だけです。」



なにやら路上で歌ってるところで羽振りのいい男性に泊まるところはないのか、と聞かれ、ないと答えたところものすごく豪華なホテルに泊まらせてもらったんだそうだ。



「マジヤバかったんですよ。もう鍵とか普通じゃなくて。ガチャガチャって回すやつじゃなくて鍵がカードなんですよ。かざすとピッてなるんです。ヤバくないですか?」


「う、うん、それ普通だと思うよ……」




相変わらず大笑いさせてくれるイクゾー君。

ギターケースも相変わらずボロくて、オーストラリアでサンシャインコーストへヒッチハイクした時のガムテープを貼ったままのイカした姿。




「あ、そういえばギターの弦は張り替えた?1弦が切れたままだったやん。」


「そうなんですよ、ずっと1弦ないままだったんですけど、最近向上心でてきちゃって張り替えたんです。1ヶ月ぶりに1弦張ったらめっちゃ違和感あるんですよ。あれ?なんかいる……みたいな。」



イクゾー君の話にみんなで大笑い。
エミさん、お仕事が忙しくてあまりお友達と遊ぶ時間も取れないらしく、久しぶりにこんなに大勢で休日を過ごしているのがとても嬉しいと言ってくれる。



「でもマレーシアの弦、マジでクソなんですよ。お店で買うじゃないですか。普通に安くて10ドルとかするんですよ。それで店内で弦を張り替えてたら買ったそばからポキって折れるんです。はぁ?って店員さんに目の前でこれ今買ったよね?って見せたらそんなもんだよみたいなこと言うんですよ。マレーシアに絶対プロいないですよ。」








photo:05



再会を祝して晩ご飯を作ろうとみんなで買い物に出かけた。

むわりとした熱気が立ち込めるシンガポール。
住宅地の光景はアジアとは思えないほどの落ち着いた雰囲気で、綺麗な一戸建てがスマートに並んでいる。


しかしスーパーマーケットに行ってみると、ここがアジアなんだということを思いさらされる。


表にひしめく屋台街を見たときの感動ったらなかった。
たくさんのテーブルと椅子が隙間なく並べられ、人々が美味しそうな麺料理や炒め物を食べていた。

photo:07



お店の看板には無数の料理の写真が並んでおり、店内で中国人のおじさんが鍋を振っている。

欧米のオシャレさなんて欠片もないけれど、この大衆的な雑然さがたまらなく懐かしくて、たまらなくワクワクさせてくれる。

photo:08




値段もどれも4~5シンガポドル。高くて8シンガポドルってとこ。
5シンガポドルで420円くらい。
オーストラリアやニュージーランドから来た身からしたら感激して震えてくる。


ここはシンガポールなのできっとこれでも本場のアジアの屋台に比べたら落ち着いたものなんだろう。

でもこれがアジア初の俺にとっては、なんとも言えないものがこみ上げてくる。




photo:09



スーパーの中も、当たり前だけど全てアジアの食材だった。

アジア食品店は世界中どこにでもあるけれど、本場となると品揃えも値段も当たり前に素晴らしい。


そして日本の商品もとても多い。
別に日本人相手に売っているものではなく、諸外国にアメリカの製品が売ってあるように、アジアでは日本のものがとてもポピュラーなものとして親しまれているように感じる。



ああ!!
コーラが2リットルで2シンガポドル!!170円!!

きっとこれでも高いんだと思う。イクゾー君の話ではマレーシアに行くとコーラは70円くらいで買えるそうだ。


ああ………最高だ………
アジアに来たんだー………









ビールはそこそこするようで、安くて350mlの缶が170円くらい。
タバコは1000円くらいだ。


物価の高いシンガポールと言われているけど、安く収めようと思えばいくらでも節約出来そう。


ちなみに昨日空港から街の中心部へ電車で行ったんだけど2.5シンガポドルだった。170円。

そう!!これが普通!!オーストラリアとかニュージーランドみたいにバスで1700円とかしない!!





ここまではもう天国でしかないシンガポールだけど、あとは路上でどれだけ稼げるかってとこだな。

イクゾー君の話では、シンガポールでは無数の警察が目を光らせ、さらに人通りの多い場所には必ずライセンス持ちのバスカーが陣取っており、強引に演奏しようものなら俺たちのシマを荒らすな!!とケンカ腰で追っ払ってきたりと、毎日のように熾烈な争いが繰り広げられるそう。
パスポートをチェックされるたびに場所を変えなければいけないし、あがりも30~40シンガポドルってところ。
2500円くらいだ。そいつはキツい。


もっとも最近では場所選びも上手くなってきたらしく、150シンガポドルほど稼ぐ日もあるというイクゾー君。




ちなみにバスキングライセンスは観光ビザでは取ることが出来ないみたい。
完全にシンガポール人のみが対象とのこと。

しかしシンガポールには地元民バスカーがたくさんいるが、それと同じくらい外国人バスカーもいるそう。

みんな目立たないように細々とやっているんだろうな。


実際にやってきたイクゾー君が言うには、警察よりも地元民バスカーとのシマ争いのほうが厳しいらしく、彼らが警察に通報して注意されるというパターンがほとんどだそう。

地元民バスカーには障害者が多いらしく、彼らの生活支援の一環ということもあるだろう。


なんにせよ、彼らに敬意は払わないといけない。

10日間、邪魔にならないところでひっそりとやらせてもらおう。













エミさんの家に戻ると夕方になっていたので、もう1度空港に電話をかけることに。

そう、今はなによりもギター。



流暢な英語で強気に攻めてくれるエミさん。
空港職員は中国英語なので俺は何言ってるかちんぷんかんぷんだけど、シンガポールに2年住んでいるエミさんはもちろん全て理解できる。

エミさんがいてくれて本当に助かった。






のだが、やはりギターの消息は不明のままだった。

力なく電話を切るエミさん。




嘘だろ………

頼む、嘘であってくれ………




アジアが最後のステージなんだよ。
今までずっと一緒にやってきた相棒とここでお別れなんて考えたくない。

たったの5千円で買ったギターだけど、俺にとっては金では買えないギターなんだよ。


頼むよ…………
今一体どこにあるんだよ…………



キッチンではアンナちゃんとイクゾー君が楽しそうにご飯を作っている。
俺のチャーハンマジでヤバイですからとか言いながらイクゾー君が玉ねぎを切っている。

俺も混ざりたいけど、とてもそんな気になれなくて部屋にこもっていた。














ギターどうしよう。

買う金はある。

3万円くらいで買うことは出来るはず。

あとアジアだけだ。別に10万のギターを買わなくてもなんとかなるはず。

でも、最後まであいつと行きたかったのに………



30分くらいしてエミさんがまた空港に電話をしてくれた。

昨日乗ってきたメルボルンからの同じ時間の飛行機が到着しているはずだと問い詰める。

しかしその飛行機は到着が遅れているのでまだシンガポールに来ていないとのこと。




体が脱力してベッドに倒れる。
頭が混乱して、どうすればいいかわからない。

ギターどうしよう。







するとエミさんがiPhoneで何かを調べている。

シンガポールの空港ホームページに入り、飛行機の発着状況を調べているようだ。

そんなこと出来るんだな。



「………あ!メルボルンからの飛行機、もうチャンギ空港に着いてる!もう一回電話するわ!!」



ホームページサイトには確かにメルボルン発の飛行機がシンガポールに到着していると表示されていた。

すぐに電話をかけてくれるエミさん。


「メルボルンからの飛行機、もう着いてるじゃないの!!どういうこと!!すぐに確認して!!」


「あー、はいー……………………あ、ギターありますねー、取りに来られますか?配達しますか?」




















……………ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお前侘びとしてフカヒレとか持ってこいやコラアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!

俺の太極拳で内臓えぐり出すぞこの4千年の歴史め!!!!!


なめんじゃねぇぞ!!今すぐ持ってこい!!!
リムジンで持ってこい!!



「あ、あの………大変申し上げにくいのですが……お伝えしなければいけないことがあります………」


なんだ!!言ってみろこの野郎!!
北京ダックも持ってこいやあああんんん!!???


「ギターを確認いたしましたところ、ギターケースが大破しておりまして、使用不可能の状態になってしまいました………」





うん、それ元から。
それずっと使用しております。







とにかく持ってこいや!!と伝えたものの、待っている間ギター自体にダメージがないかが心配で気が気じゃない。

うんこ漏れそうになりながら待っていると、30分くらいして玄関のベルが鳴った。








photo:10



ペグが折れ曲がっちょりやる。



「大変申し訳ありません。ギターケースが深刻なダメージを受けてしまいました。こちらはカバー代金として受け取ってください。」




ペグじゃなくてそっちですか。

photo:11




うん、ケースは元からっていうか、俺これでいつも街を歩いてるんですけど(´Д` )




そして50シンガポドルを出してくる配達人。

ギターケースは元からボロボロではあったけどペグが折れ曲がってるのと1日ギター触れなかったのとでもらっておくことに。

もうバッグの修理もこれで勘弁してやるか。





とにかく…………










「やったあああああああああ!!!!!ギター返ってきたああああああああああ!!!!!」


「金丸さんやりましたね!!もう飲みましょう!!」


「フミ君、よかったね。これで路上できるね。」


「よし!!金丸さん!!もう風俗行きましょう!!」


「それは嫌。」




ドサクサに紛れてアンナちゃんのおっぱい触ろうとしたけど殴られそうなのでやっぱりやめといてイクゾー君が作った晩ご飯を持ってみんなで中庭のプールサイドへ。



「お、美味しいやん!イクゾー君、料理できるんや!!」


「任してください!何でもできる男、ウィルスイクゾーですから。」




ギターも戻ってきてやっと落ち着いた。
ずっと一緒にいたギターが手元にないだけでたまらなく不安だった。

生ぬるい夜風の中でゆっくりとビールをあおる。





「俺シンガポール出る前にマリーナベイサンズに1泊してやろうと思うんですよ。一生懸命歌って稼いでその有り金はたいてマリーナベイサンズに泊まってやるんですよ。1泊だけ。俺みたいな奴でも頑張れば泊まれる、って夢ありませんか!?」




相変わらず破天荒なことを言うイクゾー君。
オーストラリアで会った頃はまだ戸惑ってばかりで1日を生き抜くのに必死になっていたというのに、こんなにたくましくなっていることがこれまでのイクゾー君の旅の過酷さを物語っていた。


「せっかく旅するんだからまだ誰もやったことないことやりたいっすよ。例えばそうっすね、自分でロケット作って宇宙行ったら初ですよね。よし、今から工具買ってきますとか言って。」



イクゾー君の旅は今まで会ってきた旅人のものとは根本が違う。
多くの旅人が賢く未来のことを見据え、冒険をしているとはいえどこか旅ってやつを通過点としてしか捉えていない。
なので、旅をやり切ることにそこまで疑問を抱かない。

イクゾー君の旅は別に世界一周にこだわらない模索する旅だから、今のこのある程度稼げて安定してきた旅に疑問を抱き始めているようだった。
とんでもないことに飛び込んだ。しかし旅はやれる、ということがわかった。
それが物足りなくなっているようだった。



「えー、俺次なにしよっかなー。」


笑いながら空を見上げてるイクゾーがめちゃカッコ良く見えた。

そうなんだよな。俺たちなんでも出来るんだよ。
イクゾー君を見てるといかに自分や周りの旅人が見えない枠に縛られてるかを感じずにはいられないよ。

自由な男だ。






「よし、もういっそのことニューハーフになればいいじゃん。」


「なるほど、そうっすね顔面にタトゥー入れて攻めるニューハーフに……ってなんですかそれ、やっばいですよ。」


「うん、それでさらにムスリムになったらいいんだよ。そしたらサウジアラビアとか行けるよ。」


「なんすかそれ、それモハメドいく子じゃないですか。やっばいですよ。もうバスキングとかどこ行ったんだって話ですよ。」



「ムスリムになったらお祈りしなきゃいけないよ。1日5回。」


「1日5回とかせっかくブログやめたのにブログより不自由じゃないですか。ていうかなんで笑いながら言うんですか。全然真剣じゃねぇこの人。」



アンナちゃんとエミさんもイクゾー君の話に大笑い。
コンドミニアムの警備員さんにもう少し声量をおとしてねと言われてしまった。
あー、なんて面白い男だ。




「ていうかそう言う金丸さんはどうやってアジア回って行くんですか?」


「え?俺?俺は普通に回るよ。」


「うわ!!最低だ!!この人最低だ!!」




きっと普通じゃ回れない。

アジア、面白そうな幕開け。







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アジア最初の路上

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5月22日 木曜日
【シンガポール】 シンガポール





photo:03



朝、アンナちゃんとご飯を作ってみんなで食べ、テラスでタバコを吸う。

安い巻きタバコ。



「イクゾー君ー。シンガポールも相変わらずタバコ高いね。これじゃあ吸えないなぁ。」


「そうっすね、12ドルとかしますもんね。」


「ニュージーランドでも吸えなくて我慢してたのに。イクゾー君、禁煙できる?」


「無理っす。1日も無理っす。中学生の頃とかお金ないから落ち葉吸ってましたもん。」


「へー、そうなんだーって落ち葉!!??嘘つけ!!」


「嘘じゃないですよ!!公園に行って枯れた落ち葉をくしゃくしゃにして教科書を破いて巻くんです。ていうか落ち葉吸ってなかったんですか!?」


「吸うわけねぇやろ。」


「ええ!?ここ笑うとこじゃないですよ、懐かしむところですよ。静岡じゃ普通なんだけどなぁ。味はわかばとトントンです。」




静岡の不良は本当にタバコの代わりに落ち葉を吸うのかどうかは置いといて、ギターも戻ってきたので今日から路上開始です。

これまでシンガポールのありとあらゆるところで路上をしてきたイクゾー君だけど、これといったベストポジションはまだ見つかってないそう。

いつも良さそうな場所を見つけたかと思えば他のバスカーがいたり警察に怒られたりして、移動しては注意され、移動しては注意されの繰り返しでいつの間にかシンガポールの道を知り尽くしたマスターとなったそう。

今日もまた新しいところを探さないといけないです、と難しい顔をしてる。

シンガポールの路上ポイントは足で探すしかないな。

photo:04









東京23区と同じほどの大きさしかないこのシンガポールという国。

その中心部にぐじゃぐじゃー!!っと高層ビルが立ち並び、いろんなエリアごとに個性のある街があるんだそう。

例えばマリーナベイサンズがある観光のメインエリアはお台場に当たるような感じかな。

イクゾー君オススメの銀座に当たるオーチャードというエリアからシンガポール攻略を始めていくとしよう。









綺麗すぎる電車に乗って街の中心部へ。エミさんもお仕事なのでそれに合わせてみんなで出発した。

photo:05




「いやー、暑いですねー。こりゃ汗だくになるなぁ。」


「あ、フミ君、水飲んだらダメ。電車の中で水飲んだら罰金だから。」


「…………マーライオンあんなに水吐いてるくせに?」


「気をつけてね。」




怖えええ

どこまで違反かわからんわ………

photo:01



photo:06




電車の案内が4言語で表記してある。

photo:07














そんなこんなでオーチャードの駅にやってきたんだけど………


photo:02



まぁごちゃごちゃ………


電車を降りてみたものの、地下には凄まじい迷路が蟻の巣のように張り巡らされており、エスカレーターや吹き抜けやらもうわけわからん。

人もひっきりなしに行き交っており歩きにくいことこの上ない。
ここが地下なのか地上なのかもわからない。

photo:08



そして全てのお店がきらびやかでオシャレで、ラグジュアリーな装飾に輝いている。


歩いている人は中国人かインド人かマレーシア人という、お洒落とはかけ離れたイメージを持っていた人々だけれど、彼らのセンスの良さと上品な立ち振る舞いはどういうことだ。


颯爽とカッコ良く歩いていく女の子はスタイル抜群で髪の毛はキラキラに手入れされ、男性のスマートなスーツ姿はまるでモデルさんみたいだ。

シンガポール人は日本人とほとんど同じ顔をしているけど、彼らの洗練のされ方は日本の若者を超えてるんじゃないかと思えてくる。






photo:09



やっとこさ地上に上がると、そこには信じられないような近未来的ビルディングが乱立していた。


度肝を抜くようなスケールの建物、奇抜なデザインが織りなすコンクリートとガラスのアンサンブル。

直線と曲線が入り乱れ、そこには自然のものが欠片も存在していなかった。

photo:10



ルイヴィトンやプラダなどの名だたる高級ブランド店がどこまでも連なり、この街のラグジュアリー感を余すところなく演出している。

今まで訪れた世界のどの大都市よりも圧倒的な規模。
そしてゴミひとつ落ちていない地面。

こいつがシンガポールか。
そしてここがこの国の銀座、オーチャードだ。

photo:11



photo:12












イクゾー君の話ではこのオーチャード駅の地下にそれぞれのビルを繋ぐ地下道がある、とのことだったが、確かに路上向きのいい地下道はあったものの、全ての通りに綺麗に他のバスカーたちが陣取っていた。

photo:13




まぁ見事に全ての地下道に配置されており入り込むスペース皆無。

みんなマイクを使ってハーモニカを吹いたりギターを弾いたり、中にはただティッシュを配ってる人も。



そのほとんどが盲目だったり車椅子だったりとハンディキャップを持った人たちのようだ。

もちろん全員バスキングのライセンスを持っている。

こいつはバスカーというよりは、国公認の援助活動みたいなもんだ。

芸を売ってお金を落としてもらう俺たちとは完全に質が違う。
そしてかなりこっちの肩身も狭い。


うーん、こんな密度で地元バスカーたちがいるのか………
こいつはイクゾー君が手こずるのも分かるわ。

イクゾー君、最近はもうヤケになってマーライオンの前で歌ってたとか言うし。



マーライオンの前て(´Д` )

思い切りすぎやろあんな世界中から人が集まる場所で(´Д` )








そんな地下道の中に1ヶ所、先客のいない場所があった。
とにかくダメ元でやってみるかと歌ってみた。

しかし少ししたところで、目をつぶって杖を持ったおじさんが、身内であろうおばさんに寄り添われながらやってきた。


「おい、お前はライセンチュを持っちぇるのか?」


中国人の小柄なおじさん。
中国英語なので何言ってるのか聞き取れないがなんとか耳を傾ける。


「ライセンチュ持っちぇないにゃらどどっか行け。行かにゃいにゃら警察を呼ぶ。」


「おじさんが呼ぶんですか?」


「そうだ、俺が呼ぶ。消えりょ。」




取りつく島、島影もなし。


仕方なく地下道は諦めて地上で探すことに。








photo:14



暑い日差しと湿気を含んだ熱風がむわりとアスファルトの上を流れる。

首に髪がからみつき、背中を汗がしたたる。

そしてショップやモールの前を通り過ぎると、入り口から流れ出る冷房が冷んやりと気持ちいい。






シンガポールの路上事情はイクゾー君以外からも色々聞いている。

日本人のパフォーマーもたくさんいるらしくて、稼ぐ人は1日で1000シンガポールドルを超えてくるらしい。


飯は美味い、物価もそこまで高くない、女の子は可愛い、そしてビザの制約がない。


アジアに棲みついている旅人たちで、お金がなくなればシンガポールに行き、稼いでからまたタイやラオスなどの安い国に行き、またお金がなくなればシンガポールに出稼ぎ、という生活をしてる人も少なくないとのこと。

確かにそれをやってれば東南アジアではひたすらハイレベルな生活を楽しめるだろうし、女だってよりどりみどりで買い放題。

シンガポールは滞在日数がヤバくなっても、マレーシアに出れば1日でまた日数がリセットされるらしく、無限にこのループが出来るってわけだ。


まぁもちろん全員がそうじゃないんだけど、そういう話もたまに聞く。
シンガポールはアジアでマリファナを楽しみたいヒッピーバスカーたちにとって楽園のような場所なんだろうな。








photo:15



ポツポツとそこらへんにおじさんたちが座ってバイオリンを弾いたりハーモニカを吹いたりしているけど、どれも本気のパフォーマンスではない。

オーチャード駅からオーチャードストリートをハーバー方面に向けて歩いていくが、この昼間の時間帯はあまり人々は地上を歩かないみたいだ。


なんせ暑い。

汗がぼたぼた流れてシャツが体にはりつく。

みんな冷房の効いたビルの中や地下街にいるので、ここらへんでは路上は出来なさそうだな。


イクゾー君、いい場所発見できたかな。



「金丸さんっていつもこんなに歩くんですか?」


俺の演奏風景の写真を撮りたいとついてきてくれたアンナちゃんが汗だくで尋ねてくる。


「いや、もっともっと歩くよ。路上場所だけじゃなくて夜には野宿場所も探さないといけないし。もちろん荷物全部持って。」


「………私絶対ムリ……」




暑すぎてアンナちゃんが垂れパンダになりかけた頃に、ちょっと良さそうな歩道を見つけた。
ショッピングセンターの前の通路で、声も良く響く。

大通り沿いなので車の音がうるさいけど、まぁやるだけやってみよう。

騒音に負けないように声を張り上げて歌った。










photo:16



ガンガンお金が入る。



中国系、マレーシア系、インド系が入り混じるこのシンガポール。

とりわけ中国系の人たちがめちゃくちゃ笑顔でお金を入れてくれ、ガンバッテ!!とかアリガトウ!!とか日本語で声をかけてくれる。

マレーシア系のムスリムの人たちもフレンドリーだし、インド系はあまりお金は入れてくれないが気さくな会話はすぐに生まれる。


フィリピン人もたくさんいるし、インドネシア人も多い。
日本人もごくたまに立ち止まってくれる。



おおお、なんてこった。

中国人の笑顔が素敵すぎるぞ。

photo:17





今まで中国人と言ったらお金入れてくれない人種の代表選手で、俺のことを銅像のように扱って写真撮って終わりみたいな接し方しかしてこなかった。

ゾンザイだし、酷い時には日本人だからって笑ってくるやつもいた。

一部の仲のいい友達を除いて、はっきり言って中国人に良い印象はない。日本にいたころから。

そんな彼らが今日本人である俺にこんなにも優しく接してくれている。





もちろんここはシンガポールであって中国ではない。
彼らは顔は同じでもみんなシンガポール人としての国籍とアイデンティティを持って暮らしている。

しかしだとしても戦時中に日本軍はシンガポールに対してひどい侵略行為を行っているんだよな。

世界には戦争の遺恨が今だ消えない地がたくさんある。
だからこうしてアジアに入ってきて、少し萎縮してしまう部分がある。


考えすぎなのかな。
どうなんだろう。


でも今日、このシンガポールで歌った限りでは、みんなめちゃくちゃウェルカムだし、若者の中では日本という国が一種のブランドのように捉えられているようにも見えた。


おばちゃんやお爺ちゃんのニコッという笑顔が、とてつもなく沁みる。

だって日本人と同じ顔なんだもん。









警察ではなくショッピングセンターの警備員さんにここではやめてねー、と言われて場所を変え、ドビーゴートという駅の横の博物館みたいな建物の正面階段に座って路上再開。

photo:18



その後、向こうの方に他のバスカーが来て音が聞こえてきたので、もう少し離れた通路に移動。

結局今日は4ヶ所で歌い、実質3時間半の演奏だった。


なかなか騒音があるので声を振り絞ったことで喉が枯れ、ギターを押さえる指にも力がこもって指先が痛い。


シンガポール初日、気になるあがりは、



226シンガポールドル。

1万8千円てとこか。


よし、まだこれからきっといい場所を見つけられるはず。
シンガポール残り10日。
女を買うためではなく、アジアに向けてガッツリ稼ぐぞ。













ヘトヘトになって街の中を歩き、ハーバーにやってきた。

そこには目を疑うようなスケールの高層オフィスビル群がキラキラとまたたいている。

photo:19



走り去る車のテールライトや歩道を照らす照明の列、デザインの凝った街灯、

ハーバーの向こうにはあのマリーナベイサンズがコンピューターグラフィックのようにそびえ立ち、その目の前をクルーズ船が爆音を響かせながら進んでいる。船の上でライブコンサートをやっているみたいだ。

photo:20



湾の水面にキラキラとそれらの街の光がゆらめき、あらゆる色が混ざり合って不思議な感情を連れてくる。

ニュージーランドで見たような星もフィヨルドもここにはないけど、人工物もここまでくるとまた自然に負けないほどの畏敬を抱かずにはいられないな。







今日も観光客でごった返すマーライオン公園に着くと、端っこの方にイクゾー君が座って待っていた。


photo:21




「おーい、お疲れー。今日どうだった?」


「やべぇっす、めちゃいいとこ見つけちゃったっす。150シンガポドルっす。」


「すげぇ!!よし!!飯食おうぜ!!」








電車に乗ってエミさんの家の最寄り駅に行き、近くのスーパーマーケットへ。

photo:22





ローカル色たっぷりのスーパーマーケットの表には屋台通りが広がっており、たくさんの人たちでごった返していた。

スーパーで買ってきたビールを持って、ガヤガヤと賑わう屋台の席に座る。
メニューを見ると、全部持ってきて下さい!!って言いたくなるような美味しそうな中国料理の数々。

photo:23




テキトーに注文し、ビールで乾杯した。

暑い太陽の下を歩き回り、1日中歌っていた火照った体に冷たいビールが染み渡って気絶するほど美味い。

そして脂っこくて味の濃いアジアの料理をつまむと額に汗が吹き出る。

photo:24









電灯が照らし出すのは楽しげな人々。

大きな口を開けて笑っているおばさん、
走り回る子供たち、
恍惚とタバコを吸っているおじさん、
美しい肌の美女たち、




どこかで見たような懐かしさがこみ上げてくる。
遠い夏の日の、いつかの夜。


なんて怪しくて、艶かしいんだ、アジアの空気は。

満たされて心が溶けていくようだ。


最高の夜だ。







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ドラッグのような夜

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5月23日 金曜日
【シンガポール】 シンガポール





シンガポールで部屋を借りると最低でも月35万円はするそう。

ハイパー高いのでみんなルームシェアをするわけだけど、それでも6畳のワンルームが与えられて10万円は払わないといけない。

高いね。

車買ったら、なんか車を所有するライセンスみたいなやつを取らんといかんみたいで数年に1回数百万円払わないといけないみたいやし。

シンガポール怖い!!





そんなシンガポールのミニお国情報。



★首都………シンガポール
★人口………540万人
★言語………英語、マレー語、中国語、ヒンドゥー語
★独立………1965年。マレーシアから
★通貨………シンガポールドル
★レート………1シンガポールドル=82円
★世界遺産………なし




かつてこのあたりは現在のマレーシアのマラッカを中心としたマラッカ王国の領土だったが、ポルトガルの侵略により占領され、植民地支配となる。

その後にオランダやイギリスが入り込み、マレー半島の先端で海峡に面した重要な港として発展して急成長したそうだ。

植民地としての役割を最大限に活用していたみたい。

ここまでは今まで回ってきた世界各国の侵略の歴史と同じ道筋。
ずっと見てきた西欧諸国の貪欲で強力な軍事力の歩みだ。

しかしここからが違った。



イギリス領だったシンガポールを攻撃して新たな植民地としたのは、日本だ。

もうここはアジア。日本の暗い歴史から目をそらして旅することはできない。
お爺ちゃんやお婆ちゃんが話したがらなかった戦争の話にこれからきっと何度もぶち当たるはず。


日本はシンガポールを占領し、軍政を敷き、反日と疑わしき者は徹底的に虐殺し、過酷な労働を強い、今までに世界中で聞いてきた残酷な植民地の歴史と同じことをやったそう。


そんな日本による支配も長くは続かず、第二次世界大戦で日本が敗戦するとともにシンガポールから撤退。

しかしすぐにイギリスがまた植民地支配を回復。
その後独立運動の気運は高まり、マレーシア連邦としてイギリスから離脱。

この時期にマレーシア人と中国人が入り混じり独特な民族形成を作り、1965年についにマレーシアから独立してシンガポールとして歩み始めたという流れ。

まさにアジアの激動の渦中の後に出来上がった国。


ここには学校の歴史の授業でオブラートに包んで教えられたそのベールの向こう側が厳然と存在しているんだ。

これからのアジア、マジで覚悟していかないとな………


現在のシンガポールはそんな植民地として虐げられた歴史を払拭するかのごとく世界トップレベルの文明を保持している。

子供の頃から充実した教育を施しているらしく、小学校の時点で学力別にクラスが分けられているそう。
一流の教育を受けて、一流の企業に就職し、経済大国の歯車となり何不自由ない暮らしを得る、という物質的な意味でのこの世界の最上級の生活を手に入れるわけだ。




と、さらっと歴史を調べてみたけれど、アジアというものはまだまったく肌に染み込んではいない。

とにかく、今はこの国がどんなところかはまだよくわからない。


これから12日間、できる限り懐をのぞいてやるぞ。












さて喉が痛い。



あんなに極寒だったニュージーランドからいきなり真夏並みに暑いシンガポールにやってきて、エミさんのお宅はもちろんエアコンが効いている。

体は正直ってことかなぁ………




エミさんのお宅にはルームシェアメイトが2人いるんだけど、この2人がまぁ絵に描いたようなエリートで、シンガポールの経済の中枢にいるようなビジネスマンとビジネスウーマン。

品行方正、襟をピシッと整えた2人なので、イェーイブロー、ロックをロールしようぜー、みたいなノリではもちろんない。

こちらもかなり気を遣う。



最初、俺の宿泊は了解を得ていたんだけど、そこにアンナちゃんもお願いすることになり、それでギリギリなのにここでイクゾー君もってのは到底無理な話。

1泊だけはさせてもらったが、ゆうべはチャンギに戻って行ったイクゾー君。

こう暑くて毎日汗べっとべとになったら毎日シャワー浴びないときついんだが、チャンギ泊ならもちろんシャワーはない、
洗面所で頭を洗えるくらいだ。

イクゾー君だけチャンギってのは申し訳ないが、あいつもそこは分かってくれる男だ。

すまん。






てなわけで風邪で喉がかなりイガイガしているが今日も路上に行こう。

昨日のドビーゴートのオーチャード通り沿いも悪くはないが、まだまだシンガポールはたくさんの街がある。
今日は別の場所を攻めてみよう。

目標300シンガポールドル!!

声出るかな………









photo:01



アンナちゃんと朝ごはんを作ってエミさんと3人で食卓を囲み、出発。


電車に乗って最初に向かったのはラッフルズプレイスという駅。
あのシンガポールの象徴みたいなオフィスビル群のど真ん中に位置する駅で、昨日乗り換えた時に良さそうな地下通路を発見していたのだ。



路上の前にひとまず腹ごしらえ。

テキトーにぶらついていればそこらじゅうにフードコートを見つけられる。
それがマクドナルドとかケンタッキーとかのフードコートではなく、いたって大衆的な中国料理のお店が入った食堂街ってんだから毎回の食事が楽しみで仕方ない。

photo:02



photo:03







うひょおおおおおお!!!!
暑いいいいいい美味えええええええええ!!!!!!

photo:04




汗だくになって5.5シンガポドル、500円の麺を食べて、いざ目をつけていた地下道へ!!


路上開始!!





よし!!全然入らない!!

20分で撤退!!




この国はあれやね、地下道はあんまり稼げんね。
みんな忙しそうに歩いてて。

やっぱりショッピングエリアがいいのかな。








photo:05



場所変えだけど、どこにしようかなーと歩いていたら、こいつがいた。




photo:06



犬も歩けばマーライオンに当たる。





よし、話のネタにここでやってみるか。

観光客がうじゃうじゃとひしめくマーライオン公園の端の通路でギターを鳴らした。

photo:07





シンガポールって道路の看板に英語、中国語、マレーシア語、ヒンドゥー語が書いててめちゃ散らかってるんだけど、たまにそこに日本語が加わってるとこもある。


街を歩けば和民とかぼてじゅうとか日本のレストランチェーン店だらけだし、オーチャードには高島屋まであるし、ここは日本か?と錯覚してしまう。

シンガポールには日本企業がたくさんあり、その駐在さんたちがわんさか暮らしているし、駐在さんのご家族のための日本語学校まであるそうだ。


俺のお父さんもそうだったようにシンガポールは慰安旅行のメッカだし、一般の観光客もビビるくらいいるし、とにかく歩いていたら至る所から日本語が聞こえてくる。



そしてこのマーライオン公園。

もう日本人だらけ。

すげー、オーストラリアもカナダもたくさん日本人いたけど、ここまで日本文化が浸透、というか根付いているとまったく外国って気がしないな。



もちろん日本人だけじゃなく、中国本土からの団体客、インド人、マレーシア人、欧米人もわんさかいるこのマーライオン公園。


しかし観光客はお金を入れてくれない。

ひたすら大撮影会。

みんな俺に向かってiPhoneやカメラを構えて撮るだけ撮って何も言わずに去っていく。


い、いいよ……別に写真撮るなら金入れろとは言わないよ………

でも一言あってもいいんじゃないかな………


まぁこんな背景で歌ってたら撮りたい気持ちも分かるけど。








photo:08



すると向こうの方から何やらテレビカメラを抱えた撮影クルーらしき人たちがワラワラとこちらに歩いてきた。

そして俺の方を見てなにやら話している。


あー、今からここで撮影するから邪魔だからどっか行ってってパターンか。

ほらアシスタントみたいな女の人がこっちに歩いてきた。




「ユー、シング、ヒア、シング、OK。」


はい?



なにやらこのままここで歌っててくれとのこと。
音声さんに服の内側に小型マイクを装着される。

え?なにこれ?


とにかく何でもいいから歌ってくれと言われてわけもわからずギターを弾いて歌う。

カメラを向けられているので何かの撮影と思われ観光客たちの人垣が俺の周りを取り囲む。

どこの有名シンガーだ?みたいな雰囲気。





するといきなり横から陽気な兄ちゃんが踊り込んできた。


「イェーイ!!フッフウウウウウ!!!ペラペラペラペラペラペラペラペラーーー!!!!!」


俺の横に来て腰を振りながらコミカルに踊っている。
そしてひたすら謎の言語で俺にからんでくる。
謎すぎてポカーンとすることしかできない。


オノレは何者ぞ?
東南アジア的な甘い目尻のチャーミングな顔しやがって。



ていうかただのイチ風景としてじゃなくてこんなにガッツリ絡むんだったら少しは演出教えてくれ(´Д` )





俺にとっては謎の状況でしかないんだけど、どうやらこの横で踊っている甘い顔のお調子者がなかなかの有名人なのか、人だかりがすごいことになる。

しかもみんな頭にカバーをかけたムスリムの人たちばかり。

ムスリムに取り囲まれる日本人のギター弾きとハンサムボーイ。




撮影中なのに観衆の人たちが俺たちの横にやってきてピースして写真撮ったりしてるのでなかなかいいテイクが撮れず、何度も歌い、何度も兄ちゃんが俺に絡みまくるというシーンを繰り返し、5テイクくらいでようやく監督のOKが出た。




「名前なんていうの?」


「俺Billy syahputraっていうんだ。結構有名なんだぜ。じゃあ頑張ってな。」


どうやらインドネシアの有名人らしい。
撮影を終えたビリーはムスリムの人たちにワーワー写真をお願いされ、笑顔でそれに応えている。

俺の目の前で。

もちろん俺のことはゲロ無視ですけどね。

photo:09



photo:10












気を取り直して、そこから2時間くらい歌った。

マリーナベイサンズの巨大なビルが夕日に照らされ金色に輝き、次第に色を失うと今度は明かりが灯り、夜にそびえる光の塊になる。

そんな美しいトワイライトがシンガポールの街を包み込む中雰囲気よく歌うが、みんな写真を撮るだけでなかなかお金は入れてくれず、夜になって疲れてギターを置いた。

photo:11




喉が痛いな。鼻水も出てくる。
今日はこの辺にしとくか。


あがりは、

50元
10香港ドル
20000インドネシア
20フィリピン
73シンガポールドル


もうわけわかんねぇ。










photo:12



それから少し散歩してみようとビル群の足元を歩いて街の中へと入ってみた。

金曜の夜のオフィスビル街はたくさんの仕事帰りの人たちが忙しそうに行き交っている。


そんな無機質なコンクリートの中を歩いていくと、いきなりものすごい賑わいを見せる通りを見つけた。

細い道にどこまでもバーやレストランが並び、道路にテーブルが出されてうじゃうじゃと凄まじい数のビジネスマンたちがビールジョッキをあおっていた。

photo:13




熱気が立ち昇るようなその通りはボートキーという場所で、シンガポールのビジネスマン、とりわけ白人たちが目立つ繁華街のようだ。
日本でいう新橋のような、親しみのある雑然さにとてもワクワクしてくる。

photo:14



photo:15












photo:16



そこから綺麗に造成された川沿いのウォークウェイを歩いていく。
センスの良いバーやカフェが散らばり、たくさんの人がデッキや階段に腰かけて夕涼みをしている。


このあたりがシンガポールのネオン街なのかな。

と思ったら全然違った。




そうだよ、シンガポールはビルでもハーバーでも空港でも駅でも、なんでも超一流のやりすぎくらいのものを作ってしまう。

そんなシンガポールの飲み屋街がただ事で済むわけがないんだよ。







そこには狂気みたいなネオン街が広がっていた。

photo:17



photo:18



photo:19





川沿いに広がる巨大な建物、全てがレストランやクラブ。

歩行者用の橋を渡ると、屋根のかかったアーケードの飲み屋街となり、ものすごい人で溢れかえっていた。


屋根も壁も、柱もライトも、全てが近未来的な奇抜なデザインで統一されており、とても不思議な空間を作り出している。

光がまたたき、爆音が轟き、誰もが笑いながらグラスを傾けている。


やっぱシンガポールはすげぇ。
なんでもとことんだな。

photo:20






この辺りをクラークキーと言い、日本の六本木あたりのイメージかな。

人ごみはすごいことになっているが、あまりにうるさいし俺の雰囲気ではない。
ここで路上はやりたくないな。





と歩いていたら、そんなクラークキーのレストラン通りでなにやら人だかりを作ってるパフォーマーがいた。

覗いてみると、そこには水晶玉を宙に浮いているように見せるクリスタルのパフォーマーさんがいた。

このクリスタルボールは人気のジャグリングで、世界中どこでも見かけることができる。

しかしこの人は他の人がそうするようにただ突っ立ってやるのではなく、音楽をかけてダンスしながら見事に水晶玉を指先で転がしている。

落としたら水晶玉はもちろん割れる。
そのスリルが見事に演出されている。


魅せ方のクオリティの高さ。

きっと長い路上経験の中で技術を磨いてきたんだろうな。


驚いたのはこの人が日本人だったということだ。

みんな頑張ってるな。

photo:21









シンガポールの夜の熱気に頭の中がまどろむ。
飛び交う光が混ざり合い、ねっとりとした夜の闇を切り裂き、誰もが夢を見ているようだ。


夜風の生ぬるさ、喧騒、光の渦、


まるでドラッグみたいに背徳的な魅力に満ちた街だ。
こりゃ虜になる理由も分かるな。






さ、帰ってイクゾー君とアンナちゃんに連絡して一緒に飲もうかな。


photo:22



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シンガポールの虜

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5月24日 土曜日
【シンガポール】シンガポール






喉が痛い。

風邪が治らない。


暑い国でエアコンの効いた部屋で眠れるのはとてつもなくありがたいことだけど、体には負担になってる。

イクゾー君の話ではシンガポールはまだマシな方で、これからマレーシアにのぼったらさらに暑くてムシムシとした湿気と熱気に包まれるんだそうだ。

それこそがアジアなんだろうけど、灼熱と喧騒の日々になりそうだな。

食べるものとかにも気をつけないとすぐお腹壊してしまいそうだ。









エミさんのお仕事は土日が休みのものではなくシフトによるものだそうで、次の休みは月曜日だそう。

エミさんの出勤に合わせてみんなで家を出た。









photo:01



photo:02




「あー、金丸さんおはようございますー。」


途中、チャンギ空港から出勤してきたチャンギのヌシ、イクゾー君と合流して、一緒に向かったのは最近イクゾー君が大活躍しているというチャイナタウン。

1ヶ月前にシンガポールに来た頃は30ドル稼げれは良かったような状況だったのに、最近では連日150ドルオーバーを叩き出しているというこのチャイナタウン。

警察も来ないし他のバスカーもいないし、中国人たちはみんなめちゃくちゃ優しいし、最高ですよ!!と言うので少しどんな雰囲気か見に行くことに。

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やってきたチャイナタウンの街はやはりシンガポールの中にあってより中国色の濃い建物が多い場所だった。

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まぁシンガポールってはほとんど中国人で構成されているような国なので、その中でチャイナタウンってのもおかしな話だけど、ここにはより本土の中国に近いディープさがあるよう。



「ご飯食べましょう。いいとこありますから。」


もはやチャイナタウンも知り尽くしているイクゾー君が連れて行ってくれたのは地元の人で賑わう食堂。


「ハローママー、お腹空いたー。」


「コンニチハ!ナニタベル?トモダチモイッショダネ!」


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完璧に中国人なんだけど、片言の日本語を喋るおばちゃん。
どれにする!?と横でわーわーと教えてくれるその雰囲気はただの日本のお節介おばちゃん。


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今だにドギマギしてしまう。中国人ってのは日本のことが嫌いなんじゃなかったのか?

日本人ってだけで顔をしかめられるんじゃないのか?

でもおばちゃんの笑顔はまるで同じ中国人に向けられるような親愛の色を含んでいるし、むしろ日本人というだけでお世話を焼いてくれるような特別な優しさがある。


じんわりと胸が熱くなるところで、このご飯。

こんなにてんこ盛りでたったの4シンガポールドル。340円。

美味い!!と言う俺たちにニコニコと笑うおばちゃんや他のお客さんを見ていると、確実に俺の中の中国に対するイメージが変わっていくのを感じる。

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大満足でお店を出ると早速路上ポイントへ向かうイクゾー君。

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この歩道橋の上が1ヶ月間、この街を彷徨って死に物狂いでイクゾー君が見つけ出した最高のポイント。


歩道橋の真ん中にギターとバッグを置き、ササっと準備をして迷いなくギターを弾き始めるまでになんの躊躇もない。

そして歌い始めた瞬間、お金が入った。

おじさんが立ち止まり、イクゾー君の前で目を閉じて気持ち良さそうに微笑んで歌を聴いている。

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もちろん、たったの1ヶ月で歌がめちゃくちゃ上手くなるなんてことはない。

でもその堂々した雰囲気や迷いのない演奏には確実にあの頃よりも人を惹きつけるものが備わっていた。


苦労したんだよな。
めちゃくちゃ分かるぜ。















そんなイクゾー君にまた夜に会おうと約束して俺も俺の路上へ。


昨日やった場所はどこも反応が悪かったので、他の場所を探そうかと思ったが、ここは初日に雰囲気の良かったドビーゴートの階段広場を攻めることに。



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オーチャードで駅を降りてボチボチと街を見ながら歩いて行くが、やっぱりこのオーチャード通りのラグジュアリーさにはめまいを覚えそうになる。

えげつないほどに軒を連ねるルイヴィトンやプラダなどの宮殿みたいなショップたち。

そそり立つ奇抜なデザインのビルディング、大型スクリーンが音楽を垂れ流す。

颯爽と歩いている人々はモデルのように美しく洗練されており、様々な人種が入り混じっている。

この国に生きる人々が全てエリートで構成されているような、そんな気さえしてくる。

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この爺ちゃんハンパじゃなかった。

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暑い日差しに汗だくになってドビーゴートの美術館前に着いた。

おとといここでやった時、向こうの広場の方にスピーカーで爆音を鳴らしながらサックスとウクレレのパフォーマンスをしているコンビがいたけれど、今日は土曜日だからか他のパフォーマーの姿はない。


よーし、日陰がなくて灼熱地獄だけど、今日は俺の独壇場だ。

壊れかけの喉から思い切り声を絞った。









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白人の子供ってのはとっても可愛い。

真っ白い肌でブロンドの柔らかい髪の毛、青い瞳と赤い唇。

教会の壁画に描かれているエンジェルそのまんまといった清純がある。



南米の子供も可愛かった。
浅黒い肌でニコニコと笑い、元気いっぱいに駆け回り、思わず抱きしめたくなる懐こさがあった。





こう、ずっと世界中いろんなところを回ってきてアジアと離れて生活していると、アジアに比べて他の国のいいところってのがたくさん見えてくるもの。

ヨーロッパや南米はこんなにいいところなんだなーって旅の中で感じてきた。
アジアはまだまだだなぁと思わずにいられないところがよくあった。



でもやっぱり、今感じる。

アジアの子供の可愛さが特別な感情と一緒にこんなにも胸を締めつけてくるのは俺がアジア人だから。

若者たちも、おばちゃんも、むすっとしたおじちゃんも、なんだか全てが愛らしく見えてくる。

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なんだろう、この感覚。
欧米ではどんなに友達が出来、どんなに町に溶け込んだと思っても、薄い膜が俺と文化の間に存在していたように今になって感じる。


ここは全てが体に馴染む。

人も、飯も、空気も、こんなつっけんどんな街でさえ、全てに呼吸が合う。


やっと帰ってきた気がする。

アジアを最後にとっておいてよかった。
こんなに愛しく感じられるなんてな。

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夕方19時。
汗で身体中ベトベトになり、喉と指が痛くて限界になりギターを置いた。

あがりは273シンガポドル。2万3千円てとこかな。



荷物を片づけて電車の駅に向かうと、隣のショッピングモールの広場でおじさんが二胡を弾いていた。

ラジカセで音楽を流して、それに合わせて主旋律を弾いている。

あまり上手ではないが、夕暮れに響くその二胡の音色がとても美しくて、箱の中にコインを入れた。

するとおじさんは、アー、と俺のことを見て何か思いついたようにラジカセをいじり、音楽を変えた。

そしておじさんは胸を張り、顎を引き、大げさな動きでリービングオンアジェットプレーンを弾いた。

俺がさっき歌っていた曲だった。

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それから他の場所でバスキングしていたイクゾー君と合流。

エミさんの家の近くのホーカーへ行き、今夜も火照った体にビールで乾杯した。

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ホーカーというのはいくつもの屋台が並ぶ食堂街のこと。店の前にたくさんのテーブルが並べられ、地元の人たちで賑わうこれぞアジアといった庶民のお食事処だ。


どこのホーカーもいつもたくさんの人が集まっており、そのお祭りのような活気はそこにいるだけで夏の縁日の夜を思い出させてくれる。

料理の値段はどれも2~5ドルととても安価でいくつものお皿を注文して居酒屋のように楽しむことが出来る。

しかもそれが全部漏れなく美味いんだもん………

天国でしかないよ…………

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でもドリアンはいらない。

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え?なんで買わないの?アホなの?みたいな顔を毎日された。










「いやー、シンガポールヤバイですね!!もうここ住もうかな。中国人めちゃくちゃ可愛い!!」


「あー!アジア最高ー!!」


辛い料理に汗がダラダラ流れ、それを服で拭って冷たいビールをあおる。

パクチーの香りが鼻をくすぐって、苦手だったことが嘘みたいに美味しく感じる。





もはや完全にシンガポールの虜。

心が解き放たれていくようで、思わずのけぞって夜空を見上げた。







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